私が高校2年生のときに、まだ来日を果たしていない新人バンドを呼び、新宿厚生年金会館などで、ゴールデンウィークに日替わりライブをするというイベントがあった。イベントのタイトルは、「フロムエー ライブアライブ 明日のスーパースターたち」。主催は、リクルートのアルバイト雑誌「フロムエー」だった。 その新人バンドの中には、スタイル・カウンシルもいた。ついに生ウェラーを拝める!ジャム解散間際にポール・ウェラーを好きになった私は、大いに盛り上がった。スタイル・カウンシル以外にも、インエクセス、ビッグ・カントリー、ロマンティックスなどがやって来たように記憶している。 ジャム時代に比べて、軟弱になったと一部で批判されていたウェラーだったが、ステージ上の彼は軟弱とはほど遠かった。弦が切れるほど、強くギターをかき鳴らし、メロウな曲だろうがなんだろうが、唾をとばしながら、マイクに挑むように歌い上げる。さんざんビデオで見てきた、ジャム時代と変わらない、突っ走るようなライブだった。 生まれて初めて、出待ちをしたのもこのときだ。出ていく姿がちらりと見られればラッキーと思っていたのだが、なんとウェラーは厚生年金会館の駐車場で即興サイン会を決行してくれた。サインをもらうとき、何とかこの思いを伝えなければと、緊張で頭の中が真っ白になった私のひねり出した一言は、「You are my hero!」。ウェラーは私を見つめ、ニッコリ笑って、「Thank you」と答えてくれた。 スタカン来日中、迷惑にも、彼らが泊まっているホテルにも行ってみたが、そこで見たのは長身の美女2人を両脇に連れたインエクセスのカーク・ペンギリーだけ。ウェラーには会えなかった。 そういえば、サインをもらったとき、私がはめていた当時流行の指なしレース手袋を、ウェラーが nice とか言ってほめてくれたのだが、のちのち思い返すと、あれはウェラーでなく、ミック・タルボットだったのかもしれない。 絶対忘れない瞬間だと思っていたのに。いや、だからこそ、思い出補正をしていたのか。ミック・タルボットだっていいんだけど、my hero ではないからね。
2016.05.10
VIDEO
YouTube / TheStyleCouncilVEVO
Information