ヴァン・ヘイレンの頁(ヴァン・ヘイレン、アナタはデイヴ派? それともサミー派?)にも書かせていただきましたが、既に人気が確立したバンドのヴォーカリスト交代は、常に物議を醸すものです。
特に、ヴァン・ヘイレンやジェネシスなどは、それまでとはタイプの違うヴォーカリストの交代でしたから、作品の変化には戸惑ったりもしたでしょう。また、ジャーニーのように前任者そっくりのヴォーカリスト加入という例もありますが、それはそれでいろいろ戸惑う人もいるようですね。
メタル界でもメンバーの入れ替わりはよくあります。
リッチー・ブラックモア率いるレインボーなどは、リッチー以外、まあ目まぐるしく替わりました。なかでも、注目はやっぱりヴォーカリスト。既にそれまでの作品を聴き込んでいるファンにとって、新しいヴォーカリストをすんなりと受け入れるのはなかなか難しいものです。
レインボー以外では、アイアン・メイデンもメンバーの出入りが激しいグループでした(脱退メンバー再加入というのがあるので「出入り」と言わせていただきます)。3代目として加入したヴォーカリスト、ポール・ディアノ在籍時にメジャーデビュー。『鋼鉄の処女』『キラーズ』という2枚のアルバムで人気が爆発し、一気にメタル界のトップに躍り出たバンドです。
そんなノリにノッっている時に突然、ヴォーカリストの交代! これはメタルファンの間で衝撃が走りました。
ポール・ディアノのヴォーカルは上手いというよりは個性的。ギター・リフにユニゾンでメロディーを乗せて歌い、「ウー、イェイ、イェイ」というシャウトがお決まりのフレーズ。これが初期メイデン2作の特徴でもあり、この2枚のアルバムが好きなファンにとって、新ヴォーカリストによるニューアルバムがどうなるかドキドキものでした。
そうしてファンのもとに届けられたニューアルバム『魔力の刻印』は、私のメタル友達のあいだでも賛否両論が。。。
新ヴォーカリストのブルース・ディッキンソンは、ポールと違いハイトーンもこなす、いわゆる上手いヴォーカル。歌メロも飛躍的にバラエティな展開を見せ、クオリティは全体的に上がりました。しかしながら、ポールのアクの強いヴォーカルがない分、ただただ平均点の高いアルバムのようにも聴こえてしまい……。
そんな不安も時間が解決してくれます。聴き込みの回数が増えると一様にポール派のファン達も(私も含め)、『魔力の刻印』は名盤! という意見で統一されていく流れに。ブルースの声に慣れる時間がちょっと必要だったというだけで、ヴォーカリストの実力は徐々にちゃんと浸透していったのです。
その後メイデンを聴き始めたファンは、「初期2作とそれ以降は別物。それぞれ素晴らしい。」という評価がすんなりできますが、当時のファンにとっては一時の葛藤があったわけです。
そんなタイミングで購入した『魔力の刻印』は長いメイデンの歴史のなかで、そういった思い出も含めて私のフェイバリットです。勿論、内容も全曲最高なんで。
ブルースは93年に一度脱退(99年に再加入)するのですが、この時は新加入のブレイズ・ベイリーの実力に関係なく、ほとんどのメイデンファンが失望しました。既にブルースが完全に「メイデンの声」になっていたのです。個人的にはブレイズ・ベイリーのヴォーカルも嫌いじゃないんですけどね。
ちなみに『魔力の刻印』はUKで初の1位を獲得。英国HMVが2012年に過去60年におけるベスト・ブリティッシュ・アルバムを選ぶ投票を行ったところ、ビートルズやクイーンをおさえ、この『魔力の刻印』が1位を獲得したというエピソードもあります(勿論全ジャンルの中です)。
日本でのメイデン人気は異常に高いですが、本国UKでの人気は、それ以上にゆるぎないものがあるのです。
2017.04.17
YouTube / Iron Maiden
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