10月21日

PINKの「PRIVATE STORY」タイアップすりゃいいってもんじゃない

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“PINK” というバンドのライブがすごいらしいというウワサをあちらこちらで聞くようになったころ、“ショー坊” こと成沢彰三氏から、これ聴いてみてと渡されたのが PINK のデモテープでした。1983年だったかな?

ショー坊は太田裕美のバックを長いこと努めていたドラマーで、ミュージシャンとして全国を回っているうちに、各地のイベンターさんを始めとする業界人たちと仲良くなり、そこいらのスタッフなんかよりずっと広い人脈を持つようになって、ミュージシャン家業に見切りをつけ、スタッフ側に転身しようとしていたところでした。

その彼が最初の仕事として目をつけたのが PINK、彼らのマネージャーとなることでした。そして自分が抜けた太田裕美のバックバンドを、ちょうど彼女もニューウェイヴ / テクノ方向にその音楽性を転向させていたので、PINK のメンバーを中心に再編成しつつ、PINK 自体のレコード契約を目指して動いていたのです。

余談ですが、“ショー坊” とアダ名がついたのは、"坊” と呼ばれるくらい若い頃から仕事をしているからなのですが、そういうアダ名って中年になろうが還暦を越えようがやっぱりそのままで、なんか哀愁がありますよね。

他にも長年の知り合いに “少年” というアダ名の男がいまして、未成年が事件を起こして新聞に載る「少年A」の目を黒塗りにした写真みたいな顔だということで(^^)、そういうアダ名になったのですが、50を越えた今も “少年” と呼ばれています。後輩たちは呼び捨てにできないので “少年さん” と。とても味わい深いです。

近田春夫さんの “ビブラトーンズ” にいた福岡ユタカ (vo)、矢壁アツノブ (dr)、ホッピー神山 (key)、元 “東京ブラボー” の岡野ハジメ (b)、元 “爆風銃” のスティーブ衛藤 (perc)、元 “ショコラータ” の渋谷ヒデヒロ (g)の6人からなる PINK。まさにポストパンク / ニューウェイヴ真っ盛りの当時の英米ロックシーンの空気を思い切り吸い込み、それをエネルギーとして自分たちの音楽をシェイプアップしていきました。

上手い人たちですから演奏がいいのはもちろんなのですが、その頃の彼らのライブには、音楽に対する激しいパトスが演奏にほとばしり出ているような凄い勢いがありました。サザンオールスターズの「開きっ放しのマシュルーム」(アルバム『人気者で行こう』1984年収録)という曲は、桑田佳祐が PINK を聴いて感動して作ったと言われてますね。

PINK が最初に契約したレコード会社は EPICソニーでした。A&Rは会田さんという人で、1984年6月21日に「砂の雫」というシングルを出しました。そのときも、前述のような関係性から、レコーディングに立ち会ったりしていたのですが、7月に私は EPIC の契約ディレクターになり、なんとなく会田さんといっしょに PINK を担当することに。

実はベースの岡野ハジメくんとは別の縁もありました。以前、山下久美子のバックバンドのオーディションをやったときに彼がエントリーしていたのです。結果はバンドで受けた人たちを採用し、個人エントリーだった彼はお断りしましたが、真っ黒なサングラスをかけていたので取って顔を見せてもらったら、睫毛の長いつぶらな瞳だったのがとても印象に残っていました。

余談ばかりになってしまいました。EPIC での PINK 第2弾は「PRIVATE STORY」というシングルで、映画『チ・ン・ピ・ラ』(川島透監督)の主題歌というタイアップがついていました。こういうしっとりとした曲も書け、逆にメロウに堕さないグルーヴィなサウンドを持ってくるところにも改めて才能を感じましたが、タイトルでひと揉めしました。

映画宣伝サイドからは、曲タイトルを映画と同じ「チ・ン・ピ・ラ」にしてほしいという要望がありました。これはまあ当然と言えば当然の要求でしょう。そして EPIC の宣伝や営業も同意見でした。しかし、メンバーは猛反発。「チ・ン・ピ・ラ」なんてタイトルはカッコ悪すぎるというのです。

それもよーくわかります。それに前作「砂の雫」のときもタイアップで、ジャケットがCMの絵柄にされてしまいメンバー全員大ショックという事もあり、今回は頑なでした。ついにはボス、丸山茂雄さんまで出てきて、私が懇々と説得されたのですが、結局「PRIVATE STORY」のまま押し切りました。

こういうことがあるとたいていタイアップも成功しないんですが、これもやはりダメでした。映画もヒットはしませんでしたが、かと言って「チ・ン・ピ・ラ」にしたらどうだったか。「チ・ン・ピ・ラ」というタイトル自体、あまり売れる気がしないですね。

要は、タイアップだから、露出の機会が多いから、だけではモノは売れないってことですね。カッコいい、売れそうなタイトルを映画と一緒になって考え尽くす、くらいの突っ込んだ取り組みがないと成功なんてできやしないと…… 今となってはよくわかります(^^)。

2018.04.25
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  YouTube / Stephan Enckhof
 

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カタリベ
1954年生まれ
福岡智彦
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