たまのデビューシングル「さよなら人類」を鈴木実貴子ズがリメイク 日本クラウン内の音楽レーベル・PANAMが設立55周年を迎え、かつてリリースされた名曲たちを、様々なアーティストがリメイクカバーで次世代へと歌い継いでいく『PANAM 55/100 SUPER SONG COVERS』。この第3弾として、たまの「さよなら人類」を鈴木実貴子ズがリメイク、BLACK BOTTOM BRASS BANDとともに楽曲が制作された。
「さよなら人類」は、1990年5月5日に発売された、たまのデビューシングル。たまは1984年に知久寿暁、石川浩司、柳原幼一郎の3名によって結成。吉祥寺のライブハウス・曼荼羅にレギュラー出演し、この間、ベースの瀧本晃司が参加して4人編成となった。インディーズレーベル、ナゴムレコードのオムニバスアルバムに参加したことを機に、活動が活発化していった。
第3代グランドイカ天キングの座に輝き、PANAMレーベルからメジャーデビュー たまの名を一躍有名にしたのは、TBS系列で放送されていた音楽バラエティ・平成名物TV『三宅裕司のいかすバンド天国』への出演である。1989年11月11日に初出演し、14代目イカ天キングとなる。その後も次々と勝ち抜き、第3代グランドイカ天キングの座に輝き、「さよなら人類」でPANAMレーベルからメジャーデビューを果たしたのである。
VIDEO たまは奇抜なビジュアルと、どのバンドとも共通項が見られない異色の音楽性で大きな話題を呼び、“たま現象" と呼ばれるほどのブームを巻き起こした。「さよなら人類」はオリコン週間シングルランキングでは初登場1位を獲得。年間でも4位にランクインするほどの大ヒットとなる。当時は色物バンド的に見られる向きもあったが、その豊かな音楽性とハイレベルな演奏技術はその後、高い評価を受けている。
たまは、自作曲は自分のボーカルで歌う、というスタイルをとっていた。「さよなら人類」は柳原幼一郎の作詞、作曲であったため、1995年の柳原脱退後は、基本、彼らのライブで歌われることはなくなっている(ただし、その後の柳原のソロによるセルフカバー・バージョンでは作曲がメンバー4名全員の名義になっている)。
原曲とはまったく異なる解釈で、鈴木実貴子ズがカバー そして、この名曲をカバーすることになった鈴木実貴子ズは、名古屋を拠点に活動している2ピースバンドで、ボーカルとアコギを務めるのは鈴木実貴子。ドラム担当の高橋イサミは、グループ名の最後に付いた “ズ” という呼称だ。
2012年に結成され、同年に初音源「あああ」を発表。2017年には初の全国流通盤となるEP「名前が悪い」をリリースし、2019年、全国流通盤としてはファーストアルバムとなる『現実みてうたえよばか』を発表。2024年にPANAMレーベルから配信シングル「違和感と窮屈」でメジャーデビューを果たしている。
今回、鈴木実貴子ズの「さよなら人類」の解釈はバンドの一大特徴である、鈴木の力みなぎるボーカルを活かし、原曲とはまったく異なる解釈でサウンドを構築している。そのパワフルかつエネルギッシュな歌いっぷりは原曲の持つメッセージ性をポジティブに解釈しているように聴こえ、ストレートに歌詞やメロディーの魅力が伝わってくる。1990年の音楽シーンで、異色かつ斬新に映ったたまの牧歌的なサウンドの面白さとは対照的である。
陽気で祝祭感に満ちているBLACK BOTTOM BRASS BANDの演奏 バックを務めたBLACK BOTTOM BRASS BANDは、関西出身のニューオリンズ・ブラスバンド。1993年の結成以来、幾度かのメンバーチェンジを繰り返しつつ、現在はトロンボーン、テナーサックス、トランペット、スネアドラム、バスドラム(およびドラム)、スーザフォンの6人編成で活動。1995年にバンド名と同じシングル「BLACK BOTTOM BRASS BAND」でデビューし、これまでに20枚ものアルバムを発表している。
オリジナルの持つ、タイトかつ柔らかな楽隊風のサウンドとは異なり、分厚いホーンセクションの響きが陽気で祝祭感に満ちている。行進曲風のリズムは変わらないものの、変拍子を導入したり、随所にフックを用いて飽きさせない工夫がなされている。何より鈴木のパワーみなぎる歌唱に、これだけの分厚い音で対峙しているため、楽曲全体から放たれるエネルギーは圧倒的である。
VIDEO 本作のミュージックビデオは、映像ディレクターの吉田ハレラマが制作。砂浜に打ち捨てられたビデオカメラの映像に始まり、古いラジカセや黒電話などのアイテムが登場。鈴木がアコギを拾い上げてイキイキと熱唱する姿までを魅力的に映している。1990年代の名曲を現在の解釈で表現した秀逸なリメイクカバーが、ここにまたひとつ誕生した。聴けば元気になること間違いなしの「さよなら人類」を、映像とともにぜひ体験していただきたい。
2026.03.23