12月17日

カバーアルバム「ナツメロ」小泉今日子がプロデュースした豪華な文化祭ステージ

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小泉今日子プロデュースのカヴァーアルバム「ナツメロ」


バンド演奏は文化祭や学園祭の華だ。80年代、有名な大学でプロのミュージシャンによる演奏が学園祭の売りになっていたものだったが、大学の特設ステージ以外で行われる学生たちの演奏も面白かった。自分の学校の学園祭は行かなくても、友達の学校で面白いステージをやるから来いと誰かから誘われて、ほないこか、ということはざらにあったものだ。

1988年の暮れにキョンキョンがリリースしたカヴァーアルバム『ナツメロ』は、まさにそんな、文化祭や学園祭のバンド演奏の香りがするアルバムで、キョンキョン本人がプロデュースした。

13曲入り、46分のCD1枚を聴いて最初に思ったのは、「これは文化祭だ!」

キョンキョンの1学年上の野村義男さん、ヨッちゃんをはじめとして、小澤亜子(ZELDA)、渡辺英樹(C-C-B)、西村麻聡(FENCE OF DEFENSE)らのメンバーが楽しく学校のステージに立っている姿が見える。肩を抜いたキョンキョンのヴォーカル、心底楽しそうに歌っている。同年代や少し上のミュージシャンたちとワチャワチャ言いながら楽しく作っていた場面を想像すると、聴いているこちらも楽しくなる。キョンキョンがいろんなコスプレを披露しているジャケットや、手作り感のある版画風の歌詞カードもどこか懐かしく楽しい。

野村義男BAND、井上ヨシマサBAND、怪獣大図鑑BANDをかけもち


3つのバンドをかけもちするキョンキョン。野村義男BANDがメタル寄りで、せーの!で一発録りライブ感満載のロック感なら、井上ヨシマサBANDはキーボード中心で、80年代までの洋楽をいろいろ盛り込んだ、いわば “なんでもあり”。怪獣大図鑑BANDは当時のキョンキョンのツアーメンバー。

キョンキョンより1学年上の野村義男さんは、たのきん時代のアイドル現場でも一緒だったが、レコード会社が同じで1986年頃からは彼女の作品の制作にもかかわっている。キョンキョンより1学年下の井上ヨシマサさんは1979年にテクノポップバンド “コスミック・インベンション” でデビューし、1985年頃から彼女の曲を作曲しているという縁。このアルバムでの編曲クレジットは兄の井上日徳さんと組んだ、“井上Brothers” 名義だ。

キョンキョンの愛唱歌、ということだが、時代的には彼女がデビュー前に聴いていた曲… 厚木のちょっと “やんちゃな女の子” だった時代の曲が中心だ。レイジーは小6、ツイストは中2。ジューシィ・フルーツやシャネルズは中3から高校1年。2007年~2016年に雑誌『SWITCH』に連載した文章をまとめた彼女の著書『黄色いマンション 黒い猫』にもある、日曜日に、小田急線本厚木駅前の彫刻の前で友達と待ち合わせて、原宿のホコ天に通っていたエピソードの頃だろう。

それでは、この楽しい学園祭ライブを1曲ずつ紹介しよう。

学園天国(1974):野村義男BAND


ごめーん、ごめーんと謝る失敗テイクまで録って出しちゃってるのがこの雰囲気を盛り上げてる。ノリノリのロックンロール。

S・O・S(1977):怪獣大図鑑BAND


全般にヴァンヘイレン「ジャンプ」。イントロには「YaYa~あの時代を忘れない」や「木綿のハンカチーフ」が忍び込んでいる。

お出かけコンセプト(1980):井上ヨシマサBAND


ジューシィ・フルーツ。「ジェニーはご機嫌ななめ」のカップリング。オリジナルのフレーズを活かしつつ重厚でスピード感あるロックビートの上で、キョンキョンのキュートなヴォーカルが映える。

赤頭巾ちゃん御用心(1977):野村義男BAND


イントロの最初は、ヨッちゃんらしき男声ヴォーカルの「赤頭巾ちゃん御用心」を逆回ししたもの。ヨッちゃんがノリノリでギター弾いてる姿が目に浮かぶ。ヘッドフォンで聴くと間奏の後ろでうっすら寸劇が聴こえる。ノリのよさは抜群。オリジナルはレイジー。このアルバムが出た時期は封印されていた。

レディ・セブンティーン(1973):井上ヨシマサBAND


キャロルのカヴァーを打ち込みテクノ風に。抜け感のあるヴォーカルとコーラスワークが、とてもアイドルっぽい。

尻取りRock’ n Roll(1980):野村義男BAND


これもたぶん笑い転げながらレコーディングしてる。聴いてるこっちも笑ってしまう。気分が落ちてるときにかけて、一時的に回復させるパワーはものすごいものがあると思っている。オリジナルは横浜銀蝿。

恋はベンチシート(1980):野村義男BAND


「お出かけコンセプト」同じくジューシィ・フルーツのカヴァー。原曲は50sを意識したロックンロールだけど全然違う。セリフがいい味出してる。イリヤさんよりずっと色っぽい。最後にはデーモン小暮が出てきてなぜか和風。

やさしい悪魔(1977):野村義男BAND


完全にロック。吉田拓郎メロディを吉田拓郎っぽくなく歌っているのがいい。いろんなロックの洋楽ヒット曲のエッセンスにあふれている中に「銃爪」も紛れ込んでいる。

SOPPO(1979):井上ヨシマサBAND


ツイストのナンバーをロバート・パーマーの「Addicted to Love」風のサウンドで歌うかっこいいキョンキョン。キョンキョンがロバート・パーマーの「Riptide」のジャケットのように笑顔を見せている姿を想起した。

夢見る16才(1981):怪獣大図鑑BAND


シャネルズのロマンティックなナンバーを甘い雰囲気で。重厚なロック系のサウンドが多い中、アルバムの中の清涼剤のよう。

バンプ天国(1975):井上ヨシマサBAND


フィンガー5の人気が少し落ち着いてきた時期の曲。打ち込みのダンスサウンドやホーン隊がこの時期らしい。

アクビ娘(1969):井上ヨシマサBAND


オリジナルは「ハクション大魔王の歌」のカップリング、エンディングで流れていたあの曲。キョンキョンのヴォーカルがとてもキュート。コーラスは原曲の雰囲気を活かしながらコケティッシュなアクビ娘の雰囲気が満載。

みかん色の恋(1974):怪獣大図鑑BAND


オリジナルは “ずうとるび”。キョンキョンがはじめて買ってもらったレコードだそう。ライブのアンコールを思わせる。


―― 学園祭で、46分ぶっ通しでこんなステージ観せられたら、そのままでは帰れなさそうだ。

東京に比べると、厚木はずっと空が高く澄んでいる。小田急線で本厚木から表参道までは1時間弱という時間軸。2022年3月初めの日曜日、わたしは昭和・平成の頃の雰囲気が残る本厚木の駅前から繁華街のあたりを歩いてみた。

小田急小田原線の本厚木の駅を降りたわたしは、ロータリーの傍らにあるブロンズ像の前で、キャッキャしながら楽しそうに待ち合わせる当時の幼いキョンキョンたちを思い浮かべた。この街には、彼女が多感な少女前期だったころからありそうな建物がまだまだ健在だ。

40周年☆小泉今日子!

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2022.03.15
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カタリベ
1965年生まれ
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