4月17日

岡田有希子「Summer Beach」アイドル+シティポップを見事に成立させた尾崎亜美の仕事!

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岡田有希子デビュー40周年!7インチシングル・コンプリートBOX 発売記念コラム vol.5

A面:Summer Beach
作詞:尾崎亜美
作曲:尾崎亜美
編曲:松任谷正隆
B面:星と夜と恋人たち
作詞:吉沢久美子
作曲:MAYUMI
編曲:松任谷正隆

シティポップのアーティストが考えるアイドルポップス = 岡田有希子


デビュー曲「ファースト・デイト」以来、シングルA面曲に歌謡曲の職業作家ではなく、若手のシンガーソングライターが起用されてきた岡田有希子は、スタッフから “アイドル歌謡とニューミュージックとの融合” というテーマを託されていたような気がする。

それでも最初のうちは、従来のアイドル歌謡の世界観を踏襲していたというか、いわゆる "アイドルらしさ" のイメージを逸脱しない、王道アイドルとしての高いポテンシャルが感じられるシングルになっている。しかし、1984年9月にリリースされたファーストアルバム『シンデレラ』は違っていた。

アレンジャーに清水信之を起用し、作家陣には山口美央子やEPOが参加。ムーンライダーズの岡田徹が作曲した「風の中のカフェテラス」でニューウェイヴ調の楽曲にも挑戦するなど、アルバムならではのバラエティに富んだ内容だった。その作風は、ニューミュージックというより、もっと洗練され、もっとエッジの効いたサウンドで、今で言う “シティポップ” をもしっかりと射程に据えた方針が明確に打ち出されていた。当時、洋楽を聴きなれていた大学生にも人気があったというのもうなずける話だ。

そして、1985年の3月にはシングルよりもビートを強調した別ミックスの「二人だけのセレモニー」が収録された、セカンドアルバム『FAIRY』がリリース。全曲のアレンジ(実質的なサウンドプロデュース)を松任谷正隆が務め、これまで以上に多彩なミュージシャンが参加することによって、シティポップのアーティストが考えるアイドルポップス = 岡田有希子が見せる、新しい80年代の王道アイドル像という傾向がさらに強くなった。

歌謡曲の枠に収まらない「Summer Beach」のサウンド




このような流れから、間を空けず4月にリリースされた5枚目のシングルが「Summer Beach」である。作曲は前作に引き続き尾崎亜美。涼しげなコーラスとパーカッションに導かれ、ダンサブルなリズムが繰り出されるイントロ。この洗練ぶりは完全に "振り切れた" と言っていいだろう。間奏のサックスといい、クリアで抜けの良いこのサウンドはもはや歌謡曲の枠に収まるものではない。

そしてなにより、堂々たる彼女の歌いぶりだ。低いキーの歌い出しが色っぽい。これがデビューから2年目の余裕というものなのだろうか。いや、そんな単純な話ではない。演奏がこれほどまでに洗練されていると、それまでのようなかわいらしい歌い方のままでは浮いてしまう。試しに、のちにCD化されたオリジナルカラオケ音源を聴きながら歌詞を追いかけてみてほしい。独特な譜割りが多く、歌いこなすのがいかに難しいかがわかる。曲に寄り添って歌い方を変えたことが彼女の表現に新たな魅力をもたらし、それが結果的に2年目の余裕となって感じられるのだろう。

今回は作詞も尾崎亜美。情景描写と心理描写が自由自在に織り交ぜられ、説明をしすぎずに行間を想像させる歌詞は彼女の真骨頂だ。シティポップの大事な要素であるリゾート感覚もまったく申し分ない。尾崎のデビューアルバム『SHADY』(1976年)、あるいは、小林信吾のアレンジによってさらにビートを強調させたこの曲のセルフカバーを収めた『POINTS-2』(1986年)なども併せて聴くと、「Summer Beach」が “アイドル+シティポップ” というコンセプトを見事成立させた金字塔的な1曲であることがより実感を伴ってわかるはずだ。

ロマンティックなムードを持った「星と夜と恋人たち」


B面の「星と夜と恋人たち」は、堀ちえみのアルバム曲で作詞家デビューし、既に『シンデレラ』収録の「ソネット」で歌詞を提供していた吉沢久美子と、モデル・歌手から作曲家に転身し、この時期からソングライターとしての活動を本格化させていた堀川まゆみ改めMAYUMIによる作品。

このコンビとしてはセカンドアルバム『FAIRY』収録の「Lady Joker」に続く2作目ということになるが、夢見がちな女の子を軽快に歌った前作から一転してロマンティックなムードを持った楽曲。全体的にメルヘンな世界観でまとめられたアルバムのカラーに準じた雰囲気を持ちながらも、恋愛描写はグッと大人っぽく進展している。昼間のA面に対する真夜中のB面という位置づけなのだろう。同じ海を舞台にした楽曲で揃えてくるあたり、本当によく考えられている。ものすごいスピードで才能を開花させながら、着実な歩みでステップを重ねていく彼女の輝きが最大限に発揮されたシングル盤である。



幻のラストシングル「花のイマージュ」の初アナログリリース含む、全7インチシングル9枚を収録したコンプリートBOXセット。各ディスクに、別カラーを使用したカラーヴァイナル仕様でリリース! 詳細はこちらから。

2024年8月22日発売      
品番:PCKA-18
価格:¥19,800(税込)
限定生産商品

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2024.08.04
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デビュー2年目の第一弾「Summer Beach」。この曲は一つの分岐点とも言えるかと思います。これまでのような分かりやすい物語性のある歌詞ではなく、ある夏の日のワンカットを切り取ったような刹那的描写の歌詞。加えて湿度感の低いカラッとしたサウンド。今でこそシティポップ的でかっこいいと言えるのでしょうが、当時の私は何か物足りなさを感じました。つまり岡田有希子っぽさが足りなくなって、誰が歌っても良さそうな曲。それが率直な感想でした。

またレコードジャケット撮影後の3月23日に髪をカットして、大胆なイメージチェンジを図ったのも大きな出来事。「ごめんね、あなたを驚かせた・・・」実際この急なイメチェンにびっくり、がっかりしてファンをやめ、85年デビュー組に乗り換えた人も少なくなかったでしょう。

さらにバラエティ番組で複数の男性タレントから振り付けや歌唱方法をいじられたこともありましたね。新人の時のぎこちなさが消えていって、共演者との親しさが増していった証かも知れませんが、そのような扱いを受けることはファンにとっては不満の種でした。

このような変化の中で、「Summer Beach」は一時のファンなのか本当のファンなのかの踏み絵となった曲とも言えそうです。3月25日に始まったスプリングコンサート「ハートにキッス」から早くも夏の歌をうたい始め、どんどん変わっていくゆっこを私は必死で追いかけていました。
2024/08/04 15:32
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カタリベ
1987年生まれ
真鍋新一
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