歌がうまく、かついい女 チャカ・カーン
1980年代終盤から1990年代にかけて特に日本で人気のあった、米コーラスグループ、14カラット・ソウルの制作・宣伝を担当していたことがあった。毎年のようにライブ・プロモーションで来日し、全国ツアーも共にしていたりもしたので、リーダーのグレニーTとはずいぶんと色んなことを話したものだ。ある時、他愛もない会話の中で、「アメリカの女性R&Bシンガーで、最も歌がうまくて、かついい女は誰だ?」という話になって、グレニーは即座にこう言った――
「チャカ・カーン!彼女よりセクシーでいい女はいない。チャカ一択!」
既にホイットニー・ヒューストンやメアリー・J・ブライジは人気シンガーの座に君臨、もちろんアレサ・フランクリンやグラディス・ナイトも現役バリバリという時代だったとはいえ、グレニーのこの応えは、おおよそのアフロアメリカン男性の気持ちを代弁しているのかもしれない。そう、本国アメリカ以外にはなかなか伝わりにくいながらも、ブラックコミュニティにおけるチャカ・カーン人気は絶大といえるものなのだ。そしてチャカが “いい女” の代表的シンガーなのは、紛れもない事実なのだ。
チャカ・カーン究極のベスト盤CD、リリース!
1970年代からソウルグループ、ルーファスのリードシンガーとして人気を確立、1978年ソロシンガーとしても活動を開始、多くのシングルヒットを輩出している。デビュー曲「アイム・エヴリ・ウーマン」(1978年)を筆頭に、フリーソウル人気等でヒット当時より後の評価の方が上昇した「恋のハプニング(What 'cha Gonna Do for Me)」(1981年)、チャカ最大ヒットにして80年代洋楽の代表曲のひとつ「フィール・フォー・ユー」(1984年)、コンテンポラリー感あふれるシンセファンク「ディス・イズ・マイ・ナイト」(1984年)等、日本でも計13枚のシングルがリリースされていた。
それらすべてのシングル曲に、日本未発売だったシングル曲や日本初CD化となるアルバム未収録曲5曲を加えて、計18曲を収めたチャカ・カーン・ベスト盤CDが発売された。題して『ジャパニーズ・シングル・コレクション −グレイテスト・ヒッツ−』!従来のチャカ~ソウルファンからライトな洋楽~チャカファンまで全員納得の、これぞ究極のベスト盤という内容だ。
KARL南澤オススメ、チャカ・カーン名曲ランキング
昨今トレンドとなりつつある(アーカイブとしても秀逸な)エスタブリッシュド・アーティストによる究極のシングルコレクションのリリースだが、いよいよチャカ・カーンもその仲間入りを果たしたというわけだ。こんな興奮必至で喜ばしいことはない!
―― ということで、収録曲の中から、勝手に私的ベスト10を発表しちゃいましょう。あくまでも私的ベスト10ですよ。
10位:ラヴ・ユー・オール・マイ・ライフタイム(1992年)
9位:ネヴァー・ミス・ザ・ウォーター(1996年)
8位:ライフ・イズ・ア・ダンス(1978年)
7位:フィール・フォー・ユー(1984年)
6位:ディス・イズ・マイ・ナイト(1984年)
5位:エイント・ノーバディ(1983年)
4位:クラウド(1980年)
3位:ラヴァーズ・タッチ(1981年)
2位:アイム・エヴリ・ウーマン(1978年)
1位:恋のハプニング(1981年)
「恋のハプニング」は、21世紀に入ってからの方が知名度が上がった感のあるAORアーティスト、ネッド・ドヒニー作、アヴェレイジ・ホワイト・バンド初出となる作品。いわゆるダンスクラシックス系人気も高く、フロア対応も申し分ない。
「アイム・エヴリ・ウーマン」は、「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」(マーヴィン・ゲイやダイアナ・ロス)で知られるアッシュフォード&シンプソン作のガラージクラシック。
「ラヴァーズ・タッチ」は、「恋のハプニング」のB面作品で、「オンリー・ワンス」と共にアルバム未収録にして日本初CD化。
―― こういう入手困難な作品が収録されているのは嬉しい限りだろう。おそらく世間一般的にはデヴィッド・フォスター・プロデュース、AORファンからの支持が最も厚い「スルー・ザ・ファイア」(1984年)が1位なのかな。シングルとしては日本未発売(意外!)だった「スルー~」は、もちろん本『シングル・コレクション』にはしっかりと収録されている。
現在68歳(2021年11月現在)、現役ソウルシンガーとして、まだまだその素晴らしい歌声を披露し続けているチャカ・カーン。今や名実ともにナンバーワン女性R&Bシンガーの座に君臨する。彼女が残したヒットソングたちは、永遠に輝き続けることだろう。
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2021.11.17