11月1日

青春ドラマの傑作!中村雅俊「ゆうひが丘の総理大臣」で “現在” を謳歌しよう!

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ドラマのラストカットで登場する手書き文字の四行詩


「四行詩」と聞いて、あなたは何を思い浮かべるだろう。

―― 僕はまず、父の買ってきた世紀末予言解説本『ノストラダムスの大予言』(祥伝社 / 五島勉著)の中にある一節を思い浮かべてしまう。

「1999年7の月、空から恐怖の大王が来るだろう…」

なんとも呪われていた小学生時代だった… なんて、それはちょっと大袈裟だけれど、一世を風靡したこの本のおかげで僕たちは20世紀の終わりをちょっぴり「怖いなぁ」なんて意識していなかっただろうか? このシリーズは1973年の発行からシリーズ化され、80年代の終わり頃まで爆発的にヒットした。

当時、青春時代を謳歌していた僕らはちょっとでも嫌なことや上手くいかないことがあると、このノストラダムスの話を例に挙げて「どうせ俺らあと〇年たったら死んじゃうんだし」と、悲観して逃げる材料のひとつにしていたと思う。なんとも軟弱者の集まりであった。

次に「四行詩」と聞いて思い浮かべるのは日本テレビ系ドラマ『ゆうひが丘の総理大臣』のエンディング映像である。このドラマは中村雅俊主演の学園ドラマだ。1978年10月から1年間、全40話が水曜の夜に放送された。

毎回、ドラマの最後に主人公である型破りな教師、“ソーリ” こと大岩雄二郎(中村雅俊)と教え子である生徒たちが青春を謳歌するイメージ映像が流れる。例えば、海岸線を走るクラスの生徒たち。時には生徒たちに担ぎ上げられ海に落ちる “ソーリ”。そして、女生徒(藤谷美和子)と波打ち際で水をかけ合い戯れる… なんてシーンも。

そのラストカットに、それまでドラマで描かれたストーリーになぞらえた四行詩が、なんとも味わい深い手書き文字で描かれるのだ。

ちなみにこのエンディング四行詩は、1975年10月から1年間(全46話)放送された同局のヒットドラマ『俺たちの旅』から引き継いだ演出だ。



「俺たちの旅」「ゆうひが丘の総理大臣」エンディングで締めくくられる詩


『俺たちの旅』は、三流大学に通うカースケ(中村雅俊)とオメダ(田中健)、その同郷の先輩グズ六(津坂まさあき)が中心となって織りなす二十代前半の青春群像劇であった。そのせいか詩の内容も、“大人の男らしさ” を意識した詩が多かった。例えば――

 男の胸には
 哀しさがある
 だから
 あんなにやさしいんだ
 (第8話より)

このあたりは偉大なる脚本家・鎌田敏夫の思いでもあろう。それに対して『ゆうひが丘の総理大臣』は高校が舞台。当然その内容も学校生活の中で起こるドタバタ劇や淡い恋、先生と生徒の確執などで、その内容も若気の至り的なものとなった。

 裸の心で
 ぶつかりあって
 ひとつのふれあいが
 いつしか芽ばえ始める
 (第1話より)

 誰かを傷つけて
 友だちをつくっても
 本当の
 仲間とはいえない
 (第14話より)

もうお尻がムズムズするような詩が毎回流れる。ちなみにこの頃、青春ドラマの脚本は鎌田敏夫の独壇場だったけれども、このドラマのメインライターは岡本克己である。

中村雅俊が歌うオープニングとエンディング


さて、話は変わるがドラマが始まった当時、僕は小学六年生だった。学校の授業の一環として、卒業する前に「中学生になったら」という作文を書かされた。

僕は、「中学校には通いたくない。なぜ公立というだけで僕らは中学を選べないのか」などという作文を提出し、担任の先生をひどく困らせてしまった。校内暴力がひどい時代、特に僕が通うはずの公立中学校は県内でも有数の “荒んだ学校” として、評判があまり良くなかったのだ。

暴力反対! である。

当たり前だけど痛いのは嫌なのだ。『ゆうひが丘の総理大臣』の中でも、草川祐馬演じる不良の冬木は怖そうだったし、僕はどちらかというと山川役の清水昭博に近かった。ええかっこしいのクセに臆病者なのだ。

出来ることなら僕は荒んだ中学校でビクビクするのではなく、明るく楽しい学校生活を送りたいと夢見ていたわけで、それはもう本気で悩んでいた。それでも、先生になだめられ中学校へ行こうと決心したのは、この『ゆうひが丘の総理大臣』を観て、最後の四行詩に心を打たれ主人公である “ソーリ”(中村雅俊)から勇気を貰っていたからだと思う。

そう、僕はエンディングテーマの「海を抱きしめて」が大好きだった。ドラマの主題歌「時代遅れの恋人たち」と同様に歌詞を山川啓介、作曲を筒美京平が担当している。

いつも番組の最後、コーラスから曲のイントロが始まると僕は毎回切ない気持ちになり、その寂しさの余韻に浸った。

 生まれて来なければ
 よかったなんて
 心が つぶやく日は
 人ごみに背を向け
 会いに行くのさ
 なつかしい海に

この歌のようにツライことがあったとき、海が近くにあったらどんなに良かっただろう。

 汗ばむ心潮風が
 洗うにまかせれば
 いつのまにか生きることが
 また好きになるぼくだよ

僕の住んでいる埼玉県に海はなくて、事あるごとに海への憧れは増すばかりであった。

ドラマさながら! 鎌倉の海で「海を抱きしめて」が脳内リピート


そしてドラマから三年経ったある日――。

中学卒業の直前、僕は通っていた塾の先生の粋な計らいで鎌倉へ連れて行ってもらえることになった。今思えばその先生だってまだ大学生だったはず… 凡クラ生徒6名を引率するという本当によくできた先生だった。きっとこの先生も自分の描く青春像にハマっていたのかもしれない。

高校受験が終わったばかりの僕らはその解放感もあって、目の前に広がる海岸線を見たときは、それはもう感動しきりであった。特に僕は大はしゃぎだった。だってドラマの聖地に来たマニアそのものなのだから。

僕は高校の合格祝いに買ってもらったALBAの腕時計を身につけ、その当時発売されたばかりのコカコーラSuper300瓶、通称「だるま」をゴクゴクと飲み、長谷寺、鎌倉大仏や鶴岡八幡宮、そして江ノ電に乗って海を見て… なんだか自然と心が軽くなったんだよなぁ。

みんなと並んで海を見たとき、僕の頭の中には「海を抱きしめて」が流れていた。「高校に行ったら…」なんて一抹の不安もあったけれど、この瞬間、この時間がとても愛おしく思えたんだ。

現実の社会に出てみると、良いこともあれば、ツライことなんてその何十倍もあって、ちょっとでも気を緩めると「何のために働いているんだろう」とか、「昔はよかったな」なんて、過去を振り返っては、ちっとも前に進めなくなることがある。そんなとき、僕は今でもこの「海を抱きしめて」を思い出して口ずさんだりする。

また頑張ろう… そう思わせてくれる最終話の詩


時間とは不思議なもので、過去に嫌だったことや、それにまつわるツライ思い出さえも味わい深い記憶として変化させてくれる。それはまるで、渋柿を干しておくと甘く食べられる… というのと似ているかもしれない。

だから、嫌なことや上手くいかない日々が続くと、何かに理由を付けて駄目だったことを正当化してみたり、過去を振り返っては、つい自分を甘やかしてみたり… けれども、実際は過去を懐かしんだところで現実は一向に変わらないし、未来に不安を感じたとしても、それはまだ何も始まっていなかったりするんだよね。

 人は誰でも
 過去や未来を生きるのではない
 現在という時間を
 ただこの時だけを生きるのである
 (第40話より)

僕は『ゆうひが丘の総理大臣』の最終話に流れたこの四行詩を今でも覚えていて、消えかかるやる気の炎に薪をくべるが如く、言葉に出してみたりする。

好き過ぎて暗記してしまったのだ。何度かTwitterで呟いているかもしれない。

未来を恐れず、過去に執着しない。今この瞬間こそが大切なのであって、それはいくつになっても変わらないんだよね。

会いたい人には臆さず会いに行けばいいし、やりたいことがあったらすぐにやってみる。

生きることをシンプルに考えたら、また頑張れる!

あぁ、久しぶりに海へ行きたくなったなぁ…





※2018年11月1日に掲載された記事をアップデート

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2022.11.01
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カタリベ
1967年生まれ
ミチュルル©︎たかはしみさお
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