85年、UKで5週連続1位、全米でも15位まで上がった、かなり異色の楽曲がありました。「ナ・ナ・ナ・ナ・ナインティーン、ナインティーン!」というサンプリングが印象的なUKのアーティスト、ポール・ハードキャッスルの「19」という曲です。
歌の入らないダンストラックをバックに「第二次世界大戦のアメリカ兵の平均年齢は26歳だったが、ベトナム戦争のそれは19歳だった。」というニュースナレーションからはじまり、あとはそのベトナム兵の精神的疾患、後遺症などの内容のナレーションが続きます。これは実際のアメリカABC制作のドキュメンタリーや実際の兵士の肉声などのサンプリングが使われました。
楽曲自体は非常にかっこいいダンスナンバーになっていますが、「ナ・ナ・ナ・ナ・ナインティーン」のフレーズが強烈で反戦メッセージも斬新かつセンセーショナル。ミュージックビデオもニュース原稿に沿ったものでした。
日本では当時「あ、さてー」のフレーズで有名だった小林完吾アナウンサーによる日本語ヴァージョンも制作されました。
原曲通りに「じゅ・じゅ・じゅ・じゅ・じゅーきゅー」、「べ・べ・べ・べ・ベトナム」とスクラッチしてくれてます。これにはちょっと笑ってしまいましたが、ニュース原稿などの内容がちゃんと理解できるようになり、バカな17歳の高校生の私には大変助かりました。そしてちょっと色々考えさせられました。
このメッセージ自体の深刻度。こういった方法で人々にメッセージを伝えることができるということの大切さ。いかにインパクトを持たせることができるか。作品としての完成度を決定づけるアーティストのセンス。
いやあ、素晴らしいですね。ミュージシャンができることの可能性を感じます。
この後、幼児虐待がテーマのスザンヌ・ヴェガ「ルカ」(87年)、貧困がテーマのトレイシー・チャップマン「ファスト・カー」(88年)などアメリカで社会問題を扱った楽曲が次々にヒットします。
60~70年代には無数にあった反戦歌や政府を批判した曲が激減した80年代。そこに一石を投じたのが「19」だったのかもしれません。
2017.07.18
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