2018年11月から、黄色いベスト運動でフランスがザワつき、「第二のフランス革命か」なんて声も聞こえてくる。燃料税増税に反対する庶民に、「電気自動車を買えばいいじゃない」と言ったマクロン大統領。彼のことを「パンがなければ、お菓子を食べればいいじゃない」と言ったとされるマリー・アントワネットに例える人も。
フランス革命、マリー・アントワネットと聞くと、マンガ『ベルサイユのばら』を思い出さずにはいられない世代の私。2012年のパリ旅行では、友人2人と念願だったベルサイユ宮殿を訪問した。
「私たち、極東からやって来たアジア人ですが、結構詳しいんですよ、ベルサイユとフランス革命は」なんて、各国の観光客に心の中でつぶやいてしまう。だって、池田理代子先生のおかげで、首飾り事件のことも、ヴァレンヌ逃亡事件のことも、ロべス・ピエールのことも、詳しく知ってるもの。
マンガ、アニメ、宝塚で、ベルばらブームが起こっていた当時は、主人公のオスカルに胸をときめかせていたものだが、いざベルサイユ宮殿を訪れると、アントワネットに思いをはせずにはいられない。
ここでどんよりした目のルイと結婚式を挙げたのね。デュ・バリー夫人にキィーッとなったのは「鏡の間」かしら。この部屋で多くの貴族が見ている中、出産したのか… なんて、移動するたびに、『ベルばら』の数々の場面が頭に浮かんでくる。
あまりに広大なため、宮殿と庭を見学しただけで、帰ってしまう観光客も多い。だが、どんなに宮殿から離れていようと、アントワネットお気に入りの離宮プチ・トリアノンと「王妃の村里」に行かずに納得するベルばらファンはいないだろう。当然私たちも、プチ・トラムというトロッコ風の乗り物に乗ってプチ・トリアノンまで移動。
すると… 絢爛豪華すぎて気疲れする宮殿に対し、プチ・トリアノンのセンスのよさったら! 田舎生活にあこがれるアントワネットのわがままから生まれた「王妃の村里」も、なんとものどかでかわいい。
行ってみて、よーくわかった。ベルばらファン、40~50代の日本人女性にとって、ベルサイユ宮殿は太陽王・ルイ14世の栄華を象徴する世界遺産などではない。アントワネット好きのためのテーマパークなのだ。
そして、テーマパークのテーマソングは、もちろんこの曲。
草むらに 名も知れず
咲いている 花ならば
ただ風を 受けながら
そよいでいれば いいけれど
私はバラのさだめに生まれた
華やかに激しく生きろと生まれた
バラはバラは 気高く咲いて
バラはバラは 美しく散る
1979~80年に放送されたテレビアニメの主題歌「薔薇は美しく散る」は、アニメ史上に残る名曲だと思う。当時は、オスカルのことを歌ってると思っていたのだが、この歌詞はアントワネットにもぴったりくるじゃないか、と大人になってからやっと気がついた。
アントワネットが現代女性だったら、間違いなく、Instagram で大人気のインフルエンサーになっていただろう。IT(イット)ガール、なんて言われたかもしれない。
そうそう、「パンがなければ~」の発言、実際にはアントワネットは言っていないそうだ。オスカルやアンドレという架空の人物を登場させながらも、肝心のところは史実に忠実な理代子先生。当然、マンガにもアニメにもそんなセリフは登場しない。
2019.02.15
YouTube / shibotto43
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