これは、1983年より参戦していたホンダエンジンを搭載したチームがタイトルを獲得するなど、絶好調という状況を反映しての登用でした。その事をキッカケとして、これまで数戦単位のダイジェストしか放送されていなかった F1 をフジテレビが全戦放送することを決定! 日本グランプリを除いては録画放送でしたがメジャーリーグ中継もされていなかった当時としては画期的な出来事です。
これは、リリコンといわれるウインドシンセサイザー(管楽器型の電子楽器)によるものであり、もはや定着した感のある鍵盤によるシンセサイザーとは一線を画す音色が特徴でした。そしてその曲こそが安藤まさひろ氏率いる THE SQUARE が奏でる「TRUTH」であります。
フュージョンブームといわれたムーブメントも一段落し、THE SQUARE はカシオペアと双璧を成すいわば「若頭」的な立ち位置だったと言えるでしょう。そしてこの曲が持つ疾走感溢れるリズムと親しみやすいメロディーは、あの頃絶好調だったホンダ F1、そしてアラン・プロストやアイルトン・セナといった個性的な F1 ヒーローと共に日本の F1 ブームと日本のフュージョンを共に牽引して行く存在となりました。
その後 F1 のテーマ曲は、後に B'z や小室哲哉氏等に受け継がれるわけですが、モータースポーツにさほど興味のない方でも F1 と言えば「TRUTH」というイメージを持たれているようで、そのことからもこの曲がいかに人々に強い印象を与えていたかがわかるでしょう。
そして三十余年を経た今年(2018年)、F1 のプロモーターは初の公式テーマ曲を発表しました。海外ドラマかハリウッド映画のオープニングのような壮大なスケールのサウンドを持つその曲は『アベンジャーズ エイジ・オブ・ウルトロン』『ワイルドスピード MEGA MAX』といったハリウッド映画の音楽を手掛けたブライアン・タイラー氏の手によるもの。思い返せば、日本はそれに先んじてテーマ曲という感覚を持っていたわけで「世界をリードしてしまったなぁ」などという感想を持つのは言い過ぎでしょうか。
正直なところ、私個人はテレビ中継の要所要所に挿入される新しいテーマ曲に馴染めておりません。やはり私にとって F1 のテーマ曲と言えばやはり THE SQUARE「TRUTH」。