12月1日

僕等は終わった… オフコースAORの到達点「We are」からの「over」

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前作とタイトルを繋げると“We are over”


欧陽菲菲の「ラヴ・イズ・オーヴァー」がヒットしたのは2年後の1983年。世間には未だ “be over” の意味が浸透していなかった。

It was 40 years ago today.
1981年12月1日、オフコースの1年と10日振りのオリジナルアルバム『over』がリリースされた。9月1日に世に出たベストアルバム『SELECTION 1978-81』からは僅か3か月。1年強でアルバム3枚という驚異的なペースであったが、その全てがNo.1アルバムとなった。

『over』1語だけのタイトルは当時話題になった。

「いったい何がオーバーなんだろう」

当時 “オーバー” という単語は “超過” “大げさ” といったニュアンスで捉えられていた。オフコースらしくないと考える向きも少なくなかった様に記憶する。

しかしジャケット中央に大きく書かれたその字体は、よく見ると1980年の前作『We are』と同じであった。そしてこの2作のタイトルを繋げてみると

“We are over”

―― 僕等は終わった… となった。そしてアルバム8曲めの「言葉にできない」のフェイドアウトが終わる直前にも、ごく小さく「We are over, thank you」という男性の声が入っていたのだった。

オフコースは終わろうとしていた。

鈴木康博の脱退宣言後に作られた、オフコース「over」


小田和正と共にオフコースを立ち上げ、2人での活動も長かった鈴木康博が脱退の意志を告げたのが1980年末。『over』はこの後作られた初めてのオリジナルアルバムであった。

アルバムは、最後の曲でもある小田作の「心はなれて」のストリングスのインストゥルメンタルで始まる。続いて力強いツインギターのイントロで始まるのは、やはり小田作でアルバムと同時にシングルカットもされた「愛の中へ」。

「なんの 迷いもなく あなたを選んで」という歌詞で始まるポジティヴなラヴソング。アップミドルテンポのAORで、間奏でも5人オフコースのトレードマークの1つ、鈴木と松尾一彦のツインギターソロを聴くことが出来る。アルバムの実質的なオープニングを飾るに相応しい名曲で、『over』は力強く船出を果たした。

しかし続く鈴木作の「君におくる歌」でアルバムの空気感は早くも変わる。恋人の別れの歌で、鈴木らしい重いビートを持ったミドルテンポのナンバーだが、ドラムスの大間ジロー(仁世)との共作の歌詞では後半こんな一節が出てくる。

 過ぎゆく日々を 振り返らずに
 新しい夢を胸に 僕は今旅立つ

脱退に際しての鈴木自身の心境も反映されているかのよう。引いてはこの曲全体もそういう曲ではないかと思えてくる。

続く「ひととして」は小田作。一転、アコースティックで軽やかなポップナンバーで、やはり別れ、旅立ちを歌っている。

 何処かでいつかは 会えるかもしれない
 もう何もきかないで ためらうこころ消えた
 もう何もいわないで あなたを忘れない
 さあもう 僕等はゆくよ

主語こそ僕等だが、やはり小田の心境が歌われているように思えてならない。

「メインストリートをつっ走れ」から溢れる鈴木康博の強い決意


アルバム5曲めでアナログ盤だとA面を締めくくるのは鈴木作の「メインストリートをつっ走れ」。ミドルテンポのずしりと重いビートのロックナンバー。大間と安部光俊との共作の歌詞は、鈴木のオフコース脱退についての心境を、あまりにストレートに歌っている。

 追いかけて 手にしたものは
 違うのだろう くやしいんだろう

 友よ おまえが 俺と同じ男なら
 走れ Run on Main Street
 長い長い冬に耐えてゆけ

 いつも問いかけていたい
 このまま 流されてゆくよりは

もはや説明の必要も無いであろう。“冬” に耐えながらも、脇道ではなく王道を走るぞという強い決意が歌われている。その姿勢はロックと呼ぶしか無いのではないか。

鈴木の曲はA面の2曲で終わってしまう。かつてはアルバムに小田と半分ずつ曲を提供していた鈴木が2曲というのは最少である。しかしA面最後に置かれた「メインストリートをつっ走れ」は、B面最後の小田の「心はなれて」と見事な好対照を成すことになるのだ。

小田和正の名曲「哀しいくらい」と「言葉にできない」


アナログ盤だとB面1曲めの6曲め「僕のいいたいこと」は、前作『We are』での「せつなくて」に続く松尾作品。作詞は小田、大間、松尾の共作。鈴木の編曲したストリングスも印象的な、実験的なスローなラヴソングである。

続く7曲めは小田作の「哀しいくらい」。メロディーの実に美しいミドルテンポのラヴソングで、1985年の全編英語アルバム『Back Streets of Tokyo』にも「MELODY」というタイトルで5人時代のオフコースの曲で唯一収められた。恐らくは小田にとっても手応えのあった1曲なのだろう。ソロでもライヴで歌い、またセルフカヴァーもしている。

そして8曲めはもはやこのアルバムを代表する1曲になった小田作の「言葉にできない」。鈴木脱退への想いを昇華させた、後にシングルカットされたこの曲は、5人オフコース最後の日本武道館コンサートの時小田が涙したこと、そしてこの時曲の最後で “We are” “over” “Thank you” の文字がステージ後方のスクリーンに投影されたことで、5人オフコースの終焉を象徴する1曲となった。

しかし小田本人は、泣いてしまいそうなある曲を無事歌い切り安堵したところに、「言葉にできない」のイントロが流れてその強さにヤバいと思ったと2016年に語っている。その曲こそが『over』の最後を締め括る「心はなれて」である。

小田和正が歌う鈴木脱退についての心情「心はなれて」



 あなたが いたから
 立ち上がれたこともあった
 もう 遅すぎる そこへは戻れない

 ふたりで追いかけた
 青い日々がこぼれてゆく
 やがて ひとり 窓の外は冬

 心 はなれて
 あなたのこと 見えなくなる
 もう ここから 先へは ゆけないね

これももはや説明は不要。「言葉にできない」よりもストレートに自らの心情が歌われている。最後の歌詞には、このまま音楽生活も終わってしまうのかという思いが込められていたそうだ。

ピアノの弾き語りと自らアレンジしたストリングスだけで、小田はこのバラードを歌った。『over』からは「愛の中へ」「哀しいくらい」「言葉にできない」を後にセルフカヴァーしている小田だが、「心はなれて」は2016年のオールタイムべスト『あの日 あの時』まで待たなくてはならなかった。この年のツアー『君住む街で』で初めてレギュラーのセットリスト入りを果たしたのだが、オフコース時代の写真が次々映し出される中歌われたこの曲には、やはり胸が熱くなった。

A面最後の「メインストリートをつっ走れ」では鈴木康博が、B面最後では「心はなれて」で小田和正が、それぞれ鈴木脱退についての心情を露わに歌った。好対照と言わざるを得まい。

オフコースのベストアルバムというと巷間では前作『We are』が挙げられることが多いが、『over』も曲のレベル等、決して引けを取らない。大物ビル・シュネーの音の空間を活かした秀逸なミキシングといい、日本のAORの到達点と言っても過言ではないのではないか。

こんなにぴんと張った緊張感があるAORも唯一無二であるし、AORという呼称と裏腹に心の動きが露わに表現されているのも、この時期のオフコースの、他のバンドには無い個性であり魅力なのである。
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2021.12.01
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カタリベ
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宮木宣嗣
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