さて、2018年12月12日(水)、渋谷 Loft9で行われる
『80年代イントロ十番勝負 vol.3 ☆クリスマスの宴☆』の日が近付いてきました。チケットも残りわずかとなりました。お早めにお買い求めください。
『80年代イントロ十番勝負 vol.3 ☆クリスマスの宴☆』特別企画ということで、今回も、クリスマスソングのイントロを分析したいと思います。愛され続けるあのクリスマスソングのイントロには、どんな秘密があったのか。
今回取り上げるのは、泣く子も黙る山下達郎『クリスマス・イブ』。日本人が、それこそ何千回と聴いたであろう、あのイントロに、どんな秘密があったのか。
注目したいのは「イントロ内転調」です。イントロという、ある意味では曲本体の添え物の中で、すでに転調が仕組まれているという。
まずイントロのコード進行を見てみます。
イントロ前半:【Esus4】→【E】→【Esus4】→【E】→【Esus4】→【E】→【Dadd9】→【Dadd9】【E】
イントロ後半:【A】→【EonG#】→【F#m7】→【E】→【Dmaj7】→【C#m7】→【Bm7】→【Bm7/E】【E7】
※「→」で挟まれた間が1小節
16小節の大型イントロですが、前半後半でパキっと分かれます。後半については、もうお馴染みですよね。いわゆる「カノン進行」です。詳しくは私の過去記事
『日本における「カノン進行」の源流を探る旅(その1)』をお読み下さい。
で、今回注目するのは「イントロ前半」の8小節です。ざっくり言えば【E】のコードがずっと続いています(sus4 については
『80年代に sus4イントロが増えた理由、その源流はロンドンパンクだった!』もご一読を)。
しかし7小節目の【Dadd9】のところをよく聴いてみて下さい―― 何だか、頭に浮かんでいる映像が、パッと切り替わる感じがしませんか?
実は、イントロ前半のキーは【E】で、イントロ後半のキーは【A】と、イントロの中で転調しているのです。そして、その【A】への転調の「呼び水」(不思議な表現ですが、まさに「呼び水」という表現がふさわしい)となっているのが、7小節目の【Dadd9】なのです。
皆さんはこの7小節目で、どのような映像を思い浮かべますか? 私は、6小節目までが空に雪が降っている映像で、7~8小節目で、それまでの映像に靄(もや)がかかって、そして「カノン進行」のイントロ後半に入ってからは、東京の表参道あたりのイルミネーションに人が行き交う映像へと切り替わるイメージです。
もしくは6小節目までが雨で、7~8小節目で雪に変わり、そしてイントロ後半でしんしんと降り積もる映像とか(だから「呼び水」なのか!)。
とにかく、『クリスマス・イブ』は、イントロからして、すでにドラマティックな仕掛け=「イントロ内転調」が入っていたのです。『クリスマス・イブ』が「名曲」として取り扱われるようになったことに、この「イントロ内転調」は、かなり貢献していると思います。
山下達郎の「イントロ内転調」としては、他には『土曜日の恋人』(85年)のドラマティックなイントロがあります。またライバルとも言える桑田佳祐の「イントロ内転調」としては『いつか何処かで(I FEEL THE ECHO)』(88年)が忘れられません。いずれの曲も、私の新刊
『イントロの法則80's~沢田研二から大滝詠一まで 』(文藝春秋)で完璧に分析しておりますと、最後に宣伝も忘れられません。
2018.12.09