JR東海の CM(ホームタウン・エクスプレス〜クリスマス・エクスプレス)も、オンエア開始の88年当時、山下達郎『クリスマス・イブ』を押上げる原動力になったのは事実かもしれないが、CM が放送される前に、相当の程度にこの楽曲が人口に膾炙していたとみるべきだろう。ましてや CM がきっかけで全国ヒットしたというのは、同時代に青春を生きたものとして、実感との大きなズレがある。
実際、この曲が発表されて間もない83年の暮れに文化放送『ミスDJ リクエストパレード』でヘビーローテーションされていたことをハッキリ覚えている。JR東海の CM 開始までの5年間に曲がジワジワと認知され、少なくとも若者たちにその下地があったから、あの映像とシンクロした時に、それまで撒かれていた火薬で一気に炎が上がったのだ。
そういえば「クリスマス・エクスプレス」の CM では、牧瀬里穂の後ろに名古屋名物の「つばめタクシー」が映っていて、彼女がJR名古屋駅まで急いでタクって来た設定になっている。このタクシー会社、乗車のたびに「わたくし、つばめ交通の 〇〇です」と運転手が名乗るので有名だ。それを知らずに乗車して、思わず自分も名刺を出して「わたくしはこういうものです」と挨拶したのは、社会人一年目、この CM の翌年のことだった。
追記: 当時、とんねるずの番組で CM パロディが流されたが、JR東海もタレントも公認で、堂々と駅でロケやっている。スポンサーも代理店も一緒に悪ふざけできる、大らかな時代だったんだよね。