女性シンガー・ソングライターが関わったアイドルベスト10
この度、「アイドル総選挙」のアンバサダーに就任いたしました、音楽ライターの長井英治です。今回のコラムは200組のアイドルのリストからベスト10をランキング形式で選ぶという、何とも悩ましいテーマなのですが、他のアンバサダーさんのランキングや総合ランキングがどのような結果になるのか今からとても楽しみです。定番のアイドルが上位を占めるのか、意外なアイドルがランクインするのか結果はいかに!
この度セレクトするにあたって200組のアイドルのリストをいただいたのですが、眺めているだけでとても幸せな気持ちになりました。でも、リストを見てニヤニヤしているだけでは筆が進みませんので、テーマを設けてランキング形式で発表していきたいと思います。
僕はライターとして、普段女性シンガーソングライターを中心に執筆活動をしているのですが、80年代からニューミュージック系の音楽ばかり聴いていました。ですので、今回のテーマは「女性シンガーソングライターが関わったアイドルベスト10」というテーマでランク付けをしていきたいと思います。それでは、独断と偏見によるTOP10をお楽しみください!(異論反論は受け付けません・笑)
第10位:安田成美
僕は安田成美と同級生なんですが(いらない情報?)、同じ区内の学校に通っていたため、当時からその美少女っぷりは風の噂で伝わって来ました。歌手デビューは1984年に発売された「風の谷のナウシカ」ですが、彼女のボーカルでないとこの曲の世界は表現できなかったと思います。
ファーストアルバム『安田成美』は細野晴臣、高橋幸宏、鈴木慶一らが曲を提供していますが、今回ご紹介したいのが、1988年に発売されたアルバム『ジィンジャー』です。このアルバムは、大貫妙子がプロデュースを手掛けたアルバムで、今のところ、大貫妙子の唯一のプロデュースアルバムです。意外に知られていない作品だと思いますが、Spotifyで聴くことができますので是非チェックしてみて下さい。
第9位:工藤静香
今年、工藤静香はソロデビュー35周年ということもあり、久しぶりに紅白歌合戦に出場することが発表されていますが、自分にとっての工藤静香は、中島みゆきの存在をなくしては語れません。1988年に発売された3枚目のシングル「FU-JI-TSU」で初めて中島みゆきの世界を歌った静香ですが、見事オリコンチャートの1位を獲得しています。その後も中島みゆきが作詞を手がけた「MUGO・ん…色っぽい」「黄砂に吹かれて」「私について」が1位を獲得していますが、今回、クローズアップしたいのは1988年に発売されたアルバム『静香』です。
5曲入りのミニアルバムという形態ですが、全曲中島みゆきが詞を提供したアルバムです。もちろんこのアルバムも1位を獲得する大ヒットになっていますが、収録曲の「裸爪(はだし)のライオン」は中島みゆき自身もアルバムでセルフカヴァーしています。
第8位:河合奈保子
河合奈保子は、「けんかをやめて」「Invitation」(作詞・作曲:竹内まりや)、「コントロール」(作曲:八神純子)、「微風のメロディー」(作詞・作曲:尾崎亜美)等、多くの女性シンガーソングライターの楽曲を取り上げてきました。奈保子の高い歌唱力と表現力で、楽曲がより素晴らしいものになったと思います。
河合奈保子はシングル曲だけでなく、アルバムのクオリティの高さにも定評があり、1983年〜1984年にかけて発売されたそれぞれのLPの片面は、女性シンガーソングライターが手がけています。『あるばむ』は竹内まりや、『SKY PARK』は石川優子、『HALF SHADOW』は谷山浩子、『Summer Delicacy』は八神純子の楽曲でLPの片面が構成されています。特に、石川優子が提供した「SKY PARK」はファンの間でも非常に人気の高い曲です。
第7位:松本典子
松本典子は、1984年8月に第3回「ミス・セブンティーンコンテスト」でグランプリを獲得したことがきっかけとなり、翌年3月にデビュー。自分のとってはかなりお気に入りのシンガーでした(ルックスも可愛くて好きでした)。デビュー曲「春色のエアメール」はEPOが作詞・作曲を手がけた春らしいポップな曲で、今でも春になると聴きたくなる1曲です。特に3枚目のシングル「さよならと言われて」はユーミンが作曲を手がけたバラードで、ユーミンの提供曲の中でも個人的上位にランクインしています。6枚目のシングル「儀式(セレモニー)」は、中島みゆきが作詞・作曲を手がけていますが、この曲は中島みゆき自身もアルバムでカヴァーしている味わい深い名曲です。
第6位:薬師丸ひろ子
薬師丸ひろ子は1977年に映画『野性の証明』でスクリーンデビューをしましたが、シンガーとしてのデビューは1981年。本人主演の映画の主題歌として発売された「セーラ服と機関銃」は1位を獲得し、年間チャートの2位を記録する大ヒットに。その後も、大滝詠一や南佳孝などのニューミュージック系のアーティストの楽曲を大ヒットさせています。
しかし、個人的には何といっても、4枚目のシングルとして発売された本人主演の映画の主題歌「Woman "Wの悲劇"より」の思い入れが強いです(B面に収録された「冬のバラ」も名曲)。
ユーミンが作曲をした美しいバラードは、現在も薬師丸ひろ子本人が大切に歌い続けていますが、今回特にピックアップしたい作品は、1988年に発売されたアルバム『Sincerely Yours』です。このアルバムは女性シンガーソングライターの作品を中心に収録した作品なのですが、中島みゆき、竹内まりや、尾崎亜美、吉田美奈子、EPO、大貫妙子らの楽曲を取り上げています。他のアルバムには上田知華や矢野顕子などの作品も収録されているので、僕にとっては非常に思い入れの強いシンガーです。
第5位:岡田有希子
岡田有希子は “ユッコ” の愛称で多くのファンに支えられたアイドルでした。本人はとても芯の強い少女だったと思うのですが、どこか守ってあげたくなるような存在でもありました。「ファースト・デイト」「リトル プリンセス」「-Dreaming Girl- 恋、はじめまして」「哀しい予感」は竹内まりや、「二人だけのセレモニー」「Summer Beach」は尾崎亜美が楽曲提供をしていたので、当時からユッコの曲がとても好きでした。アルバムでは、山口美央子、大貫妙子、EPOらの楽曲も取り上げていて、ユッコの曲たちはいつもキラキラと輝いていました。
1986年4月5日。僕はユッコの渋谷公会堂のコンサートを観ています。まさかその3日後にあんな悲しい出来事が起きるなんて…。今でもコンサートで観た生ユッコの笑顔は忘れていません。
第4位:中森明菜
80年代アイドルの中でも、松田聖子と共にTOPを走り続けてきたのが中森明菜。明菜はそこまで多く女性アーティストの楽曲は取り上げていないのですが、アルバム内に吉田美奈子、EPO、大貫妙子などの楽曲を収録しています。個人的激推し作品は、1986年に発売されたアルバム『CRIMSON』です。
このアルバムはクリスマスイブに発売されたのですが、東急東横線沿線に住むキャリアウーマン(死語?)が主人公。そんな主人公が繰り広げる恋模様を彩ったのが、竹内まりやと小林明子でした。この2人が5曲ずつ作品を提供したこのアルバムにはシングル曲が収録されておらず、完全なるコンセプトアルバムとして制作されました。スタンダードナンバーとして人気のある「駅」は竹内まりやが中森明菜のために提供した1曲ですが、夜中のキッチンのテーブルに明菜の写真を並べ、想いを巡らせている時に「この人には悲恋が似合う」と思いつき書いたそうです。
第3位:原田知世
角川三人娘の一人として大活躍をした原田知世。早いもので、今年歌手デビュー40周年を迎えました。原田知世のレコードデビューは1982年ですが、何故か82年組と一緒に語られることは少ないです。3枚目のシングル「時をかける少女」は本人主演の映画の主題歌でしたが、当時あまりにもこの映画が好きすぎて3回も観に行きました(笑)。最高位2位を獲得したこの曲の作詞・作曲はユーミン。「ダンデライオン〜遅咲きのたんぽぽ」も、ユーミンが原田知世に提供した曲なのですが、こちらは一般発売されず劇場や一部の販売店のみで販売された特別な1枚でした。
知世の誕生日に発売されたアルバム『バースデイ・アルバム』には、大貫妙子の書下ろし曲「地下鉄のザジ」が収録されているのですが、その後も大貫妙子と原田知世の交流は続き、デビュー40周年アルバムでは大貫妙子の「ベジタブル」を二人でデュエットしています。
第2位:柏原よしえ
80年代アイドルの中では柏原よしえが大好きで、デビュー当時から激推ししていました。デビューは弱冠14歳でしたが、デビュー時にすでに大人のシンガーとしてのお色気がムンムンだったと思います。テレビの生放送でも、よしえのボーカルにはムラがなくて80年代アイドルの中では断トツで歌が上手かったと思います。そして、自分にとっての柏原よしえは、中島みゆきの楽曲を歌っている時代がピークだったと思います。「春なのに」「カム・フラージュ」「最愛」「ロンリー・カナリア」はすべてTOP10入りを果たすヒットになり、中島みゆき自身もすべての曲をアルバムでセルフカヴァーしています。とは言え、一番好きな曲は筒美京先生が作曲した、火曜サスペンスのエンディングテーマ「化石の森」です。
第1位:松田聖子
僕にとっての80年代アイドルの1位は、断トツで松田聖子です。聖子はアイドルの持つ要素をすべて兼ね備えた、アイドルになるために生まれてきたような存在でした。歌詞の中のどんなキャラクターもすべて聖子が演じているような錯覚に陥りましたが、松田聖子といえば、やはりユーミンの存在が大きかったと思います。
80年代にユーミンが聖子に提供した曲は全12曲。すべてが名曲と呼べる素晴らしい楽曲だったと思います。一番好きなのは「瞳はダイアモンド」ですが、どの曲も捨てがたいので、ユーミンコレクションとして発売された『SEIKO TRAIN』をオススメします。ユーミンの曲だけを集めたこのアルバムは見事1位を獲得しています。
―― ということで、独断と偏見で選んだ「女性シンガーソングライターが関わった女性アイドルベスト10」はいかがでしたでしょうか? 他にも尾崎亜美作品を多く取り上げた、岩崎良美、松本伊代も入れたかったし、多くの女性シンガーソングライターの楽曲を歌っている伊藤つかさも捨て難かったのですが、今回はこのようなランキングにさせていただきました。
この「アイドル総選挙」には、ライターの友人もアンバサダーに就任しております。みなさんのランキングも楽しみですし、Twitterでユーザーの皆様のランキングもチェックしています。みなさんそれぞれが様々なアイドルに思い入れがあって、その熱量がとても心地いいんですよね。何はともあれ、2月のランキング発表を今から心待ちにしていますので、そのつなぎとしてこのコラムを読んでいただけたらこんなに嬉しいことはありません。
80年代アイドル総選挙 ザ・ベスト100
▶ 花の82年組に関連するコラム一覧はこちら!
2022.12.19