『ゆうひが丘の総理大臣』の放送が始まったのは1978年の10月。当時、僕は中学1年生。近い将来自分にも必ず訪れる高校生活が、このドラマのようだったらいいな、こんな先生がいたらいいな、と毎週楽しみに観ていたものだ。
主人公の新任先生を演じるのは中村雅俊。僕は彼が演じる破天荒で、型破りな熱血教師に理想の人間像を見ていた。だからだろうか、僕は未だに中村雅俊が好きだ。
中村雅俊の初主演作は、1974年4月から放送が開始された、やはり学園もの名作『われら青春!』。このドラマで好演した中村雅俊は、以来、青春群像ドラマの主人公として活躍することになる。
松田優作と共演した『俺たちの勲章』(1975年)は刑事ドラマという形の青春ドラマ、『俺たちの旅』(1975年)は大学生活を描いた青春ドラマ。今考えると、僕はこの時期、中村雅俊の青春ドラマばかりを選んで観ていた気がする。
多分、「青春」という言葉に憧れていたのだと思う。小学生から中学生という思春期を迎えた自分、大人の世界にただ純粋に憧れていた時期。この後、自分にも訪れるであろう一生に一度の青春時代を後悔せずに過ごすために、中村雅俊のドラマを観て予習していたというわけだ。
要はマセガキだったんだね。小学生のくせに、中村雅俊の真似をして、親父の下駄を履いて家の近所を歩いていたことなんて、恥ずかしくて誰にも言えない…
中村雅俊は俳優でもあり、歌手でもある。俳優の中村雅俊を好きだった僕は、当然歌手の中村雅俊のファンでもあり、彼の曲を良く聴いた。
『われら青春』の挿入歌である「ふれあい」、「青春貴族」。『俺たちの勲章』の挿入歌「いつか街で会ったなら」、「さすらい時代」。『俺たちの旅』の主題歌「俺たちの旅」等々。
そして、僕の一番のお気に入りが『ゆうひが丘の総理大臣』の主題歌である「時代遅れの恋人たち」だ。
「時代遅れの恋人たち」の作詞は山川啓介、作曲は筒美京平。過去のドラマの少し暗めの曲調とは異なる明るめの曲調で、今聴いても色褪せない青春ソングだ。
流行に流されることなく、不器用でも、自然体で飾らない愛がいいという心情を歌った曲で、僕はこの曲を聴くと、背伸びしなくてもいいんだ、あるがままの自分でいればいいんだ、と、自信を取り戻すことが出来たりして、うん、今聴いてもやっぱり名曲だ。今でも時々カラオケでこの曲を歌ったりするけど、歌詞をまるまる覚えていたりしてビックリする。
僕が思春期に好きだった青春群像ドラマの流れは、『ゆうひが丘の総理大臣』で突然終わりと迎える。『3年B組金八先生』の登場だ。
金八先生はもちろん観た(シーズン2までだけど)。シーズン1は中学2年生の時だったから、ドラマとリアルが重なっていたためか、気楽に観るなんてとても出来ないドラマだった。『スクール☆ウォーズ』もしかり、80年代に入ると学園ドラマは非常に現実的でシリアスなものになっていく。
これはこれでいいとは思うけど、僕は70年代の気楽に観られる青春群像ものの学園ドラマの方が好きだったな。今の若者は、「青春」なんて言葉を使うことなんかあるのだろうか。もしかして死語?
2017.10.14
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