ちょっと背伸びした大人の世界、小比類巻かほる「シティーハンター」

その後、何度もシリーズ化された『CITY HUNTER』のアニメ主題歌第１号。少年ジャンプの原作は、連載当初はアダルトなムードがプンプンに漂っていた。リョウは普通に相手を射殺するし、初代パートナーの槇村もあっけなく死亡。おまけに、バストトップも当たり前に露出。コメディパートよりもシリアス＆ハードボイルドなパートが圧倒的に上回っていた印象だ。

そんな大人の雰囲気がピッタリだったのがこの主題歌。オープニングアニメの都会の夜のイメージが最高にクール。いわゆるアイドルソングとは一線を画す、小比類巻かほるの力強く伸びやかな歌声が、ちょっと背伸びした大人の世界をのぞかせてくれていた。

CDや音楽雑誌を購入することもなく、ラジオはニッポン放送一直線だった中学生の筆者にとって、小比類巻かほるの曲で知っているのはこの主題歌と、深夜にバンバン流れていた「銀座ジュエリーマキ」のCM曲ぐらい。もっとも、CM曲は曲名すら知らないのだが… それどころか、動く小比類巻かほるを見た記憶すらない。見たことがあるのは、CDジャケットの横顔や軽く微笑む姿ぐらい。筆者的には、ある意味 ZARD の坂井泉水的な神秘的アーティストなのだ。

当時の人気深夜番組『EXテレビ』で、舛添要一が好きな女性のタイプに小比類巻かほるを挙げ、微妙な笑いを誘っていたことも思い出される。国際政治学者としてバラエティ番組に出まくり、油ギッシュな見た目通りのギラギラしたスケベキャラをまっとうしていた時代のこと。スタジオのあの乾いた笑いはどういう意味だったのだろうか？

筆者は、その声質やわずかな情報から、『CITY HUNTER』に登場するキャラクターでいうところの「女刑事の冴子」を勝手にイメージしているが、きっと、小比類巻かほるの実像はまったく違うのだろう。しかし、今後も答え合わせをする気はない。神秘のヴェールをあえてはがす必要はないのである。


Song Data
■ City Hunter ～愛よ消えないで～ / 小比類巻かほる
■ 作詞：麻生圭子
■ 作曲：大内義昭
■ 編曲：戸塚 修
■ 発売：1987年５月10日

※2016年８月25日に掲載された記事を加筆修正。

2018.04.06