さて、世界の中で、おそらく私だけしか研究していないであろう、孤独の「源流」研究シリーズが続きます。今回は「胸キュン、♪ ミファミレド」の源流を探る旅の第2回目にして、早くも最終回です。
まずはおさらいです。前回取り上げた曲の歌詞で、下線を引いた部分を意識して歌ってみてください。
■H
2O『想い出がいっぱい』(83年)
♪ しょうじょだったと
いつのひか■THE ALFEE『恋人達のペイヴメント』(84年)
♪ ながいかみ き
みのしるえっと■テレサ・テン『時の流れに身をまかせ』(86年)
♪ いちどのじんせ
いそれさえこの下線を弾いたところの、胸がキュンとする音列が「胸キュン、♪ ミファミレド」なのです。図にするとこうなります。

今回は、その源流に、どんな洋楽曲があるのかを確かめてみたいと思います。
まず、やはりビートルズです。曲は『フール・オン・ザ・ヒル』(67年)。最後に出てくるこの下線の部分が、まさに純正の「胸キュン、♪ ミファミレド」になっています。
♪ He never listens to them, He
knows that they're the foolsこれがおそらく「胸キュン、♪ ミファミレド」の源流、大河の最初の一滴ではないかと思われます。ただし、日本人の音楽家に影響を与えた「胸キュン、♪ ミファミレド」は他にもあります。
日本でも大変に親しまれた、ボズ・スキャッグスの大ヒット『ウィアー・オール・アローン』(76年)の歌い出しはどうでしょう。いきなり「胸キュン、♪ ミファミレド」が炸裂します。
♪ Out
side the rain begins美しいですね。『フール・オン・ザ・ヒル』のように大サビのここぞというところで響き渡る「胸キュン、♪ ミファミレド」もいいですが、静かに始まる歌い出しでの「胸キュン、♪ミファミレド」も、たまらないものがあります。
しかし、世界でいちばん有名な「胸キュン、♪ ミファミレド」は他にあります。これはどちらかというと、『フール・オン・ザ・ヒル』系の、大サビのここぞというところで響き渡るものです。
それも「ここぞ」感が違います。世界ポップス史上、最高水準の「ここぞ」というところで輝く「胸キュン、♪ ミファミレド」。
―― サイモン&ガーファンクル『明日に架ける橋(Bridge Over Troubled Water)』(70年)。
「え? あの曲に ♪ ミファミレドなんてあったっけ?」と思われる方も多いかもしれません。いやいや、あるじゃないですか。とびきりの ♪ ミファミレドが。
「ここぞ」も「ここぞ」、大サビも大サビ、アート・ガーファンクルの超高音が響き渡るあそこが、「胸キュン、♪ ミファミレド」なのです。
♪ Like a bridge over
troubled waterどうでしょう。これがおそらく、世界で最も有名な「胸キュン、♪ ミファミレド」です。何といっても音が高い。「ミ・ファ・ミ・レ・ド」が「G・A♭・G・F・E♭」ですから、抜群のテンションの中で響き渡る ♪ ミファミレドです。
最後に、この洋楽3曲が生み出された場所に注目してください。時代順で行きますと、まずビートルズ『フール・オン・ザ・ヒル』は当然イギリス産。サイモン&ガーファンクル『明日に架ける橋』はアメリカのニューヨーク産。ボズ・スキャッグス『ウィアー・オール・アローン』はアメリカ西海岸、ロスアンゼルス録音になります。
そうです。イギリス→ニューヨーク→ロスアンゼルスと、世界一周の形になっているのです。ポール・マッカートニーから始まって、大西洋、太平洋を超えて、そして80年代の日本にたどり着いた ♪ ミファミレド。これはもう、島崎藤村「椰子の実」にも似たロマンがありますね。
「胸キュン、♪ ミファミレド」の歴史、いかがでしたか? さーて、次は何の源流を探ろうかしら。
歌詞引用:
想い出がいっぱい / H2O
恋人達のペイヴメント / THE ALFEE
時の流れに身をまかせ / テレサ・テン
ビートルズ / フール・オン・ザ・ヒル
ウィアー・オール・アローン / ボズ・スキャッグス
明日に架ける橋 / サイモン&ガーファンクル
2018.06.29