確かに彼は、ザ・ビーチ・ボーイズをはじめとする1960年代のサーフミュージックを愛していたけれど、それもアメリカンポップスの系譜の中のエポックと捉えた上でのことだった。なので、ヒットシングル「RIDE ON TIME」をメイン曲にしたアルバム『RIDE ON TIME』も、どちらかといえばファンク・テイストの都市感覚サウンドをクローズアップしたアルバムだった。
アルバム「FOR YOU」の気分を代表するサマーソングといえば?
アルバム『RIDE ON TIME』の成功を受けて、レコード会社からリゾート感覚のポップス を作って欲しいという執拗なリクエストがあったのだろう。『RIDE ON TIME』に続くアルバム『FOR YOU』(1982年)をリアルタイムで聴いた時、そんな想像をしたくなった。
なにより、鈴木英人のイラストによるジャケットが圧倒的にオシャレだった。このセンスは、前年に発表された大滝詠一の『A LONG VACATION』が永井博のイラストでリゾートイメージをアピールする手法に通じていた。鈴木英人のアートワークは、確かに山下達郎サウンドにリゾートのイメージをコーティングさせる役割を果たしていた。収録曲にはディープなファンクナンバーも収められているが、全体的には夏のリゾート気分に通じる、マイルドで洗練されたポップアルバムと感じられるものに仕上げられていた。
さらに興味深いことは、1982年のリリース時、このアルバムからは1曲もシングルカットされていないことだ。山下達郎の1970年代のアルバムにもシングルカットがないアルバムはあるけれど、それはセールスが見込めないという理由だった。しかし、「RIDE ON TIME」のブレイク後なのでシングルカットすればヒットする可能性は十分にあった。特に「LOVELAND, ISLAND」はビールのCMソングとしてテレビからも流れる人気曲だったから、シングル化されていると思っている人も多かったと思う。