中学3年の一学期早々、僕は部活(剣道部)を辞めることにした。
そう簡単には辞めさせてもらえないのはわかってはいたけど決意は固かった。まずはそれを部活の仲間に伝え、次に顧問の先生に伝えるために職員室に向かった。
少しは言い訳を考えてから行くべきなのに、辞めると決めてしまったので何も考えず正面突破でただ「辞めます」と。
でも顧問の先生がすんなり「はい、どうぞ」と言うわけもなく、
どうして辞めるんだ?
何か嫌なことがあるのか?
あと半年で引退じゃないか
今まで続けてきたのに、
もったいないと思わないか?
内申にも影響するぞ
などとしつこい説得を受けているうちに、だんだん話をしているのが嫌になってきて我慢できず、
見たいテレビがあるんです!
と本当のことを言ってしまった。顧問は一瞬言葉を失い、「好きにしろ!」と言ってその場から出て行ってしまった。
その見たかったテレビ番組は1978年4月から東京12チャンネル(現・テレビ東京)で放送が始まった『ロックおもしロック』だ。
毎週日曜日午前10:00から30分の音楽番組で、チャーやゴダイゴ、ツイストなど毎週色々なバンドのスタジオライブが放送され、アマチュアバンドの「勝ち抜きバンド合戦」も楽しみのコーナーだった。
プロ並みの演奏をするバンドもいて、カウンタックやZEROというアマチュアバンドには目が点になるほどの衝撃を覚えた。そんな30分間ロックどっぷりな番組があったら竹刀なんか振り回している場合じゃないでしょ。
もうひとつ、この番組の途中で流れるグレコのCMも見逃せなかった。それはグレコの「GO」というギターのCMで、プリズムの和田アキラが一人でギターを弾いているだけなんだけど、これがもう強烈な早弾き。
ナニコレ? 本当に弾いているの?
ギターのヘッド側から指板を撮影しているので指の動きはよく見えるのに早すぎて全然追いつけない! 真似できるのは最初の部分と最後の首を回すところだけ。フランジャーの音もよく知らない中学生には刺激が強すぎた。翌日の学校では朝から友達と「どうなってるんだ、あれは」とこのCMの話ばかり。
そんなわけで僕は毎週『ロックおもしロック』を見続けることができたのだが、剣道部も辞めることはなかった。仲のいい友達からの引き留めもあって僕だけ日曜日の部活はサボってもいいということになったのだ。
それを面白く思わない部員もいたけど、そんなことは気にせずふてぶてしく部活を続けられたのは、近田春夫やチャーの楽しそうにふざけてる姿を見たからのなのかな。ふざけながらも演奏が始まるとビシッと決める格好良さ。
『ロックおもしロック』という番組名の格好悪さが何よりも格好いいと思ったのだ。
2017.05.22
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