5月21日

The Good-Bye 最大の問題作「FIFTH DIMENSION」はビートルズのリボルバー?

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The Good-byeのアルバム「FIFTH DIMENSION」がリリースされた日
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待望のCD再プレス “5次元” の意味を込めた「FIFTH DIMENSION」


もし日本の長く続いたロックシーンを、一つのキャンパスに例えるとする。そしてロックバンドを絵の具と仮定するとして、一体どの絵の具を選ぶとならば最も興味深い変化を与えることが可能となるのか? その選択肢の中に、The Good-byeという絵の具を加えると、そのキャンパスがまるでクリストファー・ノーラン監督の映画『インセプション』を思わせる、時空をも捻じ曲げるような変化をもたらす可能性が起こりうるという考察を試みてみたい。

今回の論考でこのバンドで最もふさわしいアルバムは、文字通り “5次元” の意味を込めたタイトルである『FIFTH DIMENSION』に他ならない。現在タワーレコード企画による待望のCD再プレスが、これまでのファンだけでなく新たな世代にまでも支持を拡大しつつある彼等の作品の中でも、発表当時ファンの想像を遥かに凌駕した内容が賛否両論あったと言われたが、そこから時の試練を経たことで奥深い音楽性や発想の独自性が、ファンだけの支持に留まらず幅広い大衆からの評価を獲得した稀有な作品と言われていて、正にその意味で音楽シーンの位相変換をも成し遂げたと言っても過言ではないかもしれない価値を有している。

曾我泰久と川原伸司が語る、自信作を生み出した満足感


自分が数ある彼等のアルバムの中で、この作品を選択した最大の理由、それは自分も企画に参加した今年6月10日 “渋谷LOFT HEAVEN” でのCD再プレス記念のイベントに際して、ヴォーカル&ギター担当の曾我泰久と、彼等の歴史には欠かせないプロデューサーであり、自身もPaul Wilsonとして数々の名曲を提供した作曲家としても名高い川原伸司の二人に、あえてこれまでのソングライティングの深層を公開するかのように、そして楽曲の制作過程をも惜しみなく披露するかのように演奏して頂いたのだが、そのリハーサルの時から、最も多く話が出たのがこの作品であったのが大きい。

曾我と川原共に、これまで大変であった点では本作と、現時点での最新作である『Special ThanX』がダントツであると言いつつも、その口調は二人とも自信作を生み出した満足感をも感じさせてくれた。

事実、元々のきっかけとなったギター&ヴォーカルの野村義男の「Presentはハムスター」、曾我の「THE VOID」のデモテープから、“サイケデリック”というテーマが出来たのは、ファンにも知られたエピソートだが、実際オープニングを飾るベーシスト加賀八郎の「OUT OF THE TIME」から始める内容は、各人のソングライターとしての個性が解き放たれるかのような色彩感を与えてくれる。

ある意味それぞれが込めたエネルギーの放熱量が過剰なので、本来なら統一感を持たせるのは難しいはずだが、音像の中心で常に重厚さとスピード感を兼ね備えた衛藤浩一のドラムが位置付けられていて、その上に加賀のグルーヴィーなベースラインが加わることで、彼等特有のバンドサウンドが、既にリズムセクションの段階で確立されているのが明白だ。

スタジオそのものを楽器として考える発想


80年代はレコーディングスタジオがアナログからデジタルに移行する転換期で、現在の視点で聴くと古臭さを感じる音も少なくないが、この強力なリズム隊が主軸にあるからこそ、タイムレスな輝きを保っているのも分かる。

そして更に、ギターのエフェクターなどもデジタル化が進んだことで空間を活かしたリバーブやディレイがスタジオに導入されて、曾我と野村のギタープレイには、それまで培った縦横無尽のコンビネーションに加え、シャープかつ広大なスケール感までも帯びた無双状態が伝わってきて、この時点で名実共にバンドとしての個性が完成したと言っても過言ではないはずだ。

曾我がこの前後から、スタジオワークのイニシアティブを取るようになったのも含めて、スタジオそのものを楽器として考える発想が確立されたのかもしれない。

ビートルズ「リボルバー」と対比すべきアルバム


このアルバムを川原も含めて彼等が敬愛するザ・ビートルズの『リボルバー』と対比させるのに異論は無いが、サイケデリックというテーマなら、その先にあったはずの、『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』の路線に自動書記的に進まなかった点に、自分は彼等のオリジナリティを感じてならない。

ひょっとしたら、90年代にレニー・クラヴィッツやニルヴァーナなどが登場したことで、また時代はデジタルな中でラウドでノイジーな音像を求めるようになるのだが、このアルバムの音を聴き込むと、何処かでそういった時代が訪れるのを予想したかのようにも感じられる “プレ・オルタナティブ” な質感があるからこそ、時を超えた生命力を宿したという視点で捉えるのは十二分に可能ではないか。

特集:The Good-Byeに夢中!

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2022.07.23
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カタリベ
1966年生まれ
吉留大貴
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