【第8位】ワンダフル・クリスマスタイム / ポール・マッカートニー 1979年にシングル盤としてリリース。2枚目のソロアルバム『マッカートニーⅡ』のセッションの際に彼が1人で全パートを演奏して録音されたが、アルバムには収録されていない。それまでの彼の作品にはなかったテクノポップ調の楽曲で、歌詞にメッセージ性が全くないことから、当時はメディアに批判されることが多かった。それにしても、淡々としたサウンドに乗せて「♪Simply having a wonderful Christmastime」(ただ楽しもう、素敵なクリスマスのひと時を)と歌う様が何だか寂しそうに感じるのは、気のせいか。
【第6位】ハッピー・クリスマス(戦争は終った)/ ジョン&ヨーコ/プラスティック・オノ・バンド ジョン・レノンとヨーコ・オノの共作により1971年にシングル発売。英国では契約上の問題で翌1972年にリリースされた。この作品はベトナム戦争の真っ只中に書かれ、曲の後半に「♪War is over, if you want it」(あなたが望めば、戦争は終わる)の大合唱が繰り返されることから判るように、完全な “反戦歌” である。しかし、そもそも単純に良い曲だったこともあり、時間が経つにつれて多くの人々がそのことを意識せずに味わってきたような気がする。それは、天国のジョンにとって本意だったかどうか…。
【第5位】ニューヨークの夢(Fairytale Of New York)/ ザ・ポーグス 1987年にシングルリリースされ、アルバム『堕ちた天使』(If I Should Fall From Grace With God)にも収録。この曲は、夢を抱いてニューヨークへやってきたアイルランド移民の夫婦の物語だが、特に英国ではクリスマスソングとして人気が高い。ただ、後半の掛け合いは汚い言葉の応酬で、冴えない現実をお互いのせいにして罵り合う。そのせいか、米国の音楽誌『ビルボード』はこの曲を “Christmas Music for People Who Hate Christmas Music”(クリスマスミュージックが嫌いな人のためのクリスマスミュージック)の1つに選んだ。
【第3位】ラスト・クリスマス / ワム! 1984年にシングル盤がリリース、後に12インチバージョンがアルバム『エッジ・オブ・ヘヴン』(Music From The Edge Of Heaven)に収録された(日米のみで発売)。一応、ワム!名義にはなっているが、実際にはジョージ・マイケルが1人で作詞・作曲し、トラックを制作・録音した。それから32年後の2016年12月25日、この曲が世界中で流れる中で彼の訃報が伝えられたのは、はたして運命だろうか。ちなみに、このタイトルは “去年のクリスマス” という意味で、決して “最後のクリスマス” ではないので、念のため。
【第2位】ロッキン・アラウンド・ザ・クリスマス・ツリー / ブレンダ・リー “ロックの殿堂” 入りシンガーであるブレンダ・リーが、まだ13歳だった1958年にリリースした曲。当時はそれほどヒットしなかったが、30年ほど経った1990年、映画『ホーム・アローン』の劇中で流されたことで新世代にも一気に浸透していく。そして2023年、全米シングルチャート(Billboard Hot 100)で1位を獲得。発売から65年が経っていた。既に78歳の彼女は、全米1位に輝いた史上最高齢のアーティストになった。なお、このミュージックビデオは、今の彼女が少女時代の声を口パクする形で制作されている。
【第1位】恋人たちのクリスマス(All I Want For Christmas Is You)/ マライア・キャリー 4枚目のアルバム『メリー・クリスマス』のリードシングルとして1994年にリリースされ、25年後の2019年に全米シングルチャートで遂に1位を獲得した。まさにクリスマスソングの現代版スタンダードである。日本では1994年秋放送のTVドラマ『29歳のクリスマス』(フジテレビ系)の主題歌に起用されたことでも知られている。当時、僕はちょうど29歳になったばかりのタイミングだったので、同年代の友人たちとドラマの展開を毎週かかさず話題にしていたのだが、今思い出すとちょっと恥ずかしい。
ところが、そんな彼ら彼女らは、クリスマスソングを歌っているからといって、一生敬虔なクリスチャンであり続けるかというと、実は全くそんなことはない。むしろ、大人になってからの宗教観は割とバラバラだ。よく知られているように、ジョン・レノンはザ・ビートルズ時代に “We're more popular than Jesus”(僕たちはキリストより人気がある)と発言して物議を醸したし、ソロになってからは 「♪I don't believe in Jesus」(キリストなんて信じない)、 「♪Imagine there's no religion」(想像してごらん、宗教なんて無いんだと)と歌った。アリアナ・グランデは、元々はカトリック教徒だったが、現在は神秘主義的なユダヤ教の一派である “カバラ”(Kabbalah)の教えを信仰しているという。