11月3日

世界的に有名な【年越し&新春ソング TOP5】新暦の正月ををこんなに祝うのは日本だけ?

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連載【教養としてのポップミュージック】vol.16 / 世界的に有名な【年越し&新春ソング TOP5】新暦の正月ををこんなに祝うのは日本だけ?

毎年のことながら12月26日になると驚いてしまうのだが、ここ東京では、まるで前日までが嘘だったかのようにクリスマスの飾りつけが一斉に撤去されてしまう。そして、鏡餅、しめ縄、門松などを飾りはじめ、正月モードに突入するのである。この光景を見るにつれ、クリスマスが多くの日本人にとって、所詮は輸入文化に過ぎないんだということを思い知らされる。

そもそも日本では “盆と正月” という言い回しがよく使われるように、年中行事の中で最大かつ最重要なのが盆と正月である。中でも、新盆(7月盆)と旧盆(8月盆)のように地域によって時期が異なる盆行事とは違って、“お正月” は1月1日(元日)を中心に日本全国でほぼ一斉に祝われている、同時多発的・全国網羅的・国民的イベントである。

ということで、今回は “お正月” に焦点を当てて、日本のみならず、世界が正月をどのように迎えているか探っていきたいと思う。まずは、米英の主要音楽メディアを参考に世界的に有名な《年越しソング&新春ソング》のTOP5を選んでみたので、ご覧いただきたい。

世界的に有名な年越しソング&新春ソングTOP5


【第5位】 プリンス「1999」
1982年にリリースされた5枚目のアルバム『1999』のタイトル曲。実はこの曲は年越しソングでもなんでもないのだが、大晦日によく流れている印象がある。発売当時、17年後の1999年に “世界が終わるかもしれない” という予言が巷に溢れており、そんな漠然とした恐怖を感じながらも “世紀末を踊り明かそう” といった内容の楽曲である。実際、曲中では 「♪So tonight I'm gonna party like it's 1999」(だから今夜は1999年みたいにパーティーするんだ)というメッセージが繰り返されている。



【第4位】 U2「ニュー・イヤーズ・デイ」
スティーヴ・リリーホワイトをプロデューサーに迎え、彼らの出世作となったサードアルバム『WAR(闘)』のリードシングルとして1983年にリリース。雪原の中を馬に乗って駆け抜けるミュージックビデオが印象的だが、実は、東西冷戦下のポーランドで共産党政権に抵抗して民主化を推進した自主管理労働組合 “連帯”(Solidarity)について書かれた、政治色の強い作品である。偶然にも発売直前の1月1日にポーランドで戒厳令が解かれ、“連帯” を率いたレフ・ワレサ委員長(現在の表記はレフ・ヴァウェンサ。後の大統領)は、同年12月にノーベル平和賞を授与された。



【第3位】 イーグルス「ファンキー・ニュー・イヤー」
1978年リリースのシングル「ふたりだけのクリスマス」(Please Come Home For Christmas)のB面に収録。新春にしこたま飲みすぎて、二日酔いで具合の悪さが最高潮!という内容のこの曲、当時のイーグルスとしては珍しい1コード一発のファンクチューンだ。歌詞とサウンド、そしてドン・ヘンリーのハスキーな歌声が上手くかみ合ってファンキーさを醸し出している。名盤『ホテル・カリフォルニア』(1976年)から『ロング・ラン』(1979年)にかけての端境期に生まれたことで、あまり知られていないが、もしかしたら隠れた名曲と言えるかもしれない。



【第2位】 マライア・キャリー「オールド・ラング・サイン(ニュー・イヤーズ・アンセム)」
マライア・キャリーにとって13枚目のスタジオアルバムであり、2枚目のクリスマスアルバムでもある『メリー・クリスマスⅡユー』に収録。タイトルの「オールド・ラング・サイン」はスコットランド語だが、訳すとしたら “久しき昔”(old long since)と言ったところか。原曲は「蛍の光」として知られるスコットランド民謡で、マライアはこれを年末のパーティーソングとして仕上げた。ただ、このアレンジは良く言えばモダンでスタイリッシュかもしれないが、僕には少々押し付けがましくて品がない印象だ。2010年リリース。



【第1位】 アバ「ハッピー・ニュー・イヤー」
1980年にリリースされた7枚目のアルバム『スーパー・トゥルーパー』に収録。当初はシングルヒットした「ザ・ウィナー」(The Winner Takes It All)や「スーパー・トゥルーパー」の陰に隠れた印象だったが、今では欧州の一部で新年の定番ソングとして浸透しているらしい。実は制作の途中まで「Daddy Don't Get Drunk On Christmas Day」(お父さん、クリスマスの日に酔っ払わないでね)というタイトルが付けられていたというから面白い。最終的には、透明感が溢れて、神聖な雰囲気を醸し出す、見事な作品に仕上がった。



日本人にとっての年越し&新春とは程遠いイメージ


さて、これらの楽曲を聴いた(観た)人はきっと感じたのではないかと思うが、どの曲も多くの日本人にとっての《年越し&新春》とは程遠いイメージだ。そもそもプリンスとU2は楽曲のテーマが正月ですらないし、イーグルス、マライア・キャリー、アバの各曲はクリスマスの延長線上と言うか、いかにも “おまけ” 的な感じである。

実際、欧米各地の年末年始は、大晦日にカウントダウンパーティなどで盛り上がるイメージはあるものの、それ以上でも以下でもない印象だ。おそらく元日は “祝日の1つ” でしかなく、1月2日からは通常運転のことが多いので、日本ほどの特別感はないのだろう。

では、日本の正月文化とは何だろう。そもそも “お正月” は、祖先への祭事をして、1年の農業の豊作と家庭の平安を求めるという意味の祝日なので、完全に農耕民族的行事だと言える。その点で、アジアのモンスーン地帯、特に東アジアや東南アジアの国・地域との共通点が非常に多い。しかし、その中にあって、日本は旧正月を祝う風習のない数少ない国である。

日本でも旧正月の時期に祝われていた


実はその昔、日本でも中国や韓国と同様に旧暦(太陰太陽暦)が使われていて、お正月も旧正月の時期である1月下旬〜2月中旬に祝われていた。それが1872年(明治5年)に “改暦” を行い、西洋流の新暦(太陽暦・グレゴリオ暦)に切り替えた。以後、旧正月の風習は次第に廃れていったのだそうだ。旧正月は旧暦、即ち月の満ち欠け(月齢)を基準にしているので、毎年日付が変わるというのは、皆さんもご存じだろう。ちなみに2026年は “2月17日” である。

旧正月は、中国では “春節”(Chinese New Year)、韓国では “ソルラル”(Korean New Year)、ベトナムでは “テト”(Tết)と呼ばれており、これらの地域では1年で最も盛り上がりを見せる時季である。裏を返すと、新暦の大晦日や元日はあまり重視されていないことになる。似たような現象は、ベトナム以外のメコン諸国でも見られる。

例えば、タイの正月は “ソンクラーン”(Songkran)と呼ばれ、バラモン陰暦(ヒンドゥー教文化の影響を受けた東南アジアの伝統的な暦)の元旦に当たる日を挟んだ4月13日~15日が3連休となっている。また、この時季は1年で最も暑さが厳しいこともあって、人々が水を掛けあって楽しむ恒例行事 “水掛け祭り” としても親しまれている。カンボジアの“チョール・チュナム・トメイ”(Choul Chnam Thmey)、ラオスの “ピーマイラオ”(Pi Mai Lao)、ミャンマーの “ティンジャン”(Thingyan)も各地の正月を意味しているが、タイと同じく4月中旬に “水掛け祭り” が行われている。

日本の年末年始にふさわしい海外の楽曲はあるのか?


ここまで見てきて言えるのは、現在のポピュラー音楽の3大市場である北米、西欧、東アジアのうち、北米と西欧の最も重要な年中行事はクリスマスであり、日本を除く東アジアの国・地域のそれは旧正月であるということだ。つまり、新暦の “お正月” を最重視しているのは日本くらいなので、日本人のイメージに合う《年越しソング&新春ソング》を海外の楽曲に求めるのは、そもそも無理ゲーなのである。

つまり、日本の年末年始にふさわしいBGMを選びたいのなら、J-POPの中から見つけるしかないのだ。だから、日本の音楽を聴く習慣がすっかり失われてしまった僕のような人間でも、一応は日本生まれ・日本育ちで日本国籍を持っているので、年末年始くらいは 『NHK紅白歌合戦』でも観て、日本的に “お正月” を迎えようと考えている。

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2025.12.27
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カタリベ
1965年生まれ
中川肇
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