12月14日

山下達郎「クリスマス・イブ」40年連続TOP100!J-POPはいつからクリスマスを歌ったのか?

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山下達郎のシングル「クリスマス・イブ(2025 All-in-One Edition)」発売日
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山下達郎「クリスマス・イブ」2025年バージョンがリリース


今年も、山下達郎「クリスマス・イブ」の2025年バージョン『クリスマス・イブ(2025 All-in-One Edition)』が12月10日にリリースされた。同曲は、2026年度の第1週目となる12月22日付『オリコン週間シングルランキング』にて5位にランクインし、“週間シングルTOP100入り連続年数” を、1987年度(1986年12月8日付、40位)から40年連続で記録を更新した。

聴こえ方、感じ方は人によってさまざまだろうが「クリスマス・イブ」が日本のクリスマスソングとしての無敵のスタンダードであることは揺るがない事実であり、このように時代を越えて売れ続けている曲は他にない。ここではそんな話題に絡めて、日本のクリスマスソングの歴史とその変遷について探求してみたい。

山下達郎の「クリスマス・イブ」は、その日に約束の場に想いを伝えたい相手が来なかった(来そうにない)というアンハッピーなシチュエーションを歌った曲だ。アンハッピーではあるが恋愛ソングである。この曲に限らず、日本においてクリスマスソングといえば、キリストの誕生日を祝うものではなく、キラキラしたクリスマスのムードと恋愛をリンクさせたものが圧倒的主流になっている。



美空ひばりが歌った「ひとりぼっちのクリスマス」


しかし、それは1980年代になってからの現象で、それ以前のクリスマスは恋愛イベントとして捉えられず、オリジナルのクリスマスソングも少なかった。時代をさかのぼると美空ひばりが1952年に「ひとりぼっちのクリスマス」、1953年に「クリスマス・ワルツ」というモダンなクリスマスソングをリリースした例などもあるが(いずれもB面曲)、これらは恋愛をテーマにしたものではない。

また、1970年に浅川マキが歌ったクリスマスソングのタイトルは「前科者のクリスマス」である。1970年代アイドルシーンを振り返ってみても、西城秀樹、郷ひろみ、山口百恵、キャンディーズ、ピンク・レディーといった人気アイドルたちは、クリスマスをテーマにしたオリジナル楽曲をほぼ歌っていない。そのほかも、オリジナルのクリスマスソングはゼロではないが、世間に浸透したものはなかった。

一方、欧米では史上最大のヒット曲、ビング・クロスビーの「ホワイト・クリスマス」をはじめとする数々のスタンダード・ナンバーや、今でも12月に街を歩けば耳に入る、ジョン・レノンの「ハッピー・クリスマス(戦争は終った)」やポール・マッカートニーの「ワンダフル・クリスマスタイム」など、古くから多彩なクリスマスソングがあった。



誰よりも早く恋愛とクリスマスを結びつけた松任谷由実「12月の雨」


そんな中、クリスマスをテーマにしたポピュラーソングが少なかった日本で、時代を先取りしていたのが荒井由実(松任谷由実)だ。なにしろ、誰よりも早く恋愛とクリスマスを結びつける楽曲をリリースしていたのだ。1974年、セカンドアルバム『MISSLIM』に収録された「12月の雨」という曲がその第1弾。

この曲ではクリスマスが恋人たちにとって特別な日だと描写している。ちなみに、「12月の雨」のバックコーラスには山下達郎らシュガー・ベイブのメンバーが参加していた。ユーミンと山下達郎。日本のクリスマスソング史に残る歴史的遭遇が半世紀前に実現していたことを確認しておきたい。

そして、第2弾が1978年のアルバム『流線形'80』に収録された「ロッヂで待つクリスマス」という曲だ。この曲は、恋愛とクリスマスに加え、のちに大ブームとなるスキーの要素も取り入れていた。ユーミンの先進性には驚くばかりである。 なお、1979年10月という、1980年代の前夜にリリースされた甲斐バンドの「安奈」も70年代の数少ない恋愛を描いたクリスマスソングである。



松田聖子は「恋人がサンタクロース」をカバー


1980年代に入ると、クリスマスは日本のポップカルチャーにおいて恋愛イベントとしてのイメージが強くなっていく。そのトリガーとなったのは、1980年に松任谷由実がリリースしたアルバム『SURF&SNOW』に収録された「恋人がサンタクロース」であることは周知の事実だろう。

しかし、実はもう1人まったく同じタイミングで、恋愛とクリスマスを絡めた曲を歌っていた人物がいた。それは松田聖子である。セカンドアルバム『North Wind』は冬をテーマとした内容で、この中に「ウインター・ガーデン」というクリスマスのデートを描いた曲が収録されているのだ。特筆したいのは『SURF&SNOW』と『North Wind』の発売日が、どちらも1980年12月1日であること。それは、日本のクリスマスソングの歴史における新たな扉が開いた瞬間だったのである。

その松田聖子は1982年12月に『金色のリボン』というクリスマスをイメージしたコンピレーションアルバムを出している。このアルバムのなかで、スーパーアイドルである彼女が松任谷由実の「恋人がサンタクロース」をカバーすることで、同曲の存在はさらに広く知られるようになった。



山下達郎が「クリスマス・イブ」をシングルカット


そして、真打ち・山下達郎の登場である。1983年6月発売のアルバム『MELODIES』に収録された「クリスマス・イブ」を同年12月にシングルカット。発売当初はそれほどヒットしたわけでもなかったが、ご存じの通り、時間をかけて日本のクリスマスに不可欠な曲に成長していく。その山下達郎より早く、1981年にオフコースがB面曲として「Christmas Day」というクリスマスソングをリリースしていることも見逃せない。また、松田聖子ほどクリスマスソングに積極的ではないが、中森明菜も1984年に『SILENT LOVE』というクリスマスアルバムを出している。

なお、1980年代前半はアメリカの音楽専門チャンネル・MTVが一世を風靡した時期でもあり、そこから今に至るまで超定番クリスマスソングになっているワム!の「ラスト・クリスマス」も忘れてはいけない。



恋愛系クリスマスソングがお茶の間に進出


1980年代前半の時点でクリスマスは若者の恋愛イベントだという空気は生まれていたが、それがさらに一般化、大衆化するのは80年代後半になってからだ。1986年には杉山清貴の「最後のHoly Night」がヒット。いわゆるシティポップもクリスマスとは親和性が高かった。山下達郎や松任谷由実はテレビに出なかったが、杉山清貴はテレビの歌番組に積極的に出演。恋愛系クリスマスソングをお茶の間に届けた。

「最後のHoly Night」が流行っていた時期は、日本がバブル期に突入するタイミングだった。以後、クリスマスソングは次なるフェーズに突入していく。象徴的な出来事が松任谷由実の「恋人がサンタクロース」が1997年公開の映画『私をスキーに連れてって』の挿入歌になり、1988年に山下達郎の「クリスマス・イブ」がJR東海の『クリスマス・エクスプレス』のCM曲となったことである(当初はホームタウン・エクスプレス X'mas編)。映画はヒットし、CMは大評判となる。1980年代前期に生まれた2つのクリスマスソングは、決定的なスタンダード曲となった。

もうひとり、クリスマスソングの大衆化に寄与したキーマンに秋元康がいる。秋元康はクリスマスをモチーフとするのを好む作詞家であり、その傾向はのちのAKB48グループ、坂道シリーズの作品でも貫かれている。1980年代には菊池桃子の「雪にかいたLOVE LETTER」(1984年)の他、おニャン子クラブ関連楽曲などで、歌詞にクリスマスを頻繁に用いていた。



テレビ番組の企画から生まれた「Kissin' Christmas(クリスマスだからじゃない)」


一方、ロックの世界でもクリスマスソングが登場するようになる。たとえば、浜田省吾が1985年にリリースしたミニアルバム『CLUB SNOWBOUND』はクリスマスソングばかりを集めた企画盤だった。また、同年リリースの佐野元春「CHRISTMAS TIME IN BLUE -聖なる夜に口笛吹いて-」がヒット。

サザンオールスターズの桑田佳祐は、1986年に音楽番組『メリー・クリスマス・ショー』(日本テレビ系)を企画した。この番組から「Kissin' Christmas(クリスマスだからじゃない)」(作詞:松任谷由実、作曲:桑田佳祐、編曲:KUWATA BAND)というオリジナル曲が生まれている。なお、同曲は「Kissin’ Christmas (クリスマスだからじゃない)2023」のタイトルで2023年にリメイクされている。

そのほか、1980年代後半のバンドブームの熱狂からは、JUN SKY WALKER(S)の「白いクリスマス」などのヒット曲も生まれている。 この時期からクリスマスソングの需要はどんどん高まり、12月になると「恋人がサンタクロース」「クリスマス・イブ」「ラスト・クリスマス」などは、どこに行っても然と耳に入ってくるようになる。カーオーディオで流される機会も極めて多かったはずだ。



90年代、バブル崩壊とマライア・キャリーという怪物


1990年代を迎え、クリスマス=恋愛イベントという空気はますます熟成されていった。盛んだったテレビのトレンディドラマでもクリスマスは絶好の題材となった。1990年には秋元康もブレーンとして参加した『クリスマス・イヴ』(TBS系)というそのまんまの恋愛ドラマも放送された。主題歌である辛島美登里の「サイレント・イヴ」はドラマとのシナジー効果で大ヒットした。

バブル景気は1991年に崩壊するが、日本の大衆はまだその余韻に酔っており、急にライフスタイルを変えることをせず、クリスマスの位置付けも特段大きな変化はなかった。JR東海の『クリスマス・エクスプレス』CMは1988年以降、毎年新作が制作され続け、そこで流れる「クリスマス・イブ」はその都度ヒットチャートを再浮上していた。同CMは1992年でいったん終わるが、同曲は翌年からエステティックTBCのCM曲に起用され、それは2004年まで続いている。

1994年には、マライア・キャリーのクリスマスアルバム『メリー・クリスマス』が世界的なメガヒットになり、推計1,350万枚売れたとされる。日本でもシングルカットされた「恋人たちのクリスマス」(All I Want for Christmas Is You)がフジテレビのドラマ『29歳のクリスマス』に起用された。これにより国内でのアルバムセールスは約270万枚を超えた(オリコン調べ)。

1990年代はJ-POPという言葉が普及し、CD需要が爆発的に高まった時期である。クリスマスソングとしては、B'zの「いつかのメリークリスマス」(1992年)やJUDY AND MARYの「クリスマス」(1994年)などが知られている。しかし、T.M.Revolutionの「Burnin X'mas」(1999年)が売れた頃にもなると、さすがにバブルは過去のものだと大衆は気づいていた。携帯電話とインターネットが普及し、人々のライフスタイルも変容。テレビのトレンディドラマは衰退し、恋愛至上主義はトーンダウンしていく。



「クリスマス・エクスプレス 」のCMが復活


2000年代前半には、興味深い出来事が2つあった。ひとつは、『クリスマス・エクスプレス 2000』のタイトルで、JR東海のクリスマス期のCMが復活したことだ。しかも、かつて同CMのヒロインだった深津絵里と牧瀬里穂が、ミレニアムに遠距離恋愛をする若い女性(星野真里)をそっと見守るという内容だったのだ。「クリスマス・イブ」はこのCM効果でオリコン週間チャートトップ10入りするリバイバルヒットを記録。“あの頃” の雰囲気を完全に再現したCMが若年層に届いたのかどうかは分からないが翌年以降「クリスマス・エクスプレス」のCMシリーズは継続されなかった。

もうひとつは2004年のこと。フジテレビはかつて『東京ラブストーリー』と同じ織田裕二主演で、いわゆる “月9” の黄金期の再現を狙ったラブストーリー作品を制作した。いわば “バブルの熱気よ再び” の夢を託した作品のタイトルは『ラストクリスマス』。やはり、クリスマス頼りだったのだ。オープニング曲として織田裕二 with ブッチ・ウォーカーというユニットが、ワム!の「ラスト・クリスマス」をカバーした。なお、このドラマは平均視聴率20%を超えるヒット作となったが(ビデオリサーチ調べ関東地区)、その後、再びバブル的クリスマスのムーブメントが巻き起こるきっかけにはならなかった。バブル期的なクリスマスは、すでに懐かしむ対象になっていたのかもしれない。

そこからさらに20年、それでも12月の街角からは山下達郎の「クリスマス・イブ」をはじめ、新旧のクリスマスソングが聞こえてくる。ーー クリスマスソング、それは寒い季節に、人々から楽しさや幸福感、高揚感、あるいは寂しさや懐かしさなどさまざまな感情を引き出す不思議な力を持っているのかもしれない。


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