「オリジナルとコピーの中間」ジャン・ボードリヤール提唱、シミュラクル
やぁ、諸君。わたしの研究室へようこそ。たまには私の専門であるメディアやコンテンツの話をしてみようか。きょうのキーワードは「Simulacre=シミュラクル」だ。
この「シミュラクル」、フランスの思想家ジャン・ボードリヤールが提唱した考えで「オリジナルとコピーの中間」あるいは「オリジナルなきコピー」とでもいえようか。より具体的には「そうそう、こういうのあるある風!」「なんか○○っぽ~い♥」と称されるものと考えれば分かりやすいだろう。
各地のご当地ヒーローとか、ゆるキャラ、昭和風パロディ漫画、ありそうな二時間ドラマ演出(崖に犯人を追い詰めるとか、物陰からのぞくとか)など、元ネタがうやむやなまま(はたしてオリジナルがあるかどうかも分からないまま)皆が思い浮かぶようなパターン化された作品がそれに当たる。SNSで盛んな「二次創作」に関連した言葉だってことが分かるね。ここ、試験に出るからノートしとくように。
元ネタはあるような無いようなプロモビデオ、光GENJI「パラダイス銀河」
では、そんなシミュラクルなPVを紹介しよう。光GENJI の最大のヒット、3rdシングル『パラダイス銀河』だ! これはプロモビデオ考古学的に実に貴重な映像であるといえよう。まさに腹筋崩壊、学会発表ものである。しかし、謎の多いビデオだ。
まず一体だれがアニメの作画・監督をしたのか一切不明。どこかで見た風なテイスト… 何かの少女マンガに似ているような… いや、違うよね(独り言)… そしてPV開始から3分過ぎに現われるのは、すっ、999ではないか!? マッキーみたいに松本零士先生に怒られない… のだ。そう、これがまさにミラクル、じゃなくてシミュラクル。元ネタはあるような無いようなものである。分かったかな?
PV演出は「原宿竹下通りの女の子たち」向けの正攻法マーケティング?
さて、わたしは、PVが作られた1988年当時の社会状況から判断して、制作者があえてシャレで昔風パロディアニメにしたのだと思っていた。ところが、われわれ調査班は、そんな推理をブッ飛ばす別の映像を発掘してしまったのである。
それは7枚目のシングル『太陽がいっぱい』… こっ、これは‼︎ マンガの神様・手塚治虫先生の『海のトリトン』では…な…い。シ…シミュラクルだからね(再び独り言)どうも制作者はマジだった可能性がある。一連のPV演出は、ある意味、「原宿竹下通りの女の子たち」向けの正攻法マーケティングだったのかもしれない。
でも、いちばん驚いたのは、実はこの『パラダイス銀河』、チャゲ&飛鳥のASKAの作曲なのだ。ASKAは「お薬もとめてしゃかりきコロンブス」だったのかしら…(以下自粛)
※2016年3月16日に掲載された記事をアップデート
2021.03.09