3月21日

イントロ平均6.6秒の今こそ聴きたい!大滝詠一から中森明菜まで80年代の神イントロ大集合

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“ヒット曲のイントロが短くなった” と言われて久しい。邦楽に限らず洋楽でも起きている現象で、理由としては、タイムパフォーマンス重視の風潮とサブスクの普及で飛ばし聴き(スキップ)がしやすくなったことが挙げられている。コンテンツが溢れる現代、せっかちになった受け手を逃さないための方策のひとつがイントロの短縮化なのだろう。

今年2月に報じられたニュースによると、奈良大学の学生、早坂結音さんが卒業論文で過去50年間(1975年~2024年)の年間ランキング上位10曲(全体で500曲)の楽曲全体とイントロの長さを検証したところ、イントロはかつて1曲平均約18秒だったが、2020年代前半には9.6秒になったという。サビに到達するまでの時間も短くなっているとのことで、“待てない” ユーザーへの対策がデータで裏付けられた格好だ。ちなみにBillboard JAPANが発表した2026年上半期Japan Hot 100の上位10曲では、イントロが0〜1秒ですぐ歌に入る作品が5曲。10曲の平均は約6.6秒だった。

なぜそんな話題を持ち出したかというと、歌謡ポップスチャンネルで放送されている『Re:minder SONG FILE』の次回テーマが「80年代の神イントロ」だからである。イントロクイズを売りとする『クイズ・ドレミファドン!』(フジテレビ系)が毎週放送されていた時代(1976年〜1988年)、いきなり歌から始まるヒット曲は少数派で、アレンジャーはインパクトのあるイントロづくりに知恵を絞っていた。必然的に “神イントロ” も多数生まれたわけだが、今回のプログラムではそのなかから12曲を厳選した。いずれもリスナーを楽曲の世界に引き込む、歌と不可分の傑作イントロ揃い。ジャンルやアレンジャーに偏りがないようセレクトしたので、是非チェックしていただきたい。

日本版ウォール・オブ・サウンドを象徴する大滝詠一「君は天然色」


番組序盤は海外でも人気の高いシティポップ2曲と、1980年代を代表するアニメソング2曲をお楽しみいただく。まずは名盤『A LONG VACATION』(1981年)でもオープニングを飾る、大滝詠一「君は天然色」から。今回は楽器のチューニング(音合わせ)から始まるアルバムバージョンをお届けする。

同バージョンはピアノが叩く “A(ラ)” の音にストリングスやパーカッションが寄り添い、スティックのカウントを経て本編に突入。1拍3連のシャッフルビートを刻むピアノとギターをはじめ、大編成のリズム隊とストリングスが厚みのあるサウンドを構築し、聴く者を華やかなナイアガラ・ワールドへと導く。

はっぴいえんど解散後、商業的な成功に至らず知る人ぞ知る存在だった大滝は、満を持して発表したこの『A LONG VACATION』が大ヒット。アルバムのリード曲として同日にシングルカットされた「君は天然色」は日本版ウォール・オブ・サウンドを象徴する1曲となった。

サントリー生ビールのCMに起用された山下達郎「SPARKLE」


1981年の夏を連れてきたイントロが「君は天然色」なら、翌1982年の夏は山下達郎「SPARKLE」のイントロで始まったと言えよう。大滝が設立したナイアガラ・レーベルからシュガー・ベイブの一員としてデビューした山下はバンド解散後、ソロ活動を開始。「RIDE ON TIME」(1980年)で、大滝よりひと足早くブレイクしていたが、1982年1月にリリースしたアルバム『FOR YOU』が年間2位のヒットを記録し、時代を完全に引き寄せる。

『FOR YOU』の1曲目に配された「SPARKLE」はシングル化こそされなかったものの、『サントリー生ビール』のCMに起用されたことでお茶の間にも浸透した。イントロは山下自身が演奏するフェンダー・テレキャスターによるキレの良いカッティングのフレーズに、タイトな16ビートドラム(青山純)とベース(伊藤広規)、キーボード(難波弘之)が重なり、さらにホーンセクションが加わる展開。音だけで夏到来の高揚感が演出されており、リリースから44年を経た今も、その輝き(SPARKLE)は些かも色褪せていない。



TM NETWORK初のトップ10ヒットとなった「Get Wild」


シティポップを代表する2人のミュージシャンのサマーアンセムに続いては、今も愛され続けているアニソンを2曲、TM NETWORK「Get Wild」(1987年)と岩崎良美「タッチ」(1985年)をお送りする。

日本テレビ系アニメ『シティーハンター』のエンディングテーマとして、TM NETWORK初のトップ10ヒットとなった「Get Wild」は、原作の世界観を反映した都会的で躍動感に溢れたデジタルロック。イントロはアニメ制作会社のサンライズから寄せられた “本編が続いているうちにフェードインしてエンディングに繋げ、切り替わりのタイミングで爆発音を出す” というオーダーに沿って作られたという。

作曲・編曲を担当した小室哲哉はアニメ本編の最後に流れる部分をシンセサイザーとサンプラーを駆使したハープ風の音色で創作。シモンズ(電子ドラム)の音にリバーブをかけて逆再生した爆発音を合図に、四つ打ちのバスドラム(山木秀夫)とエレキギター(窪田晴男)、シンセベースがダンサブルなリズムを刻むパートへと移行させる。物語の余韻に寄り添う哀愁感のあるメロディから一転、夜の街を駆けていくようなサウンドで視聴者のテンションを上げるドラマチックな構成で、アニメでは歌い出しとともにエンドロールが流れていた。

「タッチ」の青春の鼓動や恋のときめきに通じるイントロ


一方の「タッチ」はフジテレビ系で放送された同名アニメの第1期オープニングテーマ。イントロは6秒だが、矢島賢が演奏する4小節のギターリフが強烈な印象を残す。そのフレーズを聴くと、校舎の屋上から鳥が飛び立ったあと、グラウンドを走る野球選手の足元をアップでとらえた映像が甦る昭和世代も多いのではないか。

作曲・編曲を手がけた芹澤廣明は “アニソンのイントロは4小節” との前提で創作したという。テレビで流れる主題歌は1分半前後の尺となるため、イントロが長いと収まりきらなくなるからだ。作曲と編曲を同時に進行させる芹澤はアニメの世界観を踏まえつつ、間奏、アウトロとの統一性も図りながら、青春の鼓動や恋のときめきに通じるイントロを完成させる。

歌う岩崎良美はかつて筆者がインタビューをした際、 “「タッチ」のイントロが鳴ると色んなところから人が走ってくるんです” と語ってくれたことがある。それだけ人を惹きつける力があるということだ。今年3月、稲葉浩志がWBC(ワールド・ベースボール・クラシック)を中継するNetflixによる大会応援ソングとして本作をカバーしたが、イントロのギターリフは引き継がれた。これ以上のものはない、まさに神イントロであることの証と言っていいだろう。



ドラマの主題歌に起用された「Romanticが止まらない」の軽快なサウンド


さて、ここからは1980年代の音楽シーンをリードした8名の編曲家の作品から1曲ずつ、特筆すべきイントロを紹介したい。まずは “イントロの魔術師” の異名をとる船山基紀の「Romanticが止まらない」(1985年 / C-C-B)からお聴きいただく。

1983年にココナッツ・ボーイズ名義でデビューした彼らはシングル2作、アルバム2作を発表するもヒットに恵まれず、C-C-Bに改名。レコード会社も移籍して背水の陣で臨んだのが「Romanticが止まらない」であった。ディレクターの渡辺忠孝は実兄の筒美京平に作曲を依頼。作詞に松本隆、編曲に船山を迎え、鉄壁の布陣でヒットを狙った。

船山は当時先端のデジタルシンセサイザー、フェアライトCMIを駆使して、裏拍を効かせたポップなイントロを制作する。作曲の筒美は自身が構想していたサウンドと違っていたためか、スタジオでの反応は今ひとつだったが、メンバーが気に入ったため採用されたエピソードがある。TBS系ドラマ『毎度おさわがせします』の主題歌に起用された本作は軽快なサウンドがドラマのテイストにはまり、オリコン2位をマーク。所期の目的を達成した。

​​底抜けに明るい少年隊のバブルガムポップ「デカメロン伝説」


続いては2025年1月に急逝した新川博が編曲を担当した少年隊のセカンドシングル「デカメロン伝説」(1986年)。マイナー調のメロディがスリリングに展開していく前作「仮面舞踏会」とは対照的な、底抜けに明るいバブルガムポップで連続ヒットを記録した。

イントロに関しても、船山基紀アレンジの「仮面舞踏会」は5拍子に続いて「♪Tonight ya ya ya…tear」と歌うインパクトがあったが、本作も一度聴いたら忘れない強力なもの。いきなり「♪プルルルル、ワカチコ(ン)!」という謎フレーズで始まり、子供たちとのコーラスで「♪ドレミラ~ミレド、ラシドミ~ドラソ」と畳みかける。筆者は、サウンドを口真似できることがヒットの要件のひとつだと考えているが、すべて口で再現できる本作は非の打ちどころのないイントロと言える。

すでに知られつつあることだが、「♪ワカチコン!」はメンバーの錦織一清のアイデアで、元ネタはスペクトラム「トマト・イッパツ」内のフレーズ「♪ワッチコン」。メロディを階名で覚えられる仕掛けも含めて、フックのある仕上がりとなった。



​​イントロからキラキラ感全開、松本伊代「TVの国からキラキラ」


次にお送りする松本伊代「TVの国からキラキラ」(1982年)は映像音楽の世界でも活躍する鷺巣詩郎の編曲。当時24歳の若手だった鷺巣は、松本のデビュー曲「センチメンタル・ジャーニー」のアレンジを任され、同曲が自身初のトップ10ヒットになったことから引く手あまたの売れっ子となる。いわゆる82年組の先陣を切った松本は「センチメンタル・ジャーニー」「ラブ・ミー・テンダー」と、アメリカンポップス路線でヒットを重ねていたが、3作目の「TVの国からキラキラ」で路線を変更。作曲は変わらず筒美京平が担当したが、作詞にコピーライターの糸井重里を迎え、1980年代ならではのニューウェイブポップを展開した。

鷺巣のアレンジはシンセをフィーチャーしたリズム隊に加えて、ストリングス、ブラス、仙波清彦による鼓まで盛り込んだファンキーな仕上がり。8小節のイントロからキラキラ感全開で、スタジオで聴いた筒美はアイデア満載のサウンドに大喜びしたという。このときサードシングルの候補はほかに「PATA PATA」(「TVの国からキラキラ」のB面)と「魔女っ子セブンティーン」(アルバム『オンリー・セブンティーン』収録)があったが、イントロから強烈な光を放つ完成度により、本作がすんなりA面に採用された。

​​楽曲全体の叙情的なイメージを印象付ける、斉藤由貴「卒業」のイントロ


ここまで筒美京平の作曲作品が3曲続いたが、もう1曲お届けする。武部聡志が編曲を担当した斉藤由貴「卒業」(1985年)である。

武部の著書『すべては歌のために』(リットーミュージック)によると、イントロ前半のアルペジオのフレーズや、そこから発展する2段構えの構成は、もともと筒美が制作したデモに入っていたもの。武部はアルペジオのフレーズを学校のチャイムをイメージした音と受け止め、マニピュレーターの浦田惠司とともにシンセとシーケンサーによって表現した。よく聴くと、鳥のさえずりも確認できるが、それも始業のチャイムに合わせた朝の音としてシンセで作ったものである。

イントロのアルペジオはAメロのあとや間奏にも挿入され、楽曲全体の叙情的なイメージを印象付ける効果を発揮している。「卒業」は制作時27歳だった武部にとって初めてトップ10入りするシングルとなり、以後、多方面で活躍をするきっかけとなった。当時の音楽業界では “筒美京平に認められたら一人前” と言われており、筒美自身、新しい才能と仕事をすることを厭わなかったそうだが、そこで結果を出した鷺巣詩郎と武部聡志が現在も一線で活躍していることは、筒美の慧眼を証明していると言えよう。



​​ラテン風味のドラマチックな、山口百恵「謝肉祭」イントロ


8大アレンジャーによる1980年代の名イントロ。ここまで4人の傑作を紹介したが、番組終盤は大村雅朗、瀬尾一三、萩田光雄、若草恵の編曲作品をお聴きいただく。

まずは大村雅朗が手がけた山口百恵の「謝肉祭」(1980年)。のちの中森明菜のエスニック路線にも通じるスパニッシュテイストの楽曲で、イントロからジプシーのカルメンが舞い踊る絵が浮かぶようなサウンドに引き込まれる。ディレクターの川瀬泰雄は著書『プレイバック 制作ディレクター回想記』(学研教育出版)のなかで、こう述べている。もともと別の編曲家でオケまで制作したものの、イメージと違っていたことから、当時「みずいろの雨」(八神純子)などのヒットで頭角を現していた若手アレンジャーの大村に依頼。一旦、リズムトラックをレコーディングしたが、やや重たいと感じたため、一からやり直したという。

かなりの難産だったわけだが、大村はラテン風味のドラマチックなイントロをゴージャスなストリングスと、生ギター(青山徹)のカッティングで構築。それが川瀬のイメージに合致したことから採用に至る。山口百恵が婚約と引退を表明した記者会見から2週間後に発売された「謝肉祭」はTBS系『ザ・ベストテン』で1位を獲得。従来のツッパリ路線(プレイバックPart2、絶体絶命)とも、叙情的な作品群(秋桜、いい日旅立ち)とも異なる、新しい鉱脈を発見したと思えただけに、21歳での引退は残念でならなかった。

​​CHAGE and ASKA「万里の河」の中国風オリエンタルなサウンド


「謝肉祭」と同様、一瞬で国境を越えるイントロをもう1曲。次はCHAGE and ASKA「万里の河」(1980年)で中国大陸へと旅立っていただく。チャゲアスのサードシングルにあたる本作は具体的な地名こそ登場しないものの、タイトルから“悠久の大河”と言われる長江(揚子江)を連想させる楽曲。編曲を担当した瀬尾一三も中国風のオリエンタルなサウンドで、そのイメージを増幅させる。

当時はゴダイゴ「ガンダーラ」、ジュディ・オング「魅せられて」、久保田早紀「異邦人」など、エキゾチックな楽曲がヒットチャートを賑わせていたが、シンセを採り入れた「万里の河」のアレンジも音から広大な中国大陸を想起させる壮大なサウンド。イントロで馬が駆けていく映像が浮かぶのは筆者だけではあるまい。作詞・作曲を手がけた飛鳥涼はヒットを狙って書き上げたそうだが、その目論見どおり、初のトップ10入りを果たす初期の代表曲となった。



​​バロック音楽を感じさせる「秋からも、そばにいて」の荘厳なサウンド


瀬尾はシンガーソングライターの個性を引き出す編曲で第一人者となったが、同時期に歌謡曲の仕事でも腕を振るい、華やかな編曲を得意としたのがトップアレンジャーの萩田光雄だ。今回は数あるマスターピースのなかから南野陽子「秋からも、そばにいて」(1988年)をセレクトした。

メインアレンジャーとして南野作品の多くを手がけた萩田は “最も楽しい仕事だった” と回想。彼女が8作連続1位を達成したシングルA面はすべて萩田の手によるもので(「秋のIndication」では作曲も担当)、幸福なプロジェクトだったことが窺える。

「秋からも、そばにいて」はパイプオルガンとチェンバロが鳴り響くイントロからバロック音楽を感じさせる荘厳なサウンド。ナンノのお嬢様イメージにもマッチした格調高さが魅力だった。クラシック音楽にも親しんでいた南野は完成したオケから衣装をイメージして、ヨーロッパの貴婦人のようなゴージャスなドレスを用意したという。

​​中森明菜の​​代表曲のひとつ「難破船」


さぁ、いよいよエンディング。イントロ特集の締めは中森明菜の「難破船」(1987年)に任せることにした。本年7月に全国ツアーを成功させるなど、本格的な活動を再開している彼女が、タモリのリクエストに応じて、30年ぶりに出演した『ミュージックステーション』(テレビ朝日系)で歌唱した代表曲のひとつである。

加藤登紀子のアルバム『最後のダンスパーティ』(1984年)に収録された楽曲がオリジナルだが、中森の雰囲気に合うと考えた加藤からの提案でカバーすることが決定。編曲を担当した若草恵は、白井良明による原曲のアレンジをベースにしつつ、“ストリングスの名手” にふさわしい手腕を発揮する。イントロで鳴る “コォーン” という音は潜水艦をイメージしたもので、マニピュレーターの中山信彦がアナログシンセで制作。その結果、まさに難破船を思わせる、孤独や無力感が漂う仕上がりとなった。


以上12曲。一瞬で心が鷲掴みにされるイントロの数々(1曲平均27秒)をぜひ番組で味わっていただきたい。


Information
Re:minder SONG FILE「80年代の神イントロ」

ココロ躍る音楽メディア「Re:minder」がテーマを決めて珠玉のソングファイルをお届け

▶︎ 放送局:歌謡ポップスチャンネル
▶︎ 放送日時:
・2026年08月26日(水)24:00〜25:00
・2026年09月03日(木)24:00〜25:00
▶︎ 今月のソングファイル
♪ 君は天然色 / 大滝詠一
♪ SPARKLE / 山下達郎
♪ Get Wild / TM NETWORK
♪ タッチ / 岩崎良美
♪ Romanticが止まらない / C-C-B
♪ デカメロン伝説 / 少年隊
♪ TVの国からキラキラ / 松本伊代
♪ 卒業 / 斉藤由貴
♪ 謝肉祭 / 山口百恵
♪ 万里の河 / チャゲ&飛鳥
♪ 秋からも、そばにいて / 南野陽子
♪ 難破船 / 中森明菜
▶︎ 番組ページ:Re:minder SONG FILE

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2026.08.13
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