10月27日

まるでコインの裏表? プリンスの「1999」とマイケル・ジャクソンの「スリラー」

25
1
 
 この日何の日? 
プリンスのアルバム「1999」がリリースされた日
この時あなたは
0歳
無料登録/ログインすると、この時あなたが何歳だったかを表示させる機能がお使いいただけます
▶ アーティスト一覧

 
 1982年のコラム 
考察:関東関西まぜて彩る、上田正樹の「悲しい色やね」

歌が大好きだった父、阿久悠の書いた「居酒屋」と甘いキャンディーの記憶

木の実ナナ&五木ひろし「居酒屋」デュエット曲として40年間も愛される理由

中森明菜「バリエーション〈変奏曲〉」曲ごとにニュアンスを変えたリアルな表現力

中森明菜「バリエーション」聖子やユーミンの世界とは異なる80年代の青春

偉才の作曲家・萩原哲晶が晩年に挑んだ「イエロー・サブマリン音頭」

もっとみる≫



photo:Warner Music Japan  

語り伝えによると、1982年、当時マイケル・ジャクソンのプロデューサーであったクインシー・ジョーンズは『スリラー』の録音セッションも終盤に入る頃、ほぼ同時期に発売となるプリンスの『1999』のデモテープを手にスタジオに入って来るなりこう言った。

「君のシンセもこんな風でなきゃ!」

2016年4月にプリンスの訃報に接して、幾つか追悼記事を斜め読みしていた。そこで眼にしたのがこのエピソードだ(フランスの日刊紙『ル・モンド』2016年4月22日付。ステファヌ・ダヴェによる記事より)。

プリンスのファンならすでに常識なのかもしれないし、そもそも僕には出元がわからない。でもこれを読んで僕は思わず頷いた。

この記事では2009年にこの世を去ったマイケルによる「世界中どこでも通じる音楽」との比較がなされ、プリンスの芸術性と影響について論じられていた。

プリンスは80年代にリズムの純化とデジタル化に並々ならぬ関心を抱き創作に取組んでいた。その影響はベックやファレル・ウィリアムスといった個々のミュージシャンにとどまらず、R&Bやヒップホップなどのジャンルにまで及ぶ… 云々。

でも僕の気を惹いたのは、プリンスについて語る時、やはりフランスでも、それもごく自然にマイケルを引き合いに出してくることだった。

1982年のことだから当たり前なのだが、『パープル・レイン』ではなく『1999』なのも面白い。

『1999』の打ち込みを多用したリズムトラック、シンセサイザーの鮮烈な音、ひたすら繰り返される単調なメロディラインは確かに一度聴いたら耳から離れない。

僕にしてみればあの独特な歌声と叫びより、はたまた「リトル・レッド・コルヴェット」の隠微な歌詞より、シンセばかりが記憶に残るアルバムだった。

省みて、このシンセの音こそが80年代幕開けにふさわしい… なんてうそぶいても通りそうだ。

そして誰もが『スリラー』を持ち出してくる。ほぼ全曲がシングルカットされた『スリラー』は、誰もがどの曲でも口ずさめる極上のポップアルバムで売り上げも記録的。

でも「今夜はビート・イット」や「ビリージーン」を聴いて咄嗟にシンセの音を想い浮かべる人がどれだけいるだろう。

商業的には『スリラー』の足下にも及ばないアルバムからのシンセの影響なんて誰も気にしなくてもいいはずなのに、やっぱりみんなプリンスとマイケルを比較する。まるで是が非でもそうしなくてはならないかのように。

それで僕も思わず頷いたのだった。


※2016年4月29日に掲載された記事をアップデート

2019.10.27
25
  YouTube / Prince


  Apple Music


  Apple Music
 

Information
あなた
Re:mindボタンをクリックするとあなたのボイス(コメント)がサイト内でシェアされマイ年表に保存されます。
カタリベ
1970年生まれ
ジャン・タリメー
コラムリスト≫
48
1
9
8
3
まだ天才と呼ばれていなかった頃のプリンス、そのエロに導かれて
カタリベ / ソウマ マナブ
18
1
9
9
4
【ミリオンヒッツ1994】90年代はCDバブル!売れに売れた洋楽オムニバスアルバム「MAX」
カタリベ / KARL南澤
252
1
9
8
2
ロニー田中は見た!エディ・ヴァン・ヘイレンがカバーしたハトヤホテルのテーマ♪
カタリベ / ロニー田中
25
1
9
8
5
80年代のポップソングをクールにカヴァーする男、マイルス・デイヴィス
カタリベ / DR.ENO
20
1
9
8
1
共有感満載の80年代洋楽ヒット!ビルボード最高位2位の妙味 vol.12
カタリベ / KARL南澤
32
1
9
8
3
ビート・イット / アルバム「スリラー」から生まれた名作ミュージックビデオ
カタリベ / DR.ENO