バンドやアーティストを二つ並べて比較するのはよくあるロックの習慣だ。それで自分はどっち派かなんて、口角泡を飛ばして議論する。
ビートルズかストーンズかとか、クラッシュかピストルズかなんて、それで何となく趣味や好みが伝わって自然と話が盛り上がる。80年代にもそんな組み合わせが無数にあった。
マドンナの「ボーダーライン」がよろよろと全米チャートを上昇してきた頃には「ハイスクールはダンステリア」のシンディ・ローパーと比較され、「カーマは気まぐれ」と妖艶なPV(プロモーション・ヴィデオ)で注目されたカルチャー・クラブは「ユニオン・オブ・ザ・スネイク」でブレイクするデュラン・デュランとセットで語られていた。
そんな当時にもマイケルとプリンスのカップルは特別だった。売り方も表現も、違いばかりが際立っていた。
マイケルが「スリラー」や「今夜はビート・イット」で映画のようなPVを制作させれば、「ビートに抱かれて」でリスナーの心を鷲掴んだプリンスは『パープル・レイン』をオリジナル・サウンドトラックにして映画そのものを撮らせた。
『スリラー』がマイケルの写るピクチャーディスクで売り上げを伸ばせば、『パープル・レイン』は初回限定版を紫一色のビニールディスクにして購買意欲をそそった。
ところで僕はプリンス派、大ヒットシングルの詰まった『スリラー』ではなく、『パープル・レイン』ばかりを聴いていた。重低音が好きな僕なのに、ベースの入らないリズムトラックのような「ビートに抱かれて(When Doves Cry)」をかけては、数え上げるように歌詞を唱えるプリンスの声に息を呑んだ。
「ダーリン・ニッキー」の最後ではプリンスの声が逆さまに録音されていて、DJがやるようにレコード盤を手で逆回ししないと言葉が聞き取れない、そんな遊び心に胸をときめかせた。
強烈なセックスアピール、紫やペイズリーの風変りな好みなど話題性の先行しがちなプリンスだったけど、そんな世間のイメージなんてどうでもいい。今日も僕は、30年来大切にしているあの紫盤に針を落とし、あの頃のプリンスを想い出すことにしよう。
2016.04.25
YouTube / CNN
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