11月21日

まだまだ大丈夫だぜ!佐野元春のクリスマスソングが教えてくれたひとりぼっちの勇気

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佐野元春の12インチシングル「CHRISTMAS TIME IN BLUE 聖なる夜に口笛吹いて」がリリースされた日
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photo:SonyMusic  

すべての人に訪れるクリスマスの夜、佐野元春が歌う普遍的メッセージ


1985年、僕は17歳だった。頭の中は女の子と遊ぶことしかなかった。だからクリスマスにはバイトで稼いだなけなしのお金でデートをするか、友達とバカ騒ぎをしたい。独りぼっちは絶対に嫌だと思っていた。そんな十代の稚拙な思考がゆっくりと溶けていったのは、この曲に出会ってからだった。

 街の Little Twinkle Star
 夢に飾られているけれど
 かまわないさ このままで
 歩き続けよう
 Christmas time in Blue
 街の輝きはやがて にじんでゆく
 時の流れのままに
 約束さ Mr.サンタクロース
 僕は あきらめない
 聖なる夜に口笛吹いて

すべての人に訪れるクリスマスの夜に何を思うか。自分にとってクリスマスはどんな日なのか?大人になって少しずつ世の中のことがわかってきた今も自問自答している。ジョン・レノンはひたすらに平和を願い、佐野元春も同じように地球上すべての人が幸せであるようにと普遍的なメッセージを残している。

CHRISTMAS TIME IN BLUE - 聖なる夜に口笛吹いて -


そこには、自分が主体ではない、世の中を見渡すフラットな視点と無償の愛… そして、自らが現実と向き合う痛みが潜んでいる。これを十代の少年に理解しろと求めるのは難しい話ではあるが、17歳の僕に、ほんの少しだけは届いた。

「CHRISTMAS TIME IN BLUE 聖なる夜に口笛吹いて」は、それまで元春が描いてきたリリックの世界とは少しばかり違っていた。84年のアルバム『VISITORS』まで、元春はストーリーテラーとして、自分の分身であるかのような都市生活者の心情を歌にしてきた。ところが、ここにきて初めてその囲いを蹴り飛ばし、自らと対峙しつつも、おおらかな広い視野で世界を包み込むような歌を作り上げた。

これは、僕にとって大事件であったし、この歌と向き合うことにより、成長の扉がひとつ開いたような気がした。

ロックンロール… それは痛みを知るほどに深く共鳴し、寄り添ってくれるもの


「CHRISTMAS TIME IN BLUE」がリリースされた前年のこと。僕はクリスマス直前にバイクで事故を起こし、病院のベッドの中だった。鎖骨の複雑骨折でまったく身動きがとれない。街にはワム! の「ラスト・クリスマス」が鳴り響く――。



事故の前日までは、この曲がチークタイムにかかる歌舞伎町のディスコでナンパに精を出していたのに… ひとりぼっちのクリスマスは自分の存在を消してしまいたいほど惨めで切なく、目には自然と涙が溢れた。

今考えると笑ってしまうほど、ちっぽけでくだらない悩みだったが、16歳の僕は本気だった。そして、1年の時が流れた。ラジオから流れる元春の「CHRISTMAS TIME IN BLUE」を聴いた時、僕は変わった。今でもはっきりと覚えているその時の思いは、「この曲、1年前の自分に聴かせてやりたい」だった。

バイク事故で入院し、ひとりきりの時間が増えたことによって、これまでの自分、これからの自分について、自問自答する時間が増えた。自分の存在って一体何なんだろう? そんな答えの出ない問いかけについて延々と考えていた。しかし、答えは音楽の中にあると信じた。そして、ひたすら音楽を聴き、今まで以上にライブに出かけるようになった。つまり、音楽との出会いの中で自分の本当の姿を見出すために格闘していたのだと思う。

特に夢中になっていたのが、アズテック・カメラや中期ルースターズなどのネオアコ系のアーティスト、そしてスタイル・カウンシルだった。彼らは洗練された音楽の裏側に自らと向き合い格闘する姿を常に垣間見せてくれる。それを感じたのが救いだった。彼らの音が洒脱にクリアーに研ぎ澄まされるほど、痛みを伴って胸に突き刺さってくる。この時、僕はロックンロールというものは痛みを知るほどに深く共鳴し、寄り添ってくれるものだと知った。

メリー・メリー・クリスマス Tonight's gonna be alright!


そして、今も僕は音楽の旅を続けている。その大きな分岐点が85年のクリスマス前にリリースされた「CHRISTMAS TIME IN BLUE」だ。

84年に自らを主人公とした革新的なアルバム『VISITORS』のリリース以降、この年に元春はアルバムをリリースしなかったが、この曲は1枚のアルバムと同じぐらいのインパクトで僕の心を大きく揺さぶった。

―― それは、僕が当時聴いていた音楽の集大成であるかのようだった。突き刺さるような痛みを伴い、そして世界を俯瞰したリリックが心の中に溶けていく。あの日、未来という荒野に向かって独りぼっちでも歩いていけるような勇気が湧いてきたのを、今もはっきりと覚えている。

 愛してる人も 愛されてる人も
 泣いてる人も 笑っている君も
 平和な街も 闘ってる街も
 メリー・メリー・クリスマス
 Tonight's gonna be alright

そして、今年も「まだまだ大丈夫だぜ」と語りかけてくれるような、元春のリリックが、クリスマスという特別の日に自分と向き合うきっかけを与えてくれる。


※2018年12月25日、2019年12月25日に掲載された記事をアップデート

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2022.12.09
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  YouTube / 佐野元春 - DaisyMusic(7分58秒~「CHRISTMAS TIME IN BLUE」)


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カタリベ
1968年生まれ
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