自身のキャリアとして最大の売り上げを記録した藤井フミヤ「TRUE LOVE」
「TRUE LOVE」はフジテレビ系月9ドラマ『あすなろ白書』主題歌としてリリースされ、オリコン1位、そしてチェッカーズ解散後のソロデビューシングルとして、自身のキャリアとして最大の売上枚数200万枚を超えた楽曲です。
当時人気だった、芸能人や有名人が提供する商品を参加者達が競り合い落札する、フジテレビ系公開オークションバラエティ番組『とんねるずのハンマープライス』にも「藤井フミヤさんが結婚式披露宴で『TRUE LOVE』を歌ってくれる権利」が出品され、123万で落札されるなど、ウェディングソングとしても人気でした。「何度、結婚式で歌ったか分からない(笑)」とフミヤ自身も語っています。よくよく歌詞を読むと、別れの歌、もしくは叶わなかった恋の歌では? と思うのですが。
時代を彩ったメガヒットラブソング「TRUE LOVE」ですが、92年にチェッカーズは解散、しばらく海外でゆっくり過ごそうと思っていた矢先に、フジテレビ系月9ドラマ『あすなろ白書』主題歌としてのオファーがあったそうです。
チェッカーズ解散後に当時ロサンゼルス在住、英国のロックバンド “シンプリー・レッド” でもドラムを担当していた屋敷豪太の誘いで渡米し、購入したギブソンのアコースティックギター「B-25」。これを用いて最初に作曲された曲が「TRUE LOVE」です。ギブソンの「B-25」は小ぶりなギターですし、自宅で作曲するために購入したのではと思います。
素直かつ柔らかな歌。普遍的かつ王道。大衆の心を掴んだラブソング
チェッカーズ時代から作詞はしていたものの、作曲としては初の作品、かといってそこまで力んだ感じもしません。どちらかと言えば、ポロポロとギターを弾いていたら出来ちゃった、そんな事を感じさせる、素直かつ柔らかな “歌” です。そこが見事、ラブソングとして大衆の心を掴んだのではと思います。
歌詞にしても、もともと『あすなろ白書』の作者でもある「柴門ふみ」とも親交があり、原作も読んでいたというだけあって、ドラマにピッタリの歌詞です。
君だけを見つめて
君だけしかいなくて
僕らはいつも
はるかはるか遠い未来を
夢見てたはずさ
シンプルな歌詞に気負いの無いメロディー、ドラマの人気との相乗効果ももちろんあったと思いますが、ヒットするべくして産み出された名曲だと改めて感じます。
個人的にはチェッカーズの解散後は自身のルーツである50’sの空気を詰め込んだ、ドゥーワップやロカビリーテイストの楽曲やアルバムを制作するのかな? と思っていただけに、正直「ど真ん中直球のラブソング」のリリースには驚きました。
また、時代の先端の空気を敏感にキャッチするアンテナを持っていそうな人ということをチェッカーズ時代から筆者は感じ取っていたので「普遍的かつ王道」のこの楽曲に新鮮さを感じたのも確かなことです。
「TRUE LOVE」は藤井フミヤ過去との決別の歌なのか?
巨大なポップモンスターでもあったチェッカーズ。地元である、九州は久留米から一緒に仲間と上京し「東京で一旗上げるばい!」と本意では無かったであろうアイドル路線での売り出しもこなして、成功を手にしました。確かにチェッカーズは、あの衣装と髪型ありきの成功だったと思います。
その成功によるしがらみや、膨らんでしまったプレッシャーから、チェッカーズの解散によって解放された藤井フミヤが、海外でゆったりと小ぶりなギブソン「B-25」を軽く鳴らしながら作ったであろう「TRUE LOVE」。CD化されたオリジナル音源では落ち着きのある上品で煌びやかな、ギブソン「66年製 J-50」を使用し録音されています。この名器ならではのアコースティックな音色が青春の光と影を演出します。
編曲は、山下達郎など数多くのアーティストに起用されているギタリスト、佐橋佳幸が担当。アコースティックギターメインの素朴なアレンジにしたのも、この楽曲の持つ、素直さと歌を打ち出したかったからではないでしょうか。サビとギターソロの12弦ギターも絶品です。
僕らはいつも
はるかはるか遠い未来を
夢見てたはずさ
夢見てたはずさ
これは解散したチェッカーズの仲間に送ったメッセージでもあるのかと深読みしてしまうのは考え過ぎでしょうか、もしそうであるならば「TRUE LOVE」は藤井フミヤの過去との決別の歌であるのかもしれません。
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2022.11.10