4月25日

【フリクション】映画「ストリート・キングダム」に登場した東京ロッカーズのバンドたち

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「ストリート・キングダム」の中核を担う東京ロッカーズとは?


監督・田口トモロヲ、脚本・宮藤官九郎。3月27日に劇場公開された『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』は、1970年代後半の東京のアンダーグラウンド・シーンを舞台にした青春群像劇だ。インディーズという言葉が浸透する以前にDIY(Do It Yourself)のスピリットを貫き、自分たちのスタイルで確固たる音楽シーンを作り上げた若者たちの物語である。

映画に登場するのは、東京ロッカーズ周辺のバンドたち。この東京ロッカーズとは、六本木にあった “S-KENスタジオ” で1978年より行われていたライブイベントの名称だ。その後、この場所を起点としたムーブメントの総称になっていく。代表的な面々はリザード、フリクション、S-KEN、ミラーズ、ミスター・カイト。彼らこそが日本のオルタナティブ・ロックの嚆矢となった。1979年にはライブアルバム『東京ROCKERS』がリリースされ、この5つのバンドのパフォーマンスを収録。ここから東京ロッカーズというキーワードがアンダー・グラウンドシーンでさらに浸透していった。

東京ロッカーズは、今では当たり前となったインディーズでの音楽活動や、ライブハウスにおけるオールスタンディングなどのシステムを作り上げる。ニューヨークのパンクシーンを発端に、ロンドンのパンクシーンにも影響を受けながら日本の音楽シーンにも新たな息吹が注ぎ込まれていた。今回は、このムーブメントの代表格であり、『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』の劇中にも “軋轢” というバンド名で登場するフリクションについて記していきたい。



坂本龍一をプロデューサーに迎えた「軋轢」


フリクションは、1978年にニューヨークのアンダーグラウンド・シーンを体感して帰国したレックとチコ・ヒゲを中心に結成。バンド名はニューヨークパンクの代表格だったテレビジョンの曲名から拝借した。『東京ROCKERS』参加の翌年にパス・レコードより「Crazy Dream / Kagayaki / Big-S」の3曲入りシングルをリリース。そして1980年には坂本龍一をプロデューサーに迎え、傑作アルバム『軋轢』をリリースする。

『軋轢』は、リリースから46年を経た今もその衝撃が語り継がれている、日本パンク史の中で極めてエポックメイキングな作品である。サウンドには当時ニューヨークで勃発した前衛的な音楽、アート、パフォーマンスを総称したムーブメントである、ノーウェィヴの影響が色濃く反映されていた。ノーウェィヴは時代を切り拓く自由な発想を根底に、同時期に大きな影響力を持っていたニューウェイヴのカウンター・カルチャーでもあった。ノイズや実験音楽などが主軸となり、メインストリームのポップミュージックとはかけ離れた印象があった。

このノーウェィヴの渦中にメンバー2人がいたことが、フリクション結成の大きなモチベーションにもなったことは想像に難くない。レックとチコ・ヒゲは、このムーブメントの主要アーティスト、ジェイムス・チャンスが結成したバンド、ザ・コントーションズなどでもプレイしている。ニューヨークで体感した熱量を新たな時代の道標として、東京という街でどこまで再現できるか。もちろん、そこには真似事で終わらせないオリジナリティも必須だった。



『軋轢』は贅肉を極限まで落としたソリッドな音が特徴的だ。タイトなドラミングに、切れ味の鋭く神経質なギター。そしてアバンギャルドなグルーヴを率先する骨太なベースライン。この音作りから生まれる熱量は尋常ではなかった。鋼のように硬質なサウンドは変幻自在な曲展開を見せる。そこに記号を羅列したような、ともすれば浮遊感を抱かせるリリックを乗せることにより、さらに独自性が高まった。これはロンドンパンクに見られたシンガロング的な一体感とは真逆で、聴く者にこの音と対峙しなくてはならないと思わせるほどの切迫感があった。

今も孤高に音を開拓し続けているフリクション


フリクションは断続的にではあるが1996年まで活動を続け、2006年にはレックと元ブランキー・ジェット・シティの中村達也の2人で再始動。ベース、ドラムという2ピースで、インプロビゼーションの演奏を加味させた、まさに魂と魂のぶつかり合いのようなライブアクトを重ねていく。その青き炎のような熱量は、自分たちのスタイルで確固たるシーンを作り上げようとした東京ロッカーズの時代から一寸もブレていなかった。

そんなフリクションの精神性こそが、決して媚びず、自分の音を鳴らし続けた東京ロッカーズの存在を継承したと思えてならない。東京ロッカーズは一過性のムーブメントだったが、そのスタイルは、様々な形で受け継がれていった。ムーブメント勃発から50年近くの時を経た今、映画『ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。』によってその動きが再注目されることは意義深い。​​東京ロッカーズの中心的存在だったフリクションこそが、日本の音楽シーンに大きな風穴を開けたのだ。


ストリート・キングダム 自分の音を鳴らせ。



▶ 公開日:2026年3月27日
▶ スタッフ:
監督:田口トモロヲ
原作:地引雄一「ストリート・キングダム」
脚本:宮藤官九郎
音楽:大友良英
▶ キャスト:
峯田和伸、若葉竜也、吉岡里帆、仲野太賀、間宮祥太朗、中島セナ、神野三鈴、浜野謙太、森岡龍、山岸門人、マギー、米村亮太朗、松浦祐也、渡辺大知、大森南朋、中村獅童
▶ 企画製作・配給:ハピネットファントム・スタジオ
▶ ⓒ 2026 映画『ストリート・キングダム ⾃分の⾳を鳴らせ。』製作委員会

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2026.03.31
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カタリベ
1968年生まれ
本田隆
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