10年以上も続く人気ドラマとなった「ビバリーヒルズ高校白書」
アメリカの高校に通っていた人に会うと、ついつい聞きたくなるのが学園生活の様子だ。
「プロムあった? 参加した?」「プロムキングとクイーンはどんな子?」「スクールカーストの頂点はアメフト部とチアリーダー?」「親のいない家での週末パーティーあった?」
こんなとき、私が思い浮かべるのが海外ドラマ『ビバリーヒルズ高校白書』(シーズン4から『ビバリーヒルズ青春白書』)、通称 “ビバヒル”。アメリカでは1990年から放送が始まり、10年以上シーズン10まで続いた人気ドラマだ。
日本では92年にNHK-BS2にて初放送、95年から教育テレビでも放送された。
初期ビバヒルの主役は、ミネソタからビバリーヒルズに家族で引っ越してきた双子の兄妹ブランドンとブレンダ。リッチな同級生たちとのギャップに戸惑いながらも、徐々に高校生活にもなじみ、恋に友情に部活に授業にパーティーにバイトに…… と、目まぐるしくも充実した日々が描かれる。
ビバヒルの一番人気は、ジェームス・ディーン風不良少年ディラン
ビバヒルの登場人物といえば、ディラン・マッケイを真っ先に思い浮かべる人が多いのでは。不良、一匹狼、金持ち、父親が訳あり、高校生なのに一人暮らし、バイク乗り、サーファー…… などなど、もう要素てんこ盛りのキャラクター。リーゼント風のヘアスタイル、ちょっとすねた表情はさしずめ90年代のジェームス・ディーンだ。
さらに、小杉十郎太によるディラン吹き替えが、ニヒルでカッコいい。実際のディランの声は、ややふにゃっとしているので、吹き替え版のほうがカッコよさ増し増し。時折キザすぎるのだが、この世界ではこれもアリである(なだぎ武の持ちネタによって、おもしろキャラにされてしまったけど)。
そう、日本でビバヒルを観ていた私たちには、日本語吹き替え版の印象が強い。ディランの「やっこさん」「よぉ、ミネソタ」、デビッドの「ワ~オです」「姉上、どうもです」、スティーブの「俺様」「~でやんす」など、印象深い台詞をあげるとキリがない。
アメリカの社会問題やティーンの悩みを真正面から取り上げる
とはいえビバヒルは、浮かれたティーンの学園生活だけを描いたドラマではない。
印象深いエピソードは数々あるが、最も衝撃的だったのが、銃の暴発事故が起こる回だ。父親の書斎にあった銃をおもしろ半分にいじっていたスコット、すると……。
今もアメリカで、子どもが親の銃を持ち出し、本人や兄弟が亡くなるといった痛ましい事故がときどき起こるが、こうしたニュースを耳にするたびビバヒルのスコットを思い出す。
学園のクイーンといった感じのブロンド美少女、ケリーの告白も忘れられない。女の子たちの賑やかなパジャマパーティーで “告白ゲーム” が始まり、初体験がデートレイプだったことを涙ながらに語るのだ。
この他にも、ドラッグ、人種差別、アルコール依存、エイズ、不法移民など、様々な社会問題を取り上げていた。高校を卒業したシーズン4からは邦題が『ビバリーヒルズ青春白書』となり、大学や社会人となった彼らの生活が描かれる。
すると、仲間内でくっついたり離れたりといった展開が中心となる。ビバヒルの社会派要素は徐々に弱まり、典型的な “ソープオペラ” になってしまったことが残念だった。ビバヒルの真髄はやはり、ティーンの悩みを真正面から取り上げた “高校白書” にあったと、私は思うのだ。
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2023.06.30