ギタリストが思い切り顔を歪めながらギターを弾いている映像ってよく見ますよね。代表的なのは『哀愁のヨーロッパ』のカルロス・サンタナ。他にはジャーニーのニール・ショーンやマイケル・シェンカーなど。
私は勝手ながらこういう瞬間を「顔で弾いている」と命名しているんですが、たいていの場合、哀愁を帯びた泣きのフレーズを弾いているときが多い。所謂「泣きのギター」っていうやつです。ですので、顔を歪めながら泣きのギターを弾いている場面を、これまた勝手ながら「泣きのギターを顔で弾いている」と命名しております。
そもそも、なんで「泣きのギター」って言うんでしょうかねえ? やっぱりビートルズの『ホワイル・マイ・ギター・ジェントリー・ウィープス』あたりからきてるんですかねえ。まあとにかく「泣きのギター」を「顔で弾く」人でこの人を忘れてはいけません。顔はいかついけれど、とにかくギターが泣きまくる、ゲイリー・ムーアです。
ゲイリーはハードロック、メタル、ブルース界で名を馳せた人ですが、何といっても一昨年のソチ五輪フィギュアスケート・ショートプログラムで羽生結弦が優勝した時の使用楽曲がゲイリーの『パリの散歩道』だったということが記憶に新しいですね。速弾きは勿論、ギター・テクがズバずば抜けているゲイリーの持ち味として『パリの散歩道』にみられるような「泣きのギター」は欠かせません。そして思い存分「顔で弾いて」くれます。
彼はプロとして活動し始めてから、メインにしかなり得ないほどの火を噴くようなギターを弾いていたので、ソロとして高名になるまでは渡り鳥のようにバンドを転々としていました。のちにソロでやっていく自信がつくきっかけともなったのが、78年に初のソロ名義でリリースした『パリの散歩道』のヒットだそうです。
この壮絶な泣き楽曲(ライヴでは、さらに泣きまくる、ためまくる!)は、ゲイリーのいちばんの代表曲ともなりました。その後レコード会社とのゴタゴタなどあって、しばらく思ったようにリリースができずにいましたが、82年のソロ『大いなる野望』から彼の本格的な快進撃は始まります。
ちなみに、ソチの時の羽生結弦の練習時にはゲイリー・ムーアが在籍していたコロシアムⅡの曲が使用されていたようです(結弦という名前もなんだかギタリストとの縁を感じます)。今季のショート・プログラムはプリンスの『レッツ・ゴー・クレイジー』ですし、羽生選手まわりのスタッフ、なかなかのセンスですね。
2016.10.21
YouTube / Neil Murray
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