音楽は世代を超える。
エイティーズ後追いの世代同士でも、80年代の音楽に熱く胸を焦がす朋友もいるのだ。これは、そんなヤツとの出会いの話。
大学一年生の頃、僕は愛用のカレッジバックに、敬愛するクラッシュのジョー・ストラマーが微笑んでいるシールを貼っていた。午後の大教室で、経済学か何かの退屈な授業中であった。「クラッシュ、聴くの?」と、突然後ろから話しかけられた。振り返ると、髪をラスタマンのように長く伸ばした同年代くらいの学生が、シールを指差して微笑んでいた。
「こういう出会いが女の子とあればステキなのに……!」と内心苦笑しながら、「もちろん!」と答えた。今までジョーのシールに反応する人など周りにいなかった僕は、嬉しかったのだ。
すると彼はヘッドホンの片方を渡してきて突然、『ロンドン・コーリング』に収録されている名曲『クランプダウン』のライブ映像を流し始めた。1980年2月のロンドン・ルイシャムオデオンでのライブ、僕の大好きな映像だ!
このライブでは曲のイントロ後、ミックが手を額に当てて「ワン・ツー・スリー・フォー」とカウントする(その決まり様は素晴らしい!)。そして僕も彼も、「無意識に」、ミックと一緒に額に手を当て「ワン・ツー・スリー・フォー!」とシャウトしてしまっていたのだ。
そして彼曰く、「俺、これがロックで一番かっこいいライブだと思ってんだよね」。
おお、同志よ!
僕らは、教室を逃げ出し、熱いクラッシュ・トークで盛り上がった。粋がって「『サンディニスタ』が一番イイ」などと言いながら……。彼とはその後にも様々な思い出がある。しかしそれは別の話。
そんな彼も大学を卒業し、なんとタクシードライバーを初めたそうだ。ジョーと同じく、映画『タクシードライバー』のトラヴィスに憧れたのだろうか。何はともあれ、振り返るには早すぎる思い出かもしれないが、退屈な言葉と取られる「音楽の力」も自然に信じられた、そんな貴重な瞬間だった。
2017.03.13
YouTube / theclashVEVO
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