私の中で、周期的に巻き起こるのが萩原健一ブームだ。特に燃えあがったのが十代後半の頃。きっかけは、ドラマ「傷だらけの天使」の再放送。さらに、ほどなくして、主演映画「恋文」が公開になった。
このときの役がまた色っぽくてずるい男なのだ。妻子がいながら、余命わずかな昔の恋人の元に走り、離婚してくれと妻に頼みこむ。妻役の倍賞美津子が離婚届を渡すと、ショーケンははにかんだような笑顔を見せながら、こう言う。「これ、ラブレターだよ。俺、こんなすごいラブレターもらったの初めてだ」こんなずるい男、ショーケンにしか演じられない。そりゃ実生活で、美津子も惚れるわけだ。
「恋文」公開後、マインドホースという名の萩原健一ファンクラブが結成され、ファンの集いが開催された。たしか入会金と年会費で5~6千円、集いの参加費は1万円。18歳には高い。だが迷った末、私はファンの集い目当てでマインドホースに入会した。
会場は新宿のショーパブ。丸テーブルが並ぶ会場には、50~60名くらいの会員がいただろうか。みんな私よりずっと年上で、私が座ったテーブルでは、テンプターズ話で盛り上がっていた。黙って缶ビールを飲む私。そこにショーケンが登場し、トークと質問コーナーの後、各テーブルを順々に回ってくれた。私の隣があいていたため、なんと隣にショーケンが座る。
「カンパーイ」なんてやって、ビールの缶をぶつけあったのだが、私は緊張のあまり真横を見ることもできず、言葉もかけられなかった。ああ、うぶな18歳。だが、他のテーブルを回るショーケンをちらっと見ると、そのたびに必ず目が合うのだ。なんなら、ニヤリなんて顔もする。こんなに目が合うって偶然なんかじゃない。そう思った私は、後日、興奮気味に友人にそのことを語った。すると、友人はこう言った。
「それさ、会場にいた女の人、みんな思ってるよ。モテる男ってそういうもんよ」
ああ、そうか、モテる男は視線を合わせるタイミングを逃さないんだ。相手に興味あるなしに関わらず、勘違いさせるんだね。
翌年、ショーケンはシングル「愚か者よ」を発表した。エモーショナルな歌いっぷりが魅力的だったが、私が好きなのは、はにかんだように笑うショーケンだ。カリスマモデルだった美女と再婚し、幸せそうな最近のショーケンだが、いつまでも多くの女たちを勘違いさせる危うい男でいてほしい。
2016.09.02
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