9月1日

新時代に響け!昭和のアイドルたちにさらなる再評価を【80年代アイドル総選挙】

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私はかねがね、アイドルが評価される際、新たな魅力を打ち出すことがさほど報われていないのでは?ということが気になっている。しかしながら、たとえそれが正解だとしても、アーティストとして成長しようと、時には空回りするほどに奮闘してきたアイドルも少なくないし、私はそういうアイドル出身アーティストを応援していたい。

そこで、今回は果敢にアーティストを目指し、“今後、さらに評価が追いついてほしいアイドル” という視点で選んでみた。なお、“永遠の少女” という新たなアイドル道を開拓した松田聖子、“永遠の透明感” を維持する薬師丸ひろ子、そして “永遠のサブカル好き” として活発な小泉今日子の3人は、それぞれ評価が伴ったアイドルとして、今回は対象外とした。

第10位:荻野目洋子


1985年に「ダンシング・ヒーロー」がヒット、その勢いでアルバム『ノン・ストッパー』が1987年の年間1位に、1990年代はアルバム『流行歌手』で再ブレイク、さらに2010年代に「ダンシング・ヒーロー」がリバイバル・ヒットと、着実に実績を残しているので第10位としたが、歌って踊れるアイドルのフロンティアそして現役アーティストとして、より多く聴かれても良い逸材。特に、1988年の全曲英語アルバム『VERGE OF LOVE』は、音づくり全体が細かく、いろんな角度から聴き直せる名盤だと思う。

第9位:工藤静香


1998年まで12年連続でオリコンTOP10入り、2022年には24年ぶりにNHK紅白歌合戦に復帰、と彼女は比較的結果にも恵まれてもいるが、初期の “眉間にしわを寄せて切なげに歌う” だけでアイドル需要が高まったところを、ドスを利かせてロッカバラードを歌い上げたり、ダンサーを従えて激しく踊ったり、とにかく安住しない部分が面白い。2022年現在、セルフカバーアルバム『感受』にて、52歳となってもアクの強い歌い方で攻め続ける様子は、もう少し音楽的に注目されても良いと思う。

筆者の記事『過去最大の意欲作!工藤静香の35周年ライブはこれまでのヒット曲をゼロから再構築』も参照願いたい。

第8位:本田美奈子


本田美奈子ほど成長を急いだアイドルはいないのではないだろうか。「殺意のバカンス」や「Temptation(誘惑)」での正統派歌うま系アイドルと思いきや、「1986年のマリリン」や「Sosotte」にて悩殺ポーズで誘惑したり、「悲しみSwing」では社交ダンス風に歌ったり、1988年からは “WILD CATS” としてハードロックに覚醒したり、とにかく歌う度に生半可なファンを振り落とすかのごとく一気に駆け抜けた。軽快に歌ったメジャー調の「Oneway Generation」が最も万人受けしそうだが、他にそういった曲が少ないのもある意味潔い。

逝去後、2000年代のクラシカル・クロスオーバー路線がTOP10ヒットとなったが、30秒ロングトーンの壮大バラードの「つばさ」や、弦哲也作曲の演歌「風流風鈴初恋譚」など全ジャンルも内包する1994年のアルバム『JUNCTION』もおススメ。



第7位:柏原よしえ(芳恵)


彼女も常に年齢以上の歌を歌いこなしていったひとりだろう。17歳にして遊び人に振り回され酒に溺れたり(「ちょっとなら媚薬」)、18歳→19歳にして別れた人以外をそれなりに愛していくと誓ったり(「最愛」)、19歳→20歳にして道ならぬ恋を切なげに歌ったり(「し・の・び・愛」)、それでいてどれもこれもリアリティに満ちている。

このスピード感は、伝説の歌姫・山口百恵に匹敵するほどではないだろうか。だとすれば、今後「春なのに」以外の作品にももっとスポットが当たってほしい。22歳にして、テレサ・テン路線を極めたアルバム『愛愁』など、需要の有無を度外視して熱の入りまくった名盤も数多い。



第6位:中森明菜


アルバムごとにめまぐるしく変わるコンセプトの幅広さでは間違いなく80年代アイドルNo.1だろうが、とりわけ1980年代の彼女は、シングルもアルバムも大半が大ヒットしていたことで、現在の “昭和ポップス” ブームでも筆頭に挙げられるという点では、評価も相当に高い。けれど、まだまだ深掘りの余地がある。いつの日か超前衛的なアルバム『不思議』(それでも45万枚以上の大ヒット)や、1990年代以降のカバーではないオリジナル作(たとえば1997年のアルバム『SHAKER』)がテレビで紹介される日が来ますように…。

第5位:桑田靖子


デビュー曲「脱・プラトニック」にして既に安定の歌唱力で、歌の上手い昭和アイドル好きからは必ず名前が挙がるほどの逸材。そのストレートが気持ち良く届く歌唱は、岩崎宏美や高田みづえなど1970年代にデビューした歌手に近い。だから、アイドル不作の1983年ではなく、もし1982年や1984年にデビューしていても、ブレイクするのは難しかったかもしれない。だからこそ、今も現役で歌い続けていることを、心から良かったと思える歌い手でもある。過去の歌も今の歌も、評価される準備は整っている。個人的には1984年のシングル「ガラスのラブレター」の切なくも強い歌声がツボ。

第4位:CoCo


オリコンTOP10シングルも11作あるし、「はんぶん不思議」の「♪あなた、意地悪~」も当時ネタになったし、トータルで見れば割と報われてはいるが、1989年デビューゆえに、アイドル全盛の「80年代昭和ポップス」でも、タイアップ全盛の「90年代J-POP」でも見落とされがちなので、今回はあえて高めの順位とした。また、松田聖子の楽曲に匹敵するほど覚えやすく、1〜2回練習すればそれとなく歌えるほど、実は洗練された楽曲が多いこともポイントとした。1990年のシングル「夏の友達」など数回歌えばカラオケの超高得点を狙えそう。大半の楽曲は90年代リリースだが、作風自体は80年代っぽいのだ。



第3位:早見優


元祖・バイリンギャルとして、また花の1982年アイドルとして、メディアからの注目度は常に高く、むしろ恵まれた存在にも見えるが、現在においても1983年の最大ヒットシングル「夏色のナンシー」の1曲のみが注目されているのが勿体ない。せめて、1985年の「PASSION」や1987年の「ハートは戻らない(Get Out of My Life)」あたりの再ヒット曲にも光が当たってほしい。

1985年〜1986年はアン・ルイスに影響を受けて、ノドをしぼった歌い方に傾倒したが、基本的にはリズム感も音程も良く、実は歌が上手い。だからこそ、今もジャズのスタンダード曲も聞かせる現役歌手なのだ。1986年のアルバム『SHADOWS OF THE KNGIHT』でも、多彩でクセの強い男性作家陣の楽曲をきっちり歌いこんでいる。



第2位:岩崎良美


岩崎宏美と共に歌の上手い姉妹、「タッチ」は最もカラオケで歌唱された昭和アニソン、といったことは広く知られているが、さらに1980年代にリリースされた数々のアルバムを聴けば驚くことだろう。アイドル的な作風で男性に媚びる様子もないし、かといってシンガーソングライターのように強い主張があるわけでもない。ひたすら、優れたポップスを作ろうという、歌手、作家、スタッフのチームワークの良さが見て取れる。この点は1970年代デビューの石川ひとみも同様だ。近年、林哲司や尾崎亜美の海外人気が良美作品にも飛び火しつつあるが、林哲司作品では、オリジナルアルバム未収録のシングル「ヨコハマHeadlight」のスリル感もオススメ。



第1位:河合奈保子


彼女の音楽的変遷は実に目まぐるしい。初期のドリーミーなアイドル・ポップス、1982年の「けんかをやめて」を皮切りにしたシンガーソングライター路線、それと並行する形で始まった1983年「エスカレーション」以降のハードなポップス、1984年と1985年にリリースされた全曲海外作家によるアルバム、そしてその間にはアルバム全曲が作詞:売野雅勇、作曲:筒美京平という2枚のアルバム。トドメに1986年以降は、全曲、自作曲のシンガーソングライター路線と、彼女の全キャリアの楽曲が好きという人は、結局のところ彼女のキャラクターを含めて何から何まで好き、という人以外にいないのではないだろうか。それだけ多彩でどれも様になっているのだ。1990年のシングル「美・来」はデビューからの10年間の集大成として、緩急のあるボーカルと自作メロディーが凝縮された隠れ名曲だろう。

他方、各人の好みのキャパシティを軽々と超えて歌えたからこそ、 “あれは出すべきじゃなかった”、“好みのアルバム曲をシングルにしてほしかった”、と何十年も前の作品を苦言するファンも少なくない。あれだけ長くヒットした中で、これだけ “たられば論” が展開されるのは、河合奈保子だけじゃないだろうか。ただ、今は自分でも情報発信できるのだし、もっと売れてほしかった曲は、ストリーミングサービスや動画サイト等で再評価が起こることを期待して(時には自分で応援して)前向きに行動することをオススメしたい。

そう、今はどの楽曲も、“永遠に” ヒットする可能性が終わらない時代なのだ。このアイドル総選挙もそういった再発見、再発掘につながれば嬉しい。

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80年代アイドル総選挙 ザ・ベスト100

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2022.12.30
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カタリベ
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