3月24日

ストーンズの「ダーティ・ワーク」と中華鍋を振るキース・リチャーズ

31
0
 
 この日何の日? 
ローリング・ストーンズのアルバム「ダーティ・ワーク」がリリースされた日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます

 
 1986年のコラム 
あー、たまらん!アニタ・ベイカーの「スウィート・ラヴ」に一耳惚れ♡

知世のお姉ちゃん現る、原田貴和子は噂に違わぬ美人じゃないか!

会員番号12番、地上に舞い降りた天使「河合その子」に恋をした!

16歳で出会った最高のアルバム、ストーンズの新譜「ダーティ・ワーク」

80年代イントロなんでもベスト3 ~ その3「コミカル・イントロ」

ヴァン・ヘイレン、アナタはデイヴ派? それともサミー派?

もっとみる≫






photo:UNIVERSAL MUSIC  

「下北沢にキース・リチャーズがいるんだけど」 ―― 進学を機に秋田から上京して2か月ちょっと、ひとり暮らしを始めて貧乏生活にも慣れてきたある日、同郷の友人がそう言った。本当なら、会いにいかないとイカンだろう。というわけで、夕方に友人と待ち合わせ、キースの居場所に連れて行ってもらった。

北口から5分弱、開かずの踏切手前、線路の向こうにはスズナリが見える、そんな場所に目的地はあった。それは古びた食堂。中に入るとぎっちり満員で、座席が空くまで待たないといけなかった。やっとこさお店に入り、席に着く。友人が厨房を見るように促すと、キースはギターではなく、中華鍋を黙々と振り回していた。

いや、それにしてもよく似ている。顔の輪郭からシワ、眉の濃さ、髪の跳ね具合まで。「本人だべ? 出稼ぎに来てるんだな」と、小声で友人と話した。

いうまでもなく、当人のワケがない。ストーンズはアルバム『ダーティ・ワーク』をリリースしたばかりだし、忙しいに決まっている。そもそも当時のストーンズは麻薬がらみの問題を引きずり、入国できないバンドといわれていた。しかし、こちらは秋田から出てきたばかりの純朴すぎる田舎者だ。キースがいたとしても “東京って、やっぱりすげーなー” と受け入れるくらいの心の隙はあった。

数日後、『ダーティ・ワーク』からの2枚目のシングル「ワン・ヒット」のプロモーションビデオを TV で見たが、キースはやはり中華鍋ではなく、ミック・ジャガーにぶつけたれ! というほどの勢いでギターを振り回していた。前年にミックが初のソロアルバム『シーズ・ザ・ボス』を発表し、“勝手なことをしやがって!” とキースを怒らせたという噂は音楽誌を通じて耳に入っていた。そんなストーンズの不仲説を逆手にとった PV だった。

この頃のミックはソロアルバム、さらにストーンズの新作のプロモーションのため、音楽誌で頻繁にインタビュー記事を見かけた。それに比べるとキースのインタビューは珍しく、ミックのようなリップサービスとも無縁だった。ミックがフロントマンだから当然といえば当然だが、二十歳そこそこの自分には寡黙な方がかっこよく見えて、このころからなんとなくキースに肩入れするようになる。

話を下北沢に戻そう。蜂屋という名の例の食堂に、自分はその後も頻繁に足を運ぶようになる。なぜなら、とにかく安かったから。ラーメン150円にギョーザが100円。学食でかけそばを食べても170円だったのだから、そりゃあ若くて貧乏な胃袋はラーメンに飛びつく。バイト料をもらえた日には贅沢してラーメンとギョーザに、チャーハン200円を付けてみたり。それでも500円でお釣りがくるのだから、お腹的にはいつも満足。いつ行っても混雑しているのは納得できた。

中華鍋のキースは、いつも黙々と仕事をしている。本当はキースなんじゃないか…? という気持ちが心のどこかにあって、“何か話してくれないかなあ” と思いつつ観察してみたりもしたが、下北のキースは寡黙だ。たまに唇が動くことはあっても、その声は客の話声や、野菜を炒める音にかき消され、ほとんど聞こえることはなかった。

初めてお店を訪れてから1年ほど経ったある日、いつものようにそこに行ってみると、蜂屋は閉店していた。理由はわからない。安くお腹いっぱいにできる店がなくなったことはもちろんだが、下北のキースに会えないことにも寂しさを覚えた。

その翌年、本物のキース・リチャーズはミックの向こうを張り、ソロアルバムをリリースする。タイトルは『トーク・イズ・チープ』 = “グタグダ言うな!”(意訳)。

2019.06.27
31
  YouTube / The Rolling Stones


  Apple Music


  Apple Music
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1966年生まれ
ソウママナブ
コラムリスト≫
21
1
9
8
9
大喧嘩する兄弟、切っても切れないミック・ジャガーとキース・リチャーズ
カタリベ / 宮井 章裕
26
1
9
8
5
鬼気迫るパフォーマンス、ミック・ジャガーの凄まじいエネルギー
カタリベ / 宮井 章裕
28
1
9
8
8
唯一無二。ストーンズのキース・リチャーズが作った至高のロックンロール
カタリベ / 宮井 章裕
24
1
9
8
6
16歳で出会った最高のアルバム、ストーンズの新譜「ダーティ・ワーク」
カタリベ / 宮井 章裕
63
1
9
8
1
スタート・ミー・アップでわかるミック・ジャガーの商才と商魂
カタリベ / 中川 肇
34
1
9
8
8
ミック・ジャガー奇跡の初来日、音楽ファンの枠を超えたビッグニュース!
カタリベ / 宮井 章裕
Re:minder - リマインダー