1月21日

山下達郎からオメガトライブまで!ラグジュアリーな夏を彩る大人のシティポップ名曲11選

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いわゆるシティポップが注目されるようになってから、およそ10年。山下達郎、竹内まりや、大貫妙子からはじまり、松原みき、杏里、八神純子など、欧米やアジアで発掘されたアーティストの音楽性が国内に逆輸入される形で再評価を受けてきた。近年はJ-FUSIONを代表する高中正義が世界的人気を博すなど、その領域はさらに拡大。一過性のブームに終わることなく、ひとつのカテゴリーとして定着した感もある。

ということで、毎回、時宜を得たプログラムでお楽しみいただいている歌謡ポップスチャンネルの『Re:minder SONG FILE』でも2024年8月以来、2度目のシティポップ特集をお届けする。テーマは「ラグジュアリーなシティポップ」。シティポップといえば、洋楽のサウンドに影響を受けて、1970年代から1980年代にかけて登場した都会的で洗練された邦楽というイメージが強いが、今回はその中から特にリッチさやゴージャスさが感じられる、これからの季節、夏にふさわしい11曲を厳選した。

大人の恋模様を描いたラブバラード、「マイ・ラグジュアリー・ナイト」





オープニングを飾るのは、しばたはつみ「マイ・ラグジュアリー・ナイト」(1977年)。そのまんまやん!との声が聞こえてきそうだが、選曲を依頼されたとき、真っ先に浮かんだ歌である。マツダの高級クーペ「コスモ」のCMに起用された本作は、夜の街を舞台に大人の恋模様を描いたラブバラード。歌うしばたが当時レギュラー出演していた大人向けの音楽番組『サウンド・イン“S”』(TBS系)の雰囲気にも通じる、ドラマチックでジャジーなサウンドが聴きどころだ。

レコードジャケットにもコスモが映るなど、タイアップありきで制作されたこの楽曲は、作詞:来生えつこ、作曲:来生たかお、編曲:林哲司という作家陣。チャートに半年以上ランキングされるロングセラーとなり、1980年代にヒットを量産する来生姉弟の出世作となったほか、当時25歳のしばたに『NHK紅白歌合戦』の初出場をもたらした。企業色を嫌うNHKが紅白にCM曲を採用したのは筆者が知る限り、1977年が初めて。しばたの対戦相手はやはりCMタイアップで火がついた松崎しげるの「愛のメモリー」であった。

​​水晶のように煌めく都会の夜明けを描写した大橋純子「クリスタル・シティー」





続いては、しばたと同様、洋楽的なセンスと卓越した歌唱力でシーンを牽引した大橋純子のレパートリーから「クリスタル・シティー」(1977年)をお送りする。佐藤健(キーボード / 1979年に大橋純子と結婚)、土屋昌已(ギター)、見砂和照(ドラムス)ら腕利きミュージシャン7名によるバックバンド、美乃家セントラル・ステイションとともに制作されたアルバム『CRYSTAL CITY』の表題曲だ。

タイトルどおり、水晶のように煌めく都会の夜明けを描写した本作は翌1978年にシングルカット。タイトでグルーヴィーな美乃家の演奏と、日本人離れしたパワフルなボーカルは洋楽ファンからの支持も集め、大橋は着実にファンク・クイーンとしての評価を高めていく。のちに「たそがれマイ・ラブ」や「シルエット・ロマンス」が大ヒットしたため、メロウなポップスをしっとりと聴かせるイメージもあるが、本来はファンキーなバンドサウンドに乗せてソウルフルに歌い上げるのが彼女の真骨頂。実際、Spotifyでは「たそがれマイ・ラブ」や「シルエット・ロマンス」よりも「クリスタル・シティー」の方が再生されている。

その大橋は令和になって、1981年発表の「テレフォン・ナンバー」が人気を集め、Spotifyにおける再生回数が自身最多の5,100万回を突破した。シティポップ・ディーヴァとして再注目されていた2023年に他界したことが残念でならないが、今回は「クリスタル・シティー」で比類なき歌声を堪能していただきたい。

​​クールでダンサブルなサウンドに乗せて竹内まりやが歌う「プラスティック・ラヴ」





1970年代後半を彩った2曲のあとは、シティポップ再評価の火付け役とも言える竹内まりや「プラスティック・ラヴ」(1984年)をチョイスした。6作目にして初めて自作曲のみで構成したアルバム『VARIETY』に収録された同曲は、翌1985年に12インチシングル「PLASTIC LOVE(EXTENDED CLUB MIX)」としてリカット。当時はそれほど大きなヒットにはならなかったが、ファンの間では人気が高く、2010年代後半にYouTubeで非公式動画がバズったことで再注目されることとなった。

プロデュースと編曲は山下達郎で、演奏は山下(ギター、ピアノ、パーカッション、シンセサイザー、コーラス)のほか、青山純(ドラムス)、伊藤広規(ベース)、大貫妙子(コーラス)など、達郎組を中心とするトップミュージシャンが多数参加。華やかな都会の夜とは裏腹に、過去の恋のトラウマから空虚な恋愛(=プラスティック・ラヴ)を繰り返すヒロインの心情を、竹内はクールでダンサブルなサウンドに乗せて歌っている。

海外での人気を受けて2021年に再発された12インチのアナログ盤はオリコン週間5位をマーク。同時期に公開された公式MVは2026年5月までに7,200万回以上、Spotifyでは1億1,700万回以上、再生されている。リリースから40年以上経っても色褪せない、シティポップの象徴的作品と言っていいだろう。

​​山下達郎のライブの定番曲として長く親しまれている「LOVELAND, ISLAND」


まりやと来れば、次は達郎。4曲目は名盤『FOR YOU』に収録の「LOVELAND, ISLAND」(1982年)をお届けする。サントリービール「純生」のCM用に書き下ろされた同曲は、サンバとマイアミビートを融合したトロピカルなサウンドと、山下ならではの一人多重コーラスが爽快感をもたらす仕上がり。当時のキャッチコピー “夏だ、海だ、タツローだ!” を具現化したリゾートミュージックと言える。

山下自身によるギターカッティングも印象的な本作は2002年、楳図かずお原作の連続ドラマ『ロング・ラブレター〜漂流教室〜』(フジテレビ系)の主題歌に起用されたことを受けてシングル化。その際に、山下から楽曲提供されたこともある少年隊の東山紀之が出演したミュージックビデオも制作された。やはり『FOR YOU』に収録された「SPARKLE」や、代表曲「クリスマス・イブ」とともにライブの定番曲として長く親しまれているナンバーでもある。

この曲が世に出た1980年代初頭、円相場は1ドル200円〜250円の円安基調で、日本からの出国者数は年間400万人前後(バブル期の1990年に1,000万人を突破、2025年は1,473万人)。気安く海外に行ける時代ではなかったため、『FOR YOU』や、大滝詠一『A LONG VACATION』から想起されるリゾート地は憧憬の対象だった。

​​ラテンテイストのリゾートポップス、南佳孝「モンロー・ウォーク」





次に紹介する南佳孝「モンロー・ウォーク」(1979年)もそんな1曲。カリブ海のビーチで男たちの視線を集めながら腰を振って歩く妖艶な美女―― そんな映像が浮かぶラテンテイストのリゾートポップスだ。アルバム『SPEAK LOW』の先行シングルとしてリリースされた同曲は、作詞が来生えつこ、作曲が南自身、編曲が坂本龍一。演奏も坂本(ピアノ、シンセサイザー)、鈴木茂(ギター)、小原礼(ベース)、高橋幸宏(ドラムス)、ペッカーこと橋田正人(パーカッション)という強力布陣によって生み出された。

翌1980年、郷ひろみが「セクシー・ユー(モンロー・ウォーク)」のタイトルでカバーしたことから原曲にもスポットが当たり、シングルもアルバムもチャートを上昇。1973年のデビュー以来、初めてオリコンのトップ100にランキングされる出世作となる。南は1981年、「スローなブギにしてくれ」でブレイクを果たすが、その呼び水となったのがこのスマッシュヒットであった。

​​自由を謳歌する女性を活写した「思いきりアメリカン」





リゾートへの憧れをかき立てる楽曲としてはもう1曲、シティポップシーンを牽引する杏里の「思いきりアメリカン」(1982年)もお聴きいただく。本人が出演した花王のデオドラント剤「リマーラ」のCMに起用された10作目のシングルで、米国のリゾート都市サンタモニカを舞台に、自由を謳歌する女性を活写したポップチューンだ。

西海岸の乾いた風を思わせるクリアで爽やかな杏里のボーカルはCM効果もあって広く浸透。本作は彼女が夏や海をテーマにした路線にシフトするきっかけとなった。作詞は本人と竜真知子の共作、作曲はバックバンドのサポートメンバーだった小林武史。のちにヒットプロデューサーとして時代の寵児となる小林は当時22歳で、以後、本作の編曲を手がけた佐藤準の薦めもあって、アレンジャーとしても活躍の場を広げていく。

​​松任谷由実から提供された稲垣潤一「オーシャン・ブルー」





さて、後半はやはりリゾートを舞台にしながらも、男女の関係を官能的に歌った2曲からスタートする。稲垣潤一の「オーシャン・ブルー」(1984年)と山本達彦の「夏の愛人」(1985年)である。

前者は海辺のホテルで夜明けを迎えた恋人たちの情景を男の目線でとらえた楽曲。夜から朝へと移り変わる風景や、結ばれたあとの余韻や希望が、転調を駆使したメロディとドライヴ感のあるサウンドで表現されている。松任谷由実から提供された本作はファンハウス移籍後の第1弾アルバム『Personally』の先行シングルとしてスマッシュヒットを記録。ユーミン自身も2003年のアルバム『Yuming Compositions: FACES』でセルフカバーしているので、聴き比べてみるのも一興だろう。

一方、後者は夏の夜の海やプールで展開される道ならぬ恋を艶めかしく描いたアーバンポップス。愁いを帯びた山本のメロディに、売野雅勇らしい大胆でソフィスティケートされた歌詞が乗り、ヨーロッパの恋愛映画を観るような味わいがある。味の素ゼネラルフーヅ(現:味の素AGF)のコーヒー「カフェスタ」のCMに使用された本作は山本最大のヒットシングルとなり、“シティポップ界の貴公子” と呼ばれた彼のイメージを決定づけた。

​​スタイリッシュな世界観で最大のセールスを記録した「ふたりの夏物語 」





続く2曲は1980年代を席巻したオメガトライブのプロジェクトからセレクトした。まずは杉山清貴&オメガトライブの「ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMER」(1985年)。夜のマリーナで出会った男女の駆け引きを、杉山の伸びやかで清涼感のあるボーカルで歌ったサマーアンセムだ。日本航空のパッケージツアー「JALPAK」のCMタイアップを前提に制作された同曲は、杏里「悲しみがとまらない」や中森明菜「北ウイング」など、数々のヒットを手がけた康珍化(作詞)と林哲司(作曲・編曲)のゴールデンコンビによるもの。こんな恋をしてみたいと思わせるスタイリッシュな世界観で、“杉オメ” 最大のセールスを記録した。

もう1曲はカルロス・トシキ&オメガトライブの「アクアマリンのままでいて」(1988年)である。杉オメの解散後にカルロス・トシキを新ボーカルに迎えたオメガ・プロジェクトは作家陣を一新。シンセサイザーを多用した煌びやかなサウンドと、カルロスの少年性を感じる甘いボーカル、そしてグラミー賞受賞歴があるジェリー・ヘイによるアーバンなホーンアレンジが一体化した本作は、前身の1986オメガトライブからメインライターとなった売野雅勇(作詞)と和泉常寛(作曲)のタッグで誕生した。

同曲はW浅野(浅野温子、浅野ゆう子)主演で話題を呼んだトレンディドラマ『抱きしめたい!』(フジテレビ系)の主題歌として制作され、オリコン最高3位のヒットを記録。作曲の和泉は、プロデューサーの藤田浩一から “カルロスのセンチメンタルな味を出してほしい” との要請を受けて創作したという。

​​8月の東京を描いた今井美樹のサマーチューン「TOKYO 8月 サングラス」


ここまで10曲の「ラグジュアリーなシティポップ」を紹介してきたが、エンディングには今井美樹の「TOKYO 8月 サングラス」(1989年)を配することにした。

真夏の都会をコンセプトにしたアルバム『MOCHA under a full moon』の冒頭を飾る同曲は戸沢暢美(作詞)と佐藤準(作曲・編曲)のコンビによる、文字どおり8月の東京を描いたサマーチューン。メロウなバラードを得意とする今井には珍しい、打ち込み主体のダンサブルなサウンドで聴く者のテンションを上げてくれる。気象庁の暖候期予報によると、2026年の夏も平年より気温が高い猛暑となる見込みらしいので、この曲を聴いて乗り切りたいところだ。

ちなみに歌謡ポップスチャンネルでは今年デビュー40周年を迎える今井の特集を5月末より実施予定とのこと。珠玉のライブ映像など、さまざまな番組が放送されるそうなので、シティポップのファンはそちらもチェックしていただきたい。


Information
Re:minder SONG FILE「冬を彩る80'sアイドルソング」



ココロ躍る音楽メディア「Re:minder」がテーマを決めて珠玉のソングファイルをお届け
▶︎ 放送局:歌謡ポップスチャンネル
▶︎ 放送日時:
・2026年5月27日(水)24:00〜25:00
・2026年6月04日(木)24:00〜25:00
▶︎ 今月のソングファイル
♪ マイ・ラグジュアリー・ナイト / しばたはつみ
♪ クリスタル・シティー / 大橋純子 & 美乃家セントラル・ステイション
♪ プラスティック・ラヴ / 竹内まりや
♪ LOVELAND, ISLAND / 山下達郎
♪ モンロー・ウォーク / 南佳孝
♪ 思いきりアメリカン / 杏里
♪ オーシャン・ブルー / 稲垣潤一
♪ 夏の愛人 / 山本達彦
♪ ふたりの夏物語 NEVER ENDING SUMMER / 杉山清貴&オメガトライブ
♪ アクアマリンのままでいて / カルロス・トシキ&オメガトライブ
♪ TOKYO 8月 サングラス / 今井美樹
▶︎ 番組ページ:Re:minder SONG FILE

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2026.05.20
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濱口英樹
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