郷ひろみといえば… モノマネの三大フレーズは?
2021年末のNHK紅白歌合戦、郷ひろみの出演順は白組トップバッターだった。芸歴や66歳という年齢を考えると、番組後半にしっとりバラードを歌いそうなところだが、堂々の2曲目。大晦日の夜、お茶の間に響き渡る「♪ジャパーーン!」のシャウト。若手に負けないアイドル感とアッパーすぎるノリで、まだ温まっていない会場を盛り上げる。さすが、ひろみである。
鼻にかかった特徴的な声で、多くのモノマネ芸人や素人に真似されてきた郷。郷をモノマネするときにおなじみのフレーズが「♪ジャパーーン!」と「♪君たち女の子~ ゴーゴー!」だと思うが、40代以上の人なら「♪リィーーーーー」も忘れ難いのでは。
そう、郷が二谷友里恵に捧げたラブソング「REE」の中のサビである。“REE(リー)” とは友里恵から取った彼女の愛称だ。
郷ひろみ、愛するリーの隣で「REE」を熱唱した「夜ヒット」
1987年、郷ひろみと二谷友里恵の婚約発表時の騒がれ方はすごかった。トップアイドルと人気二世女優の電撃結婚。私が強烈に覚えているのが、結婚式の2日前にフジテレビ『夜のヒットスタジオDELUXE』に出演した郷が、隣に二谷を座らせて「REE」を熱唱した場面だ。
「♪リィーーーーー」と歌い上げる大スター郷の隣で、うつむくこともなく大きな瞳を見開く二谷。当時22歳とは思えない、落ち着いた堂々たる態度は余裕さえ感じさせた。さすが、大物俳優二谷英明&白川由美夫妻の令嬢。ドラマ『青が散る』や『はね駒』で彼女が演じた “勝ち気で利発なお嬢様” という役どころそのままだ。
庶民にはあまりにも眩しい、パーフェクトでリッチな美男美女カップル。リーきれいだけど、郷ひろみ尻に敷かれそう……。そんな庶民的な感想を私は抱いた。
時代が詰まったキラキラバラード「REE」、あんなに愛し合っていたのに…
「REE」というこの曲、作詞作曲ともに郷ひろみと思いきや、作詞はジョー・リノイエ。バブル末期、深夜に散々流れた武富士のCM曲「シンクロナイズド・ラブ」をつくった人だ。とはいえ、郷の想いを聞いて作詞したのだろう。「REE」では、彼女への熱い想いが英語で “どストレート” に歌われている。
洋楽では、「哀しみのアンジー」「オー・ヨーコ」「オー・シェリー」「サラ・スマイル」など、恋人やパートナーの名をタイトルにしたラブソングをいくつか思い出すが、邦楽ではほとんど記憶にない(有名曲あったらすいません)。
愛称とはいえ、「REE」をタイトルにし、サビで思いっきり「♪リィーーーーー」と歌い上げる郷。いかに二谷のことを愛していたか、よーくわかる曲ではないか。いや、「♪リィーーーーー」ではない。巻き舌で「♪ゥリィーーーーー」が正しい。Rだもの、巻き舌大切よね。
曲の後半にこんな歌詞がある。
There may come a time when you and I
Could be just facin' separate ways
I'm afraid to see that
But I'm sure that we can find ourselves
In harmony again
And I am willing to take that chance
現実は1998年にseparate waysとなり、In harmony againとはならなかったわけだ。つまり、もう郷が二度と「REE」を歌わないってことか、と当時私は残念に思った。80年代末という時代が詰まったキラキラバラードって感じで、この曲結構好きだったから。
大ベストセラー『愛される理由』(二谷著)ではキラキラカップルだったのに、『ダディ』(郷著)VS.『楯』(二谷著)の暴露本合戦となったのもなんだかなぁと。
今や女帝? 教育事業会社のトップに君臨するリー
「♪ゥリィーーーーー」というモノマネも見聞きしなくなり、「REE」の曲のことも忘れかけていたが、この間「家庭教師のトライ」のCMを見て、ふと思い出した。2005年からトライグループの社長を務める二谷友里恵。業績は好調らしい。2021年秋、トライグループが英ファンドに1100億円で買収されると報じられたが、これもさらなる事業拡大のためとのこと。
そういえば二谷、郷と結婚していたときも、自身の名をつけたファッションブランドを経営していた。百貨店には「YURIE NITANI」の皮革製品が並び、一流ブランド店が多い青山みゆき通りに路面店があったっけ。もともと商才がある人なのだろう。
2016年、白川由美の葬儀で喪主を務めた二谷の写真を見た。以前と変わらない美貌に大きな巻き毛のゴージャスなヘアスタイルと貫禄が加わり、まさに “女帝” といった印象を受けた。
もう、彼女が “リー” と呼ばれることはないのだろう。そして、あの曲を思い出すこともないのだろうか。たとえ別れてしまっても、天下のスター郷ひろみが自分に曲を捧げ、人気番組で熱唱してくれたことは、女冥利に尽きるのでは。いや、リーにとってはそんな過去、些細なことなのかもしれない。
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2022.01.31