3月15日

尾崎豊の原点「新宿ルイード」ライブハウスをなくしてはならない!

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photo:SonyMusic  

新型コロナウイルスで音楽業界が大逆風!


新型コロナウイルスでエンタメ界、とりわけ音楽業界が大逆風である。

ご承知の通り、先の2月26日の安倍首相の「今後1~2週間の大規模イベントの自粛要請」を受けて、同日から音楽コンサートやライブ、ファンイベントの類いが軒並み延期や中止に追い込まれ、その後、10日間の自粛継続が追加要請され、今のところ3月19日がその期限だが―― 正直、その先もどうなるか分からない。

ぶっちゃけ、“要請” なんだから各々が判断すればいいと思うし、それこそ三谷幸喜サンの舞台劇『笑の大学』じゃないけど、お上の要請にただ従うだけじゃ芸がない。目の前に高いハードルがあれば、知恵をしぼってそれを乗り越える術を考える―― その姿勢こそがエンタメを志す者の矜持「Show must go on(幕を降ろすな!)」じゃないかと、個人的には思う。

Show must go on! 万全の対策でライブを続けるミュージシャン


実際、中には、当初ツアーファイナルを予定していた ZEPP TOKYO で無観客ライブを行ない、期間限定で無料配信している aiko みたいな例もある。カッコいい。ファンの中には感動のあまり、無料じゃなくて、お金を払いたいという声もあるらしいけど、それこそパトロネージュの鏡だろう。

そうそう、パトロンと言えば、『大相撲春場所』も無観客で開催中だけど、面白いことに “懸賞金” の旗って、あの状況下でも、誰に見せるともなく土俵の周りを回っているんですね。NHK の放送では、あの瞬間、画面が引きになるんだけど、そんな損得抜きの姿勢こそが “タニマチ” なんだと改めて感心してしまった。

もっとも―― 「Show must go on」とばかりに、右向け右の世間の風潮に抗い、ツアー初日のステージを決行したものの、世論の集中砲火を浴びて、その後に中止に追い込まれたケースもある。椎名林檎サン率いる東京事変だ。もちろん、感染症の専門家と協議の上で、来場者にマスク着用とアルコール消毒を徹底してもらうなど万全の対策を施し、且つチケットの払い戻しも受け付けるなど、観客の自由意思に委ねたのにも関わらず―― SNS は大炎上。

コンサートホールの厳しい基準「興行場法」ライブハウスとの違いは?


タイミングも悪かった。ちょうど大阪市内のライブハウスを訪れた観客の中に、新型コロナウイルスの集団感染が発覚し、「ライブ会場=感染源」とばかりに世論が騒ぎ始めたのだ。

念のために、フォローしておくと、東京事変がコンサートを行なった東京国際フォーラムなどのコンサートホールは、映画館などと同じく “興行場法” なる厳しい認可を得ており、それはインフルエンザ等を予防する換気基準を満たした施設であることを意味する。場内は常に新鮮な空気に保たれ、観客に観覧マナーを徹底してもらえば、ゼロとは言わないが、かなり感染リスクは低いと言える。

一方、ライブハウスの多くは、この換気基準の厳しい興行場法に基づく認可を得ておらず、“飲食店” として営業している。“1ドリンク制” は喉が渇いた観客のニーズに応えたものでなく、飲食店を装う以上、必要な措置なのだ。でなければ、興行場法違反で営業停止になる。残念ながら、比較的狭い空間に大勢の観客がひしめくライブハウスは―― 新型コロナウイルス対策の目から見れば、“アウェイ” と言わざるを得ない。

そう、コンサートホールとライブハウスは別ものなのだ。ライブハウスの集団感染が発覚したからと言って、東京事変を責めるのは “冤罪” である。

なくてはならないライブハウス、ビジネスモデルも変えてはいけない!


え? だったら、そんな換気基準を満たしていないライブハウスなんて、とっとと興行場法の許認可取得を義務付ければいいって?

いや―― それは無理な話というもの。ライブハウスの多くは、中小・零細企業が経営している。興行場法を満たすには、“換気” だけでなく、“トイレ” の数や “耐震構造” など、様々な厳しい要件を満たす必要があり、それらの改修には莫大な費用がかかる。それ以前に、ライブハウスの多くは雑居ビルに入居する店子(テナント)だ。そんな大工事は許されない。

さて、少々前置きが長くなったが(長すぎる!)、ここからが、今回の本題である。大丈夫。この先はそんなに長くない。かくのごとく、今や世間のアウェイと化しつつあるライブハウスだが、この先も音楽業界が発展を続けるには、やはりなくてはならない存在だし、そのビジネスモデルも変えてはいけない―― それが、今回この場を借りて、僕が伝えたいテーマ(主題)である。

ちなみに、今日―― 3月15日は、今から36年前に、あの尾崎豊が伝説のライブハウス『新宿ルイード』でデビューライブを行なった日に当たる。

尾崎豊の原点、伝説のライブハウス「新宿ルイード」


 街の風に引き裂かれ
 舞い上った夢くずが
 路上の隅で寒さに震え
 もみ消されてく
 立ち並ぶビルの中
 ちっぽけな俺らさ
 のしかかる虚像の中で
 心を奪われている

そのデビューライブは、2ヶ月前に尾崎豊が中退した青山学院高等部の卒業式の日に、意図的に合わせて行われたものだった。1曲目は尾崎が CBSソニー(現:ソニー・ミュージックレコーズ)のオーディションに送ったデモテープにも収められた「街の風景」である。前年1983年12月にリリースされたデビューアルバム『十七歳の地図』の1曲目でもあり、文字通り、尾崎のオリジン(原点)だった。

新宿ルイードは、今は亡き伝説のライブハウスだ。新宿の紀伊国屋書店の本店近くにある雑居ビル、“カワノビル” の4階にあった。1972年の開業当初は、テーブル付きのシッティングスタイルだったが、フォークからポップス、そしてロックへと音楽の主流が変わるに連れてスタンディングの公演が定番になった。

捨て曲なし!デビューライブにして完成していた尾崎豊


この日、尾崎のデビューライブには、キャパ300に対して、倍近い観客が訪れたという。入りきれなかったファンのために、急遽ロビーにモニターが設置されたとか。当日の様子は、尾崎の死後、1996年に発売されたライブビデオ『OZAKI・18』でも見られるが、Gジャン姿の18歳のまだあどけない表情が印象的だ。

もちろん――この日の600人近い観客の誰もが、将来、この青年が「カリスマ」と呼ばれ、時代に抗う若者たちの“教祖”と化すなど、想像もしていない。いや、ソニーの関係者も、須藤晃プロデューサーも、恐らく尾崎自身も―― 考えてもいなかっただろう。だが、改めて、この日のセットリストを見て、驚く。

01. 街の風景
02. はじまりさえ歌えない
03. BOW!
04. 傷つけた人々へ
05. 僕が僕であるために
06. I LOVE YOU
07. OH MY LITTLE GIRL
08. ハイスクールROCK'N'ROLL
09. 十七歳の地図
10. 愛の消えた街
11. 15の夜
12. アンコール①:シェリー
13. アンコール②:ダンスホール

3曲目の「BOW!」とアンコールで歌った2曲は、セカンドアルバム『回帰線』に収められたナンバーで、それ以外はデビューアルバム『十七歳の地図』の収録曲である。いずれも、今となっては超有名な曲ばかり。捨て曲が1つもない。全て尾崎の作詞・作曲で、この時点で、既に尾崎豊は完成していたのである。

美しい旋律「傷つけた人々へ」から伝わる尾崎豊のホンネ


このライブで、尾崎は割と多めのMCを残しているが、その中で僕が最も好きなMCが、4曲目の「傷つけた人々へ」のフリである。他のMCと比べて短いが、シンプルゆえに、尾崎のホンネが直に伝わる。“社会に抗う若者” を演じさせようとする須藤プロデューサーの戦略がどこか透けて見える「十七歳の地図」のフリと、その点が違う。

 「僕は、まだ18だけれど――
 今まで、18年間生きて来て、いろんな人と出会ったけれど、
 僕はその度に、人を傷つけてきたような気がします。
 そんな歌を歌います。」

「傷つけた人々へ」は、その過激なタイトルと相反して、メロディはどこかフォーク調で、美しい旋律で構成される。当初、音楽評論家から “フォークロック” と評された、彼の音楽スタイルの垢抜けなさが、むしろ、この曲の場合は心地よく響く。尾崎が中学時代に過ごした練馬の風景を、連想させるからかもしれない。

 どれだけ言葉費し
 君に話したろ
 どんな言葉でも
 言いつくせなかった事の答も
 ひとつしかないはずと

そこから始まる物語、ライブハウスには若さが似合う


この日のライブを収めた『OZAKI・18』を見て、印象的なシーンがある。それは、最後の曲「15の夜」を歌い終え、楽屋に引き上げる時の尾崎の顔だ。明るいのだ。歌い終えた高揚感と、観客の手応えの満足感と、まだ見ぬ未来への冒険心が表情から見て取れる。コーラを飲む顔は18歳の少年そのものだ。ステージで反逆の若者を演じて見せた “役者・尾崎豊” とは違う、素直な尾崎少年である。

尾崎豊は伝説への道を歩み出した。キャパシティー300のちっぽけなライブハウスから始まる物語だが、プロローグとしては申し分ない。それは、彼の前にここから巣立った多くの先人たち―― 例えば、井上陽水、荒井由実、イルカ、シャネルズ、佐野元春らのその後の軌跡が示すように、大事なのは、箱の大きさではなく、いつ、ここに立つかということ。尾崎の場合、それは18だった。

そう、ライブハウスには若さが似合う。雑居ビルに店子で入る小箱だけに、使用料がリーズナブルで、デビューしたてのカネのないバンドにも優しい。将来、売れるか分からないミュージシャンの卵を試すレコード会社にとっても、使い勝手がいい。逆に言えば、そんな間口の広さが、未来のスターを生む。

改めて言う。ライブハウスをなくしてはならない!


改めて言う。ライブハウスをなくしてはならない。今はちょっと時期が悪いだけなのだ。この嵐が過ぎ去った日には、再び、若きミュージシャンのために活躍してもらわないと困る。その日を迎えるためにも行政には手厚く支援をしてもらいたいし、僕ら観客もできることから手を差し伸べよう。そして来たる日には、これまで以上にライブハウスへ足を運ぼうではありませんか。

例えば―― 未来の尾崎豊を見つけるために。

2020.03.15
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  Apple Music
 

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カタリベ
1967年生まれ
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