もう30年近く前の話です。
一年の浪人期間を経て無事大学生になった私は、音楽活動を再開したのですが、もっと弾けるようになりたくて、中学高校の同級生であるドラゴン君(当時のニックネーム、現有名出版社編集長)が所属していた高田馬場にある大学の有名ジャズ・サークルに少しだけ在籍させてもらいました。
ものすごい練習量でしたが、夏休みには合宿にも参加させてもらい、大いに鍛えられました。今でもそのサークルから多くのジャズ・ミュージシャンが輩出されていることを思うと、感慨深いものがあります。
そして、夏といえば夏フェス!
当時の夏フェスはロックならぬジャズ一色!
『斑尾ジャズ』や、よみうりランドでの『ライブ・アンダー・ザ・スカイ』など、今では信じられないジャズ・フュージョン界の有名ミュージシャンが集結する祭典が繰り広げられ、夏の深夜番組はいつもその実況中継でした。
その中でも、最大のイベントは『マウント・フジ・ジャズ・フェスティバル』。
富士山の麓、山中湖畔に海外の有名ミュージシャンが3日間集まり、たくさんのステージを見せてくれるのです。高いお金を払っても1組のミュージシャンしか見れないことが多いので、こういった夏フェスはものすごくお得。お金のないジャズ研の大学生はみんな行ってました。
当時、ドラゴン君と一緒に行ったのは1989年8月26日のライブ。その日の出演者だけでもすごいメンバーでした。
ハービー・ハンコック、ロン・カーター、トニー・ウイリアムスのトリオ、乗りに乗っていたドラマーのラルフ・ピーターソン・クインテット、ジャズボーカルの大御所ルー・ロウルズと彼のバンド、当時の凄腕を集結させたチック・コリア・アコースティック・バンド、そしてトリを飾ったのはアート・ブレイキー&ジャズ・メッセンジャーズというラインナップ。
アート・ブレイキーは、50年代から活躍している大御所ドラマーですから『マウント・フジ』でも盛り上がりましたよー! YouTubeの映像でもわかるように、「ブルース・マーチ」を聴くお客さんの人数と興奮といったら!
会場には屋台が出ているので、焼鳥や焼きそばを食べ、酒を飲みながらジャズを聴くのです。この屋台酒に合うのがメッセンジャーズ! ジャズと酒!! 酒とジャズ!!
あっ、すいません、興奮しすぎました…
とにかく、ブレイキーの楽しそうにドラムを叩く姿は、ジャズが気取ったものでなく、真のグルーヴを追求している音楽であることを感じさせてくれます。メンバーの服装もすごくダンディーなんですよねー。自分が本当に好きな音楽に出会えた感動でいっぱいでした。
残念なことに、この翌年(1990年)にブレイキーは急逝してしまいます。亡くなった時はすでに来日が決まっていたので、ブレイキー以外のメンバーで追悼公演が開催されています。
そこでは、ブレイキーの代わりアル・フォスターという有名なドラマーが叩いていたと記憶しています。トランペットのブライアン・リンチは大柄なメンバーが多い中での小柄な白人で、彼の演奏も最高!
もちろん、代表曲である「モーニン」も演奏されました。素晴らしかったなー。ブレイキーがいなくても、そのスピリッツを受け継いだメンバーのグルーヴ感が溢れる感動的な名演奏でした。
あっという間に時代は過ぎて、23年後の2013年10月、所用でアメリカに行った時、ニューヨークに立ち寄りました。そうしたら、昔のメッセンジャーズにラルフ・ピーターソン(Dr.)が加わる編成でライブをやっているじゃないですか! ちょうど亡きブレイキーの誕生日で、昔の仲間が大集結したという趣旨だったのです。
ラルフが大口を開けてドラムを叩いていて、夏フェスで見たブレイキーを思い出し、自分はやっぱりこういう音楽が好きなんだなあ、そしてそれを今も聴くことができるニューヨークでの奇跡に感動しました。
終演後にブライアン・リンチを捕まえて、90年の公演を観に行った話をしたら、日本は楽しかったよー! と、当時覚えていた日本語を披露してくれたり、記念撮影にも応じてくれたんですよね。
ああ、またあの頃みたいな夏のジャズフェスやってくれないかなー。
2017.01.18
YouTube / paris0820
YouTube / Geepereet
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