大相撲をなめるなよ！デュラン・デュラン「グラビアの美少女」に憤り！

大相撲が好きだ。小さな土俵の中で、力士の大きな体がぶつかり合うのがたまらない。伝統、国技うんぬんの前に、迫力あるコンタクトスポーツだと思っている。だから、ウィーザーの「ハッシュ・パイプ」、ワン・ダイレクションの「スティール・マイ・ガール」など、力士をおちょくる海外のPVを見ると、ちょっとカチンと来る。出てくるのは、四股もろくに踏めない偽スモウレスラー。“巨体が裸で押し合う異様な格闘技” としか思っていない欧米人は、いまだに多いってことなんだろう。

忘れもしない、81年にリリースされたデュラン・デュランの「グラビアの美少女（Girls On Film）」こそ、私が最初に目にした偽スモウレスラーPV。偽スモウレスラーは、スレンダーなスモウガールに投げ飛ばされ、土俵ではなくリングの上でのびてしまう。この後には、馬になった男性の上に乗るカウガール、太った男性にローションをかけてマッサージするナースなどが登場。いかがわしいうえに、かなりくだらない。あぁ、この流れに相撲が入れられるなんて。当時の大相撲は、千代の富士全盛期。筋骨隆々の男前ウルフを、大相撲を誤解している英国人に教えてあげたい、なんて思ったものだ。

この10年後の91年、ロンドンのロイヤル・アルバート・ホールで大相撲公演が開催された。すでに千代の富士は引退していたが、若貴ブームが起きていた頃。私が初めて生で見た大相撲が、このロンドン公演。ロンドン旅行も初、大相撲観戦も初で浮かれていた私だったが、何よりも気になったのが観客の英国人の反応。いい取組のときはみんな拍手喝采で、なんだかほっとした。

特に会場が盛り上がったのが、小兵の力士が大きな力士に勝ったとき。“Every Japanese woman loves Terao” なんて、連れの女性に寺尾の解説をしていた隣の英国人男性も、「体重による階級分けがないのが、スモウのおもしろさだね」と話しかけてきた。そうそう、そうなのよ、なんだ、英国人もわかってるじゃない。もしや「グラビアの美少女」も、小が大に勝つおもしろさを表現しようとしてたのか？ いや、絶対違うな……

2017.01.25