7月21日

昭和レコードのジャケット写真、グラビア編集経験者が考察するその撮り方

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「昭和レコード超画文報1000枚」発売、ジャケット写真を考察


毎日、60~80年代のシングル盤レコジャケを1,000枚見る生活が続いた。僕が企画してプロデュース&編集した『昭和レコード超画文報1000枚』(チャッピー加藤 / 303BOOKS)の撮影から編集作業までの2ヶ月間のこと。

曲やアーティストのことも語りたいことは山積みだが、そのあたりは著者のチャッピー加藤氏に任せるとして、僕のほうは、講談社の雑誌『PENTHOUSE』『Hot-Dog PRESS』編集者時代に婦人科系(女性の、特にセクシー方面の撮影を雑誌の世界ではこう呼ぶ)も担当していた経験をもとに、ジャケット写真の撮り方にアプローチしていくことにする。

中1で『週刊プレイボーイ』に載った手塚理美でグラビアの洗礼を受けてから、キャンディーズを見るための『平凡パンチ』『GORO』、上京後の『スコラ』『DELUXEマガジン』などに至るまで、根っからのグラビア好きだった。32歳で雑誌編集から離れて28年も過ぎたけど、今でもコンビニの店頭でグラビア誌やマンガ誌の表紙を見ると、出てる女のコが気になる。そして必ず、ライティング、ロケ地、スタジオワーク、レンズワーク、カットのセレクトセンス、脱がせ方、見せ方、現場がどうなっていたか、段取りはどうだったか… などを考えてしまう。

そんなことを解説するため本題へ。今回紹介・解説していくジャケットは、当然ながら女性ばかりで5枚。それぞれに解説ポイントをバラしてほぼ80年代から選んだ。

「3人」という難題をクリアした、キャンディーズ「微笑がえし」


まずは5枚中もっとも古いこれ。“全キャン連” 代表としてはこれをトップバッターにもってこないでどうする、的な。

3人という人数構成は、クリエイションとして写真に美しく収めることが難しい。特にレコジャケでは、全体のスペースが正方形なので、裁ち落とし(隅々まで写真を使うこと)で考えた場合、姿メイン顔メインどちらにせよ、どうしてもスカスカしてしまうからだ。

という中、この写真はなにげなく巧みなフレーミングである。3人の顔を寄せ、オーガンジー素材のソフトイメージな衣装もしっかり見せて、記念のラストシングルらしい華やかさも醸し出している。

ライティングは広告などで流行り始めていた、強いライトで肌色のコントラストをパキッと出つつ、赤みがじわっと滲む手法。この頃はまだグラビアには進出していなかったが、のちに席巻していくテク。僕はこれを「赤スタライティング」呼んでいた。赤坂スタジオ出身のカメラマンがよく取り込んでいたから勝手に命名。

キャンディーズの写真は、この48年間でおおげさではなく何万カットも見てきたが、“気品あふれる” という観点ではトップあたりに位置する写真だ。

レコジャケではレアな「水着」モノ、小泉今日子「素敵なラブリーボーイ」


新人アイドルの場合、デビューしたてで、まだ人気がない頃は、グラビア誌やマンガ誌やで水着を披露し注目してもらうのが現在でも常套手段。

しかしながら、新人とはいえ(これがデビュー2曲め)、雑誌ではなくレコジャケで水着とはもうなんだか、なりふりかまってないと言うか世知辛いと言うか身もふたもないと言うか、でも嬉しいと言うか……。

顔中心というか「バストアップ」…… “胸のアップ” じゃなくて、胸から上のカットということ(笑)。カメラマンとディレクターの狙いは、グラビア撮影手法 “横チチ”。これも勝手に命名で、読んで字の如く、説明不要。ボケた白い砂浜のバックから、南の島でのロケと推察。もしかすると、雑誌グラビア撮影での相乗りカットかも? レフ板の当て方にグラビア慣れしたカメラマンの匂いがするから。

絶頂期なのにセクシー系を… 松田聖子「白いパラソル」


売上げ絶好調が続き6枚目となったこの曲もオリコン1位。そんな絶頂期なのに、デコルテを露わにし、伸びる脚を隠す衣装がその奥を気にさせる絶妙な「ソフト婦人科テク」(これも石黒用語)。

メイクもこの頃の聖子には珍しく濃い目で迫る。もう水着は着なくていいとなっていても、節目節目にこうやってリビドーを刺激する姿を見せつけてくるしたたかさ。本人もスタッフもツワモノである。

素足を目立たせて色っぽく仕上げる狙いからフローリングに座らせたいと、古い洋館のハウススタジオを使ったはず。板目の幅と経年具合で、たぶんあそこではないかな? と、だいたい想像がつく。ライティング的には逆光を利かせて「飛ばし気味」に。

ちなみに同時期の聖子のジャケは同じように白っぽいものがあるが、それは逆光効果ではなく「シャ(紗)をかけて」そうなっている。カメラのレンズ前にストッキングをかぶせるとソフトに仕上がるザ・アナログ! なテク。

「赤いスイートピー」(8枚目)はかなり強めのシャだが、「チェリーブラッサム」(4枚目)に至っては、ジャケの上に牛乳をこぼしたのかという攻め攻めなシャなので、『昭和レコード超画文報1000枚』で見比べてほしい。

脚を見せたいフルショット(全身入り)、麻生真美子&キャプテン「恋の免許証」


これは実によく考えられたフレーミングである。“ミニスカ&脚を見せたい!” というメインの狙いがまずある。そこに、キャンディーズの項でも書いた、“3人” という難しさが立ちはだかる。

天地の比率的に、ただまっすぐ立っていては間抜けになるのである。そこで3者の脚3本がクロース! 幾何学的で美しく、かつセクシー。衣装の阪神カラーあるいは工事現場カラーのコントラストも、うまい。手練だ。おそらく前もってデザイナーが、タイトルまで入れてきっちり描いたデザインラフを上げてあり、それに基づいて現場で「ポラ切って」テスト撮影したことは確実。アナログ時代のプロは常に、フィルムで撮る本番の前に、まずはポラロイドで撮って、スタッフみんなが確認していたのだ。

女性では珍しかった顔をカットのトリミング、渡辺美里「My Revolution」


女性の顔写真で、これぐらい顔をカットしていくのはなかなか勇気がいると言うか、尻込みしがち。

デザイナーにはクリエイション的にこれぐらい攻めたがる人が多いけれど、本人や事務所やディレクターなどは、なかなか踏ん切りがつかないものだ。特にアイドル的要素が強ければ強いほど抵抗があるだろう。

ここまでの3曲が売上げ的に振るわなかったことも、いい方向でこのジャケのダイナミズムを後押ししたのではないかと考える。

TBS系ドラマ『セーラー服通り』の主題歌となって大ヒットしたのだから、このあとのジャケット制作に影響を与えたことだろう。これぐらいドアップになるとメイクさんはプレッシャー! ちなみに、最初からこのトリミングで現場が始まったのか、撮った中でセレクトしてこうなったかによって違うのは、衣装。顔の決め打ちの場合、下が私服のジャージだったなんてこともある……。リモートワークなどオンライン打ち合わせの、アレである。



2021.07.01
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