2025年 3月19日

サザン桑田佳祐の現役感を証明する2つの秘密とは?今を生きるミュージシャンの現在地

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桑田佳祐の現役感の秘密


2月26日はサザンオールスターズ・桑田佳祐の誕生日だ。

今年(2025年)3月19日には、実に10年ぶりとなるサザンオールスターズ16枚目のオリジナルアルバム『THANK YOU SO MUCH』をリリースする。1978年のデビューから47年が経過して、今なお圧倒的な人気を誇り、現在進行形のバンドとして活動を続けるその原動力、そしてサザンオールスターズのほとんどの楽曲をソングライトする桑田佳祐の現役感の秘密はどこにあるのだろうか。近年の活動から振り返ってみたい。

桑田佳祐が還暦を迎えて以降、サザンオールスターズの曲も、ソロ曲も、シングルに関してはデジタル配信で発表されるようになった。特に2023年には、わずか2ヶ月弱の間に3作品を発表。それもすべて音楽のジャンルが異なっている。「盆ギリ恋歌」は奇想天外なフレーズを駆使したエキゾチック路線の楽曲。「歌えニッポンの空」はラテンサウンドと切ない夏の風景を描いたハートフルなナンバー。そして「Relay〜杜の詩」は都市開発が続く東京へのメッセージを込めた、シンプルだが力強い作品。

どれもサザンオールスターズらしい、だがそれまでの同傾向の作品とは歌詞の視点やサウンドのごった煮感も異なっており、新しいサザンを見せてくれる。何より、時代の空気感がダイレクトに楽曲に反映されているのだ。これは配信プラットフォームを活用することによって成し得たもので、桑田佳祐のクリエイティヴが今も現役感を失わないのは、こういった活動の柔軟さが、まず1つあるのだろう。




今を生きるミュージシャン桑田佳祐の現在地とは?


近年のサザンオールスターズの楽曲には、社会的メッセージを伴った作品が増えている。実のところそういった作風は1980年代から散見されるが、ストレートに国際情勢の緊張関係を風刺した2013年の「ピースとハイライト」が大きな話題を呼んだあたりから目立つようになった。同シングルのカップリング曲「蛍」は、太平洋戦争の特攻隊を描いた映画『永遠の0』の主題歌で、直接的な表現ではないものの、戦争の悲劇について考えさせられる内容となっている。

前述の「Relay〜杜の詩」では明治神宮外苑の再開発計画に問題提起している。2025年1月1日に配信がスタートした「桜、ひらり」は、能登半島自身から1年が経過したことを踏まえ、天災への哀悼と、新たな希望が込められた情感溢れるナンバーとなった。

また、日本人の国民感情に寄り添い、時に精神を鼓舞し希望に溢れた眼差しを送る楽曲も多くなっている。2018年の配信1作目「闘う戦士たちへ愛を込めて」に始まり、同年の「壮年JUMP」、2023年の「歌えニッポンの空」などがそれに当たる。

こういった配信による新曲の発表は、時代の流れをダイレクトに反映するポップミュージックのあり方としては理想的な形で、還暦を超えた桑田の思考や精神性、日本人としての生き方が歌に投影されていることを我々は受け止めることができる。そうして、今を生きるミュージシャン桑田佳祐の現在地を知るのだ。



観客を熱狂の坩堝に送り込むのはサザンの真骨頂


そして、桑田佳祐の現役感を証明するもう1つの顔として、サザンオールスターズ最初期の頃から、多くの日本人に愛され続けた “エロティック・ソング” の存在があるのではないか。

2023年に配信された「盆ギリ恋歌」などは、祭りの祝祭感をエキゾチックなサウンドで表現するという、桑田佳祐が得意とする作風だが、歌詞に散見する、ひねりを効かせたエロティック表現は隠微かつ神秘的。特に “愛倫” というワードはサザンファンにとって馴染み深いものがある。「よどみ萎え、枯れて舞え」「恋するレスポール」「Please!」など、キャリアの中で時折登場するこの “愛倫” こそ、桑田ならではのオブラートに包んだ愛欲表現の象徴だ。

還暦を迎える少し前の、2014年に発表された「天国オン・ザ・ビーチ」のように、ひねりなく直裁的な性衝動をそのまま歌にした楽曲は、初期の頃から桑田佳祐が得意とするタイプの作風だ。湘南を舞台にした甘酸っぱい青春ソングや、心に沁み入るラブバラードがサザンの表の顔なら、こういう "永遠の中学生感覚" もまたサザンの別の顔。桑田佳祐の現役感は、こういったエロティック・ソングを未だに作り続けていることからも感じ取れる。キャリア50年近い大ベテランでありながらも、未だに性の欲望を赤裸々に歌った楽曲を出してくれるのは、最高にありがたいことなのである。

サザンオールスターズが "国民的バンド" と呼ばれるようになり、大御所扱いされ、権威付けされるのを拒むかのように、ひょいと身軽にエロティックソングを出して、殿堂入りを許さないのが桑田佳祐なのである。これはライブでも同様で、現在もこの手のナンバーはセットリストに必須、「マンピーのG★SPOT」でハゲヅラを被って観客を熱狂の坩堝に送り込むのはサザンの真骨頂なのである。



日本人の心のスタンダードとして存在し続ける桑田佳祐の楽曲


圧倒的な才能と、汲めども枯れぬ創作の泉が湧き出し続けるアーティスト桑田佳祐の現役感は、我々日本人と同じ目線に立ち、1人の人間としての生き方を歌に投影することにあるのだろう。一方で俗物的な感覚を否定せず、ある時は魑魅魍魎の世界で聴き手を幻惑しながらも、時に我々日本人の感性や時代感情に寄り添い続けてくれる。桑田佳祐が現役である限り、生まれてくる楽曲は日本人の心のスタンダードとして存在し続けるであろう。あらためてお誕生日おめでとうございます。これからも末長く、魅力的な楽曲を発表してください。

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