原宿 伝説の理容店、一世風靡セピアとリーゼント

その床屋は原宿キディランドからちょっと入ったところ、キャットストリートの一本隣の路地にあった。２人分の理容椅子と大人４人が座れば埋まってしまう長椅子があるぐらいの小さなお店。夫婦で切り盛りし、親父さんのテクニックは間違いがなく、常にかっこよく仕上がるので近所では評判の店。ハサミでカットするより手間のかかるレザーカットが印象的でザクザク髪を剃刀で梳いていくスタイル。

私は子供の頃から2000年位までこちらでお世話になっていた。そんな自分の子供時代の写真などを見返すと最近の美容師たちも驚くのではないかと思うぐらいメリハリの利いた仕上がりだ。店の名前は「昭和軒」という。2005年頃に火事になり移転。そのあとすぐに閉店したらしく今はもうない。

実はこの昭和軒、舘ひろしや岩城滉一がいたクールスのメンバーを始め、ロカビリーバンドやローラー族のリーゼントを作り上げてきた店。思い返せば店内のストレイキャッツ率が異常に高い日がありました（笑）。親父さん自らが作り出したリーゼントに特化したスゴ技が口コミで広まり、1980年代に入ると哀川翔や柳葉敏郎を輩出した一世風靡のメンバーも通っていたと聞いています。

咲きほこる花は 散るからこそに美しい
散った花片は 後は土へと還るだけ
それならば一層 斜めを見ずに
おてんとうさんを 仰いでみようか

店から出るときに尖ったリーゼントを誇らしげに太陽に突き上げている不良っぽいお兄さんたち。その姿を思い浮かべる度、私は「前略、道の上より」のこの一節を思い出してしまいます。


前略、道の上より
作詞：セピア
作曲：GOTO
発売：1984年（昭和59年）6月25日


2016.02.03