夏うたを2026年の視点で再編集 vol.3
SUMMER TOUR / RCサクセション
セクシーで大人びた、しかし狂おしいラブソング「SUMMER TOUR」
2026年6月、所用で秋田の実家に帰省した。梅雨でジメジメしている東京に対して、梅雨入り前のこちらは過ごしやすい…… はずだが、とにかく暑い!日中は東京よりも気温が高く、30℃を超える日もあった。ジメジメよりはマシかなあと思いつつ、汗をかきながら庭仕事したり。ともかく、ひと足早いそんなサマーツアー。というワケで、本題のRCサクセション「SUMMER TOUR」の話に入ろう。
1982年6月、秋田の高校生だった筆者は地元のレコード屋で、発売と同時にこのシングルを購入した。もともとRCサクセションが好きだったということもあるが、この時期の彼らは一気に全国区的に名を知らしめる存在となっていた。きっかけはこの年の春、ボーカルの忌野清志郎と、イエロー・マジック・オーケストラの坂本龍一と組んでリリースしたシングル「い・け・な・い・ルージュマジック」が大ヒットしたこと。CMソングとなったことで、清志郎の声はお茶の間に一斉に響き渡った。そんな彼がRCサクセションに戻り、最初にリリースしたのがこのレコードだ。
歌詞は、恋人かアバンチュールの相手かはわからないが、いなくなった女性を追いかけたい真夏の男心を歌ったもの。セクシーで大人びた、しかし狂おしいラブソングだが、ソウルファンの清志郎らしく「♪旅立てジャック」というレイ・チャールズの曲名からの引用が挟み込まれたりして、感触はポップだ。とはいえ、やはり夏の曲である。
清志郎が敬愛していたオーティス・レディングの熱血楽曲を彷彿
離ればなれ No No Baby
これじゃまるで 刑務所だ
焼けつくような No No Baby
ひびわれたコンクリート暑い夏
あの娘がいるのと、いないのとでは、シャバと牢獄ほどの差がある…… ということなのだろう。そんな夏は、ただただクソ暑いだけだ。RCサクセションらしいソウル風のアレンジは忌野清志郎が敬愛していたオーティス・レディングの熱血楽曲を彷彿させる。クソ暑さを表現しているにもかかわらず、面白いのは曲のアレンジ自体が妙にヒンヤリしていること。イントロの機械的なシーケンサーの音、それに続くキーボードのスペーシーなリフ、ボーカルやコーラスにかけられたエコー。それまでのRCの濃縮されたロックンロールに比べて空間性があり、不思議と風通しが良い。
ニューウェイヴ風の「い・け・な・い・ルージュマジック」を経たことによるテクノの影響もあったのだろう。涼しさと、鉄板の上で焼かれるような暑さが同居する、当時のRCサクセションとしてはある意味実験的なロックンロール・ナンバーと言えるだろう。ニューウェイヴにはまりつつあった身には、これは新鮮ではあったが、一方では仲井戸麗市のギターの主張が引っ込んだ感がある。いや、確かにギターは全編にわたって鳴っているが、それまでのRCのサウンドの魅力を担っていた、聴く者の耳に切り込んでくるようなギターの音がないのは少々寂しくもあった。
シングルB面は真夏の不眠症を歌った「ノイローゼ・ダンシング」
そんなちょっとした不満を解消してくれたのが、B面に収録されている「ノイローゼ・ダンシング(CHABOは不眠症)」だ。CHABOこと仲井戸麗市がリードボーカルを取るこのナンバーはブルージーなロックンロールで、イントロのヘビーなギターがとにかくかっこいい。タイトルどおり真夏の不眠症を歌った曲で、7分弱にわたって重たいビートのブルースが展開される。
A面の風通しの良さに比べると、こちらははるかに不快指数が高く、これはこれでクセになってしまう。余談だが、翌1983年、筆者は夏休みに初めて上京したのだが、東京の息詰まるような暑さは秋田のそれとはまったく別物で驚いた記憶がある。そりゃあ、RCサクセションもこんな曲をやりたくなるわけだ…… と妙に納得した。
それでも現在の真夏に比べれば、当時はまだ涼しかった。エアコンがなくても眠れたのだから。あの頃に比べると現在の真夏の気温は3〜4℃、場所によってはそれ以上上昇している。8月の秋田も35℃を超えるのは当たり前になってしまった。この暑さからトンズラできる場所があるなら、すぐにでもサマーツアーに出かけたい…… 今聴いても、そんなことを思わせる名盤・名曲である。
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2026.07.14