2019年 12月1日

マイケル・ジャクソンにとって「スリラー」の成功とはいったい何だったのか?

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マイケル・ジャクソンのアルバム「スリラー」が米国でリリースされた日
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photo:SonyMusic  

アイデンティティ・クライシス? マイケル・ジャクソンにそんなものはない


精神医学で「バーンナウト」いわゆる「燃え尽き症候群」という言葉がある。

それこそ生涯の目標としていた何かを成し遂げ、何事もやり尽くしてしまった時、そこまでの過程がつらく険しい道であればあるほど、次の目標を見出せなくなりモチベーションを失ってしまうことがある―― それは、自分が何者でどこへ向かっているのかを見失ってしまう一種の「アイデンティティ・クライシス」だ。

過去の偉大なアーティストやアスリートにおいても、その呪縛から逃れられなかった例は少なくない。また本人はそう思っていなくても、常に過去の最高傑作と比較され「あぁ、あの人もピークを過ぎたね」などと、しばしば過去の人扱いされる羽目になる。

マイケル・ジャクソン『スリラー』の成功はポップミュージックにおける金字塔である。これだけのことを成し遂げて、マイケルは自身の何かを変えてしまったのだろうか。彼にとって『スリラー』とは一体何だったのだろう。

我々が見てきた、その後のマイケルの創作活動からは、些かも衰えることのない意欲が感じられた。果たして『BAD』や『デンジャラス』が楽曲的に『スリラー』の収録曲たちに劣るかといえば決してそんなことはない。ダンスパフォーマンスだって、どのバックダンサーよりも鋭いキレを見せていたのがマイケルではなかったか。

『ビリー・ジーン』のパフォーマンスで初披露した “ムーンウォーク” 以降も “ゼロ・グラヴィティ” やスーパーボールのハーフタイムショーで見せた “フリーズ” など、いつだって我々を驚かせるパフォーマンスの開発に余念がなかった。

そもそも『スリラー』は、エピック移籍後に彼がソロで出したアルバムとしては、まだ『オフ・ザ・ウォール』に次ぐ2枚目のアルバムに過ぎない。かつてジャクソン5としてデビューしたモータウンを離れたのは、自らの作品をパフォーマンスする機会を得られなかったからであり、その彼がたった2枚のアルバムで何かをやり終えたような気持ちになるとは、到底思えない。燃え尽きるわけがないのだ。



敢えて被った “変人の仮面”


しかし誰もが知る彼の晩年(50才で亡くなった彼に晩年などないと思うが…)、とにかくその成功に群がる者たちも多く、必要のない訴訟に巻き込まれたりしてマイケルは疲弊していってしまう。「性的虐待疑惑」に関連して飛び交った情報はマイケルに不利なものばかりで、少年愛や彼の自宅「ネバーランド」になぞらえて大人になりたくないと願う心の病「ピーターパンシンドローム」であるかのような疑惑が掛けられたこともある。

加えて容姿の変化についても常に奇異の目で見られていた。著しく鼻の形が変わったり、年々白くなっていく肌の色やストレート気味の毛質についても「コンプレックスの固まり」「黒人であることの忌避」とか、否定的な見方をされることが多かった。

日本国内でも例外ではなく、かつて松本人志がテレビ番組の中でマイケルのインタビューの内容について口調をまねながら「ボクは肌の色が白くなるビョーキなんだ… なぁんて、そんなんあるワケないやろ」などと話していたのを覚えている。これはマイケルがオプラ・ウィンフリーの番組で自らの持病である尋常性白斑について語った時のことに触れた発言だが、多くの人が松本と同じ感想を持ったことだろう。かくして “マイケル=ちょっと変わった人” のイメージが出来上がっていった。

マイケル自身もよせばいいのに子役スターを身近に置いたり、サルを飼ったり、我が子を窓から突き出すような真似をしたりして、奇行にも取れる言動を重ねていった。メディアが騒ぎ立てるのをひょっとしたら楽しんでいたのかも知れないし、敢えて変人の仮面を被ることで本来の自分を取り戻そうとしていたのかも知れない。

巨万の富を得た一方で深めた孤立


彼のかつての妻リサ・マリーは彼の周辺に集う人物たちに対して懐疑的であった。彼女が言うところの「彼の血を吸い取るような人達」との関係もマイケルの運命を狂わせていく。

『スリラー』は彼に巨万の富をもたらしたかも知れないが、同時にそのような輩を引きつけ、その失敗から莫大な負債を負うことになってしまう。中でもビートルズの著作権買収は世界中のリスナーたちを敵に回したことだろう。「誰か知らない者の手に渡るぐらいなら、自分が保護すべきだ」との使命感に駆られての行動だったかも知れないが、結果的にアルバムで共演した盟友ポール・マッカートニーとも疎遠となり(のちに和解)、ますます孤立を深めていく。

『スリラー』の成功以後、彼の歩んだ道について語るとき、このような負の歴史について触れることは避けられないだろう。まるで『スリラー』がマイケルの人生を狂わせてしまったかのようにも見える。それは彼の人生に災いをもたらすスリラー(=怪談)の始まりだったのだろうか。

今こそマイケル・ジャクソンの偉大な業績に正当な評価を!


もし『スリラー』がなかったら?

マイケルはまだ健在で2年に一度はアルバムを制作し、それをきっかけにして精力的に世界を回り、反差別と世界平和のメッセージを送り続けているだろうか。

否、マイケルほどの才能にあふれた人間であれば『スリラー』がなかったとしてもきっと同じように成功を収め、彼の気の赴くままに人生をわたって行くことだろう。彼の持病は真実であったし、骨折による鼻の整形も、頭皮の体質を変えたという火傷の治療も、全て正当な理由の元でやむを得ず行われたもので、白いメイクも白斑によるまだら肌を隠し、スターの尊厳を守るためのものであった。

『スリラー』がなくても何も変わらなかったのかも知れない。だがもし再び彼がこの世に現れるのであれば、彼を追い込んだメディアもリスナーである我々も彼の偉大な業績を正当に評価すべきだろう。

昨年終了した日本テレビの番組『有吉反省会』でゲストが過去の様々な反省の弁を読み上げる際、バックで流れていたのは「ユー・アー・ナット・アローン」。もしマイケル本人があの番組に現れたら、何か反省すべきことがあっただろうか。マイケルの優しい歌声は、まるで彼を追い込んだ我々に対して反省を促しているようである。





※2017年12月7日、2018年8月29日に掲載された記事をアップデート

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2022.12.04
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  YouTube / michaeljacksonVEVO


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ultratoy
マイケルのscream album 大好き。
2018/09/22 18:43
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カタリベ
1965年生まれ
goo_chan
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