ショーケンと呼ばれた男が逝ってしまった。
ショーケンといえばテンプターズ、太陽にほえろ!、前略おふくろ様… 代名詞に事欠かない。でも、僕にとってのショーケンは「BIGI」であり、「イン&ヤン」だった。
彼こそが70年代から80年代にかけての “煽り続けた第一人者” では無かっただろうか?
お前たちもっと格好良くなれよ!
もっとだ、もっともっと!!
彼の着こなしや格好良さ、そして菊池武夫のテーラーリングが80年代のDCブランドブームを生み出し、若者たちをダサい服から解放したのだと思っている。
ショーケンの着こなしを見て、伝説のカンフースター、ブルース・リーもカンフー着を脱ぎ捨て、完璧なまでのスリーピース姿を『燃えよドラゴン』で披露している。鍛えあげられた肉体を包む「BIGI」のスーツはショーケンとは違った色気を発していた。
―― 高校の3年間、地元の学生服屋でバイトをしていて、その目の前が「Men's BIGI」のショップだった。当時のデザイナーは菊池武夫から今西裕次に変わっていたが格好良さは相変わらずで、連日めかし込んだ男女が出入りしていた。そこを横目で見ながら「いつかは俺も Men's BIGI」と呪文の様に3回唱えていた。
その後念願叶って「BIGI」のスーツに袖を通すのは大学の入学式、18才の春の事だった。
さて、ショーケンが「BIGI」の衣装を纏って東京の街を自由奔放に駆け抜けるTVドラマ『傷だらけの天使』。そこには、日本で初めて「衣装協力:BIGI」というクレジットが刻まれることになる。
そして、このドラマから完全にインスパイアされた「傷だらけの天使」という曲ーー シンガーソングライター 小山卓治が勝負をかけた3枚目のシングル。
俺たちは最後に笑うはずだった
まるで映画のヒーローみたいにさ
Get Away 優しくしてくれるだけで
Get Away 本当は嬉しかったんだ
Get Away 目の前を風が走り抜け
Get Away そして何も残っちゃいねえ
ここで歌われる景色は、『傷だらけの天使』が劇場公開されることを想定して書いたのかと思ってしまうほど、詩が悉く映画的だった。
大人になって聴くと敗れざる者たちの捨て台詞的な格好良さがあり、尾崎豊が大人になりたくない男の心情を描写しているなら、小山卓治は大人になり損ねた男の心象を捉えていた。それにしても、この人が何故売れなかったのかさっぱりわからない。
―― ショーケンが亡くなった日、不思議と僕は「BIGI」のスーツを着ていた。18才の春に初めて袖を通した「BIGI」のスーツ。
こう言われている気がする。
まだまだ格好良く出来るだろ!?
平成という時代が間も無く終わろうとしている。でも、本当に終わるのは昭和って時代なんだろう。平成が始まった時に大正時代に思いを馳せなかった様に、昭和も忘れさられてしまうのだろうか。
だったら尚更、俺たちの時代の「傷だらけの天使」にせめて最後の別れを。
さようなら、そしてありがとう。
2019.03.30
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