共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味 vol.51
When The Going Gets Tough, The Tough Get Going / Billy Ocean
1980年代(80~89年)のビルボードのシングルチャートをアーティスト別に集計した場合、トップにマイケル・ジャクソン、2位にマドンナ、3位にプリンスと、トップ3に80年代の3大スーパースターが並ぶ。
以下R&B~ブラコン系シンガーという括りで見ると――
ライオネル・リッチー、ホイットニー・ヒューストン、スティーヴィー・ワンダーといったビッグネームが名を連ねるが、それらに続くのがビリー・オーシャンなのだ。
ビリー・オーシャンは、ティナ・ターナーやドナ・サマーよりも上位に位置しており、実はアメリカにおいて、彼のヒット曲数の多さというよりは、そのヒットの度合いがいかに大きかったのかが窺い知れる。
ビリー・オーシャンの80年代における100位内のチャートインヒットは全部で11曲。そのすべてがトップ40入りを果たしている。うち7曲がトップ10入り、最高位2位作品が2曲。ナンバーワンが3曲という実績を残す。
並み居る錚々たるアーティストたちが20曲前後、またはそれ以上のヒットソングを放つ中、決して多くない11曲のヒット曲数でスターたちと遜色ない活躍ぶりを見せている。これは結構特筆すべき現象であり、ビリー・オーシャンは日本に伝わってきている以上に、80年代のスターだったのだ(
Vol.42参照)。
そして、ビリー作品の中で最も共有感が高いであろう「カリビアン・クイーン」(84年1位)のヒット後、「ラヴァー・ボーイ」(85年2位)、「ミステリー・レディ」(85年24位)を経て、80年代49番目に誕生したナンバー2ソングがビリー・オーシャンの「ゲット・タフ~ナイルの宝石のテーマ(When The Going Gets Tough, The Tough Get Going)」(86年2月2週2位)である。
「ゲット・タフ~ナイルの宝石のテーマ」は、ハリソン・フォード主演の大ヒット映画、インディ・ジョーンズ シリーズの二番煎じながら、マイケル・ダグラスが主演し、そこそこ話題となった秘宝活劇『ナイルの宝石』の主題歌として大ヒットしただけに、ビリー作品の中では「カリビアン・クイーン」に次ぐ共有感を誇る―― そう、ブラコンアプローチの作品でスターの座に躍り出たビリーが、時代の流れを鑑みて “ポップダンサブル路線” に色目を使って成功した例がこの曲だ。
その後、ビリーにとって3曲目のナンバーワンとなった「明日へのハイウェイ(Get Outta My Dreams, Get Into My Car)」(88年1位)が同じ路線ながらも「ゲット・タフ」の方が共有感が少しだけ高いと思われるのは、マイケル・ダグラスのおかげなのかもしれない。
そして―― AC/DC、デフ・レパード、フォリナーなどを手掛けたヒットプロデューサー、ロバート・ジョン “マット” ランジの存在を忘れてはならない。
2018.05.17