私は建築としての教会が好きで、アメリカやヨーロッパを旅行した際には、必ず土地土地のチャーチ(Church)を訪れていた。そして、その荘厳な佇まいや、一体どのくらい細工に手間がかかったのか、想像もできない繊細な彫刻にしばし見とれる――。
思えば、祖母は敬虔なクリスチャンであった。
私も物心ついた頃から、教会へ連れて行ってもらい、お祈りの真似事をしていた。日曜ごとに教会に行き、ミサに参加する。キリスト教の教えは全く分かっていなかったが、きれいなレースのベールをかぶり、ワインにひたしたパンを食べ、美しい讃美歌の旋律を聴くのが楽しみだった。だが、ほどなくして、教会に行くよりも友達と遊ぶほうが楽しくなった私は祖母のお供をやめてしまった。
『天使にラブ・ソングを…』という映画と出会ったのが、第二の教会との出会い。今度は讃美歌でなく、ゴスペルだった。
ウーピー・ゴールドバーグ演じるクラブ歌手が、事件に巻き込まれ修道院に匿われる。そこで、下手な聖歌隊をめちゃくちゃかっこいいモータウン風アレンジに変えてしまう。「アイ・ウイル・フォロー・ヒム」のシーンが一番好きだが、「ヘイル・ホーリー・クイーン」もいい。歌うことで自分たちが自信を持っていく気持ちがすごくわかる。
映画が公開された頃はちょうど受験で、自分なりに環境の変化やプレッシャーと戦っていた。寒くて厳しい冬に感じていたが、この映画の主人公の豪快さとかっこよさ、仲間たちの温かさ、プラスの力を与えてくれるこの聖歌隊の歌にパワーをもらって無事に乗り越えた。
クリスマスシーズンになると、サントラを子供たちと聴いて今は亡き祖母を思い出す。本音では、私が清楚なお嬢様になるようにと期待して教会に連れて行ったのかもしれない。そんな気持ちを裏切ってしまう人生になってしまった私を一言も否定せず、愛を与え続けてくれた祖母に感謝。
寒さも忙しなさも増すこの季節、楽しみながら今を乗り切って明るい新年を迎えたい人にオススメの映画とサントラである。
※2016年11月24日に掲載された記事をアップデート
2018.11.13
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